大相撲解体新書

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部屋データ

  50以上に増加した相撲部屋。

平成の大合併ならぬ平成の大分裂により、どの系列に属するかなどがわかりにくくなっている相撲部屋。

小規模な部屋の増加は、部屋別総当りの白熱の取組を生む一方、稽古環境などの面で弊害も多く、独立基準厳格化も定められた。

部屋の分家ラッシュが一段落した、22年1月現在の部屋のデータを整理した。系統などを一覧していただきたい。

(落ち着いてきたからいい時期だと思ったが、事態が急変。何十年に一度の大再編になるかもしれないため、随時更新予定)


二所ノ関一門

出羽海一門

立浪一門

時津風一門

高砂一門

おまけ

23年版


二所一門 所属部屋13

(閉鎖・消滅した部屋:旧・花籠、二子山、藤島、大鵬、押尾川、荒磯など)

※赤字は22年の役員改選時の騒動で一門離脱となりそうな部屋。

部屋名 師匠現役名 創設形式 独立元 代表力士 現役関取 四股名の特徴 勢力 実績 備考
二所ノ関 金剛 独立 旧・友綱 玉錦、大鵬   大、漢語から D S 始祖は海山、佐賀ノ花時代に独立相次ぐ
放駒 魁傑 独立 旧・花籠 大乃国、花ノ国   傑、魁、駒 D B 元輪島の花籠廃業に伴い、本家・花籠を吸収
芝田山 大乃国 独立 放駒   (大翔馬) E D  
峰崎 三杉磯 独立 放駒 E E  
貴乃花 貴乃花 継承 二子山     E E 藤島、二子山の流れを組む。22年1月離脱
間垣 若乃花 独立 二子山 五城楼、若ノ城   若、三杉 D C  
鳴戸 隆の里 独立 二子山 若の里、隆乃若 稀勢の里 隆、里 B B  
松ケ根 若嶋津 独立 二子山 若孜、若光翔   D C 荒磯から行司ら受入
花籠 太寿山 独立 二子山   光龍   D D 新たに花籠部屋を興す。荒磯から力士受入
大嶽 貴闘力 継承 大鵬 露鵬 (右肩上、森麗) 珍名多用 E D 二子山から移籍、養父の大鵬から継承
片男波 玉ノ富士 先代が独立 二所 玉の海、玉春日 玉乃島、玉鷲 C A 玉ノ海が独立し、2代目
佐渡ヶ嶽 琴ノ若 先々代独立 二所 琴桜、琴風... 琴光喜、琴欧洲 A A 琴錦が独立、琴桜、当代と継承
尾車 琴風 独立 佐渡 富風 豪風、嘉風 C C 師匠退職に伴い押尾川部屋を吸収
阿武松 益荒雄 独立 押尾川 片山、小緑 若荒雄 D C

小部屋も少なく粒揃い。大きな勢力を有する一門だが、22年理事選における貴乃花親方の一門離脱でヒビが入った。

旧藤島部屋の若手親方ばかりか、前理事の間垣や中堅の阿武松までも一門を出ることになり理事数減少。

古くから二所ノ関部屋からの分離独立が激しく、今日の大勢力を誇る礎となった。

しかし、それぞれの独立時の移籍問題、二所ノ関継承を巡っての押尾川の乱などお家騒動が多い。

旧花籠からは横綱若乃花、輪島、大関魁傑。二子山からは横綱若乃花、隆の里、貴乃花、若乃花、大関貴ノ花、若島津、貴ノ浪が輩出。

 

  二所ノ関→花籠、片男波、佐渡ヶ嶽、押尾川、大鵬(以上昭和期独立)

       花籠ー二子山ー藤島(後に二子山を継承合併。貴乃花が継承)、間垣、鳴戸、松ケ根、新・花籠、荒磯

         ー放駒ー芝田山、峰崎

       佐渡ヶ嶽ー尾車

       押尾川(尾車部屋に吸収)

       大鵬=大嶽(一代年寄大鵬から継承)ー阿武松(押尾川の弟子、大鵬部屋付きから)


出羽一門 所属部屋12

(閉鎖・消滅した部屋:二十山)

部屋名 師匠現役名 創設形式 独立元 代表力士 現役関取 四股名の特徴 勢力 実績 備考
出羽海 鷲羽山     常陸山、栃木山   出羽 D SS 文久から続く老舗
武蔵川 三重ノ海 独立 出羽海 武蔵丸、武双山 雅山、垣添 武、本名 B A
三保ヶ関 増位山 先代が独立 出羽海 北の湖、増位山 阿覧 C A 昭和初期に出羽海部屋に吸収、戦後再興 
北の湖 北の湖 独立 三保関 巌雄、金親 北桜、北太樹 北、湖 D C 師匠死亡に伴い二十山部屋を吸収
尾上 濱ノ嶋 独立 三保関   把瑠都、山本山 本名から B C
木瀬 肥後ノ海 独立 三保関   清瀬海 瀬、木瀬 D D  
春日野 栃乃和歌 4代前に独立 出羽海 栃錦、栃ノ海 栃煌山、栃ノ心 栃、春日 B S 大正期独立、栃木山ら3横綱が継承 
玉ノ井 栃東 先代が独立 春日野 栃東、国東   D C 初代の栃東が独立、停年に伴い継承
入間川 栃司 独立 春日野 皇司、Y司 磋牙司 D D
千賀ノ浦 舛田山 独立 春日野     E E
境川 両国 独立、改称 出羽海 岩木山 豪栄道、豊響 出身から B C 中立部屋として独立後、師匠が名跡変更
田子ノ浦 久島海 独立 出羽海 E E 琴錦が独立、琴桜、当代と継承

出羽海部屋が長く分家独立を許さない伝統があったため、功労者の春日野や歴史のある三保ヶ関が例外的に独立しているだけだった。

その影響もあり、現在でも比較的シンプルな部屋の系図を描くことができる。

横綱千代の山の九重さえ独立時には破門されたが、近年学生相撲出身の親方を中心に独立ラッシュ。積極的なスカウトで一門に勢いが出てきた。

武蔵川理事長、北の湖前理事長ら重鎮と若手親方衆のバランスが取れている。

   出羽海ー春日野(大正)、三保ヶ関、武蔵川(以上昭和)、境川、田子ノ浦(以上平成)

       春日野ー玉ノ井、入間川、千賀ノ浦(以上平成)

       三保ヶ関ー北の湖(昭和)、二十山(後に北の湖部屋に吸収)、尾上、木瀬(以上平成)


立浪一門 所属部屋10

(閉鎖・消滅した部屋:旧伊勢ケ濱部屋、旧玉垣、旧高島、旧追手風、旧間垣、旧大鳴戸、大鳴戸、旧春日山、旧木瀬、武隈、安治川)

部屋名 師匠現役名 創設形式 独立元 代表力士 現役関取 四股名の特徴 勢力 実績 備考
立浪 旭豊     双葉山、羽黒山 猛虎浪 立、浪 D S
大島 旭國 独立 立浪 旭富士、旭豊など 旭天鵬、旭南海 B A  
追手風 大翔山 独立 立浪 追風海 黒海 追風、大翔 C D かつて大関清水川が独立も長く途絶えていた
友綱 魁輝 先代が改称 旧高島 (太刀山、太刀光) 魁皇 C C 明治に創設も一時消滅
朝日山 大受     高鐵山、琉王 (大真鶴) 朝、受、大 E C 大阪相撲から続く。大鳴戸が継承して合流
高島 高望山 独立 旧熊ヶ谷 (吉葉山、三根山)   高○山 E B 何度も消滅、再興。前高島所属の現師匠が再興
宮城野 金親 3代前に独立 友綱 陸奥嵐 白鵬   E E 吉葉山が独立、現師匠は一門外から
伊勢ヶ濱 旭富士 改称 安治川 (照国、清国) 日馬富士.安美錦 (瀬川)、安 D C 安治川を継承した大島現師匠が19年に名跡変更
春日山 春日富士 独立 安治川   春日王 D D 旧春日山の現師匠が独立し再興
桐山 黒瀬川 独立 旧伊勢濱   徳瀬川 ○瀬川 D E 大鳴戸部屋消滅時に力士を引取り独立

巡業などを一緒に行ってきた経緯から、長く「立浪・伊勢ヶ濱連合」として存在した。

しかし、先般の旧伊勢ヶ濱部屋の閉鎖によって立浪一門と改称されることとなった。

双葉山・羽黒山らを輩出した名門立浪も、当代への継承時に大揉めとなり本家が茨城へ移転するなど混乱。

現在は、傍系の方が力を持っている状況である。

歴史のある部屋が多いが、部屋持ち親方の名跡変更で途絶え(2度変えた巴潟、最近では旭富士)、元弟子が再興するケースが多い(春日富士、高望山など)。

立浪、宮城野のように養子縁組などで他系列の力士が後継者となることも多く、極めて複雑な一門。

元旭富士の伊勢ヶ濱が理事選に立って若返るはずが、直前に千代大海引退に伴なう票数の変更もあって覆り、友綱が再出馬。

    立浪ー双葉山道場(のち時津風一門を築く)、旧春日山(閉鎖、安治川部屋に吸収される)、大島(以上昭和)、追手風(平成)

     友綱(旧高島)ー宮城野(吉葉山道場として独立後襲名)、熊ヶ谷(閉鎖、立浪に吸収)、現・伊勢ヶ濱(先代が安治川として独立、名跡変更)(以上昭和)

        安治川(現伊勢ヶ濱)ー春日山(平成)

        熊ヶ谷ー現・高島

       ー前・高島(前・前・高島時代(のち友綱)に旧熊ヶ谷として独立後、名跡変更。のち閉鎖され熊ヶ谷部屋に吸収される)

     朝日山ー大鳴戸(桐山部屋に力士移籍し消滅)

    旧・伊勢ヶ濱(閉鎖、桐山に吸収)ー桐山


時津風一門 9

(閉鎖・消滅した部屋:立田川、旧井筒、錦島)

部屋名 師匠現役名 創設形式 独立元 代表力士 現役関取 四股名の特徴 勢力 実績 備考
時津風 時津海 独立後改称 双葉山道場 鏡里、豊山 時天空、豊ノ島 時(津)、豊、双 B A 立浪部屋の双葉山が現役中に独立
豊山 独立 時津風 湊富士   E D
式秀 大潮 独立 時津風     潮、式 E E
荒汐 大豊 独立 時津風   蒼国来 D E
伊勢ノ海 藤ノ川 先代が独立 錦島 柏戸、藤ノ川 土佐ノ海 伝統名 E B 昭和期に途絶えるが、再興
鏡山 多賀竜 先代が独立 伊勢ノ海 多賀竜、起利錦     E D 柏戸が独立し、弟子の当代が継承
陸奥 霧島 先々代改称 旧・井筒 敷島、星岩涛 豊桜、白馬 C D 旧井筒が名跡変更し陸奥部屋になり、3代目
井筒 逆鉾 先代が独立改称 君ヶ浜 (西ノ海)霧島 鶴竜 D B 旧井筒から君ヶ浜として独立後、名跡変更
錣山 寺尾 独立 井筒   豊真将 寺尾○ D D

3つの系統からなる時津風一門。時津風は双葉山が開祖であり、比較的新しい。

伊勢ノ海、井筒の方が歴史があり伝統的な四股名を有するが、何度か途切れるうちに時津風一門に入った。

本家時津風は、序ノ口力士死亡事件で師匠が逮捕・解雇され大混乱、時津海が急遽引退して継承した。

一門全体でも小部屋が多く、現役力士も少なくあまり元気がないが、新生時津風や井筒兄弟の輩出競争は楽しみである。

部屋持ち親方の最高位が低いのも特徴で、唯一の元大関の陸奥が新たに理事選に立つ。

 

     時津風(双葉山が襲名後)ー立田川(閉鎖、陸奥に吸収)、湊(昭和)、式秀、荒汐(平成)

     錦島(時津風に吸収され消滅)ー伊勢ノ海ー鏡山

     旧・井筒(のち陸奥に改称)ー君ヶ浜(のち井筒)、錣山


高砂一門 所属部屋7

(閉鎖・消滅した部屋:旧井筒、若松)

※赤字の高田川(元前の山→元安芸乃島)は10年の理事選時の騒動で破門されたが、便宜上ここに掲載。

部屋名 師匠現役名 創設形式 独立元 代表力士 現役関取 四股名の特徴 勢力 実績 備考
高砂 朝潮     小錦、朝潮 朝青龍、朝赤龍 朝、伝統名 A S 当代が襲名時に若松部屋を吸収
中村 富士櫻 独立 高砂 彩豪、須磨富士   富士 E D
東関 潮丸 独立 高砂 曙、潮丸 高見盛 高見 D B
錦戸 水戸泉 独立 高砂       E E
九重 千代の富士 先々代独立 出羽海 北富士、北勝海 千大海、千白鵬 千代(富士) C S 独立時に破門され、高砂一門に合流
八角 北勝海 独立 九重   北勝力、海鵬 北勝、保志 C C
高田川 安芸乃島 先代が独立 高砂 (宮城山)剣晃 (大雷童) 前、安芸 D C 先代が破門となり、無所属に。

あまり独立が盛んでない一門。そのせいか、明治期に大きな権力を持った高砂の勢力は脈々と受け継がれている。

昭和期に合流した九重勢の勢力も大きく貢献したが、やや下火。

勢力は安定しているが、千代大海や朝青龍の後を受けて横綱大関を狙える存在が欲しい。

高田川部屋は、二所一門だった貴乃花部屋付から移籍した千田川が部屋を継承しているがいまだ無所属。

理事は前期から高砂に代わり九重が就任。元大関が部屋付きになり、将来の理事長就任に向け準備万端か。

 

       高砂ー若松(一時西岩、高砂に合流)、高田川(のち破門となる)、中村、東関(以上昭和)、錦戸(以上平成)

      九重ー八角(平成)


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おまけ

まさに余計なお世話であるが、部屋の後継者問題を勝手にごちゃごちゃと書き立てる。

年寄にも世代交代はあるのだ。

65歳の停年が近い(昭和20年代前半生まれ)部屋付き親方を中心にピックアップ。

 ★片男波

  元関脇玉ノ富士の停年が近づいていたが、22年2月、元関脇玉春日の楯山と名跡交換し、早めのバトンタッチ(当コラムの先を越されてしまった)。スムーズに以降した。片男波部屋は昭和以降、横綱玉の海を擁するなど、「玉」の冠を背負う幕内力士を途切れなく輩出してきた名門。現役の関脇玉乃島も由緒ある四股名を継いで活躍。どちらかが後継だと思っていたが、先輩格の玉春日に早くも決まった。学生相撲出身で頭脳明晰、人格者と評判の良い親方。現役中から玉飛鳥の再生に尽力するなど、すでに親方修行も積んでいるようで、今後が期待される。久々の大関以上の力士を育てられるか。

 ★二所ノ関

  元関脇金剛。昭和40年代、二所ノ関部屋は横綱大鵬、大関大麒麟ら錚々たる強豪を擁しており、平成以降小結大善くらいしか関取が思い浮かばない現代とはかけ離れた隆盛を誇っていた。しかし、彼らの引退後、元大ノ海の二所ノ関の後継者争いは大紛糾。二所ノ関部屋からの独立に際しては弟子の移籍などを巡ってトラブル続きだったが、本家の継承となると、やはり簡単にはいかなかった。抜群の実績を誇る大鵬は、一代年寄を贈られて独立していたが後継にも名が挙がり、元大関大麒麟の押尾川が本命と見られたものの、平幕優勝で株を上げた金剛が娘婿に収まり一気に浮上。出し抜かれた押尾川は大騒動の末独立。混乱の中、まだ27歳の金剛が引退して二所ノ関を襲名した。騒動のダメージは大きく、青葉城の移籍、天龍の廃業で一気に勢力を失った。それから30年、麒麟児、大徹、大善という息の長い力士がいたが、ついに関取が途絶えた。小部屋となってしまった「本家」の後継は、トラブルにもなりようがないか。現在、上記の3力士が部屋付きで在籍。かれらのいずれかが継承すると見られるが、実績と年功序列で麒麟児の北陣か、富士ヶ根の大善で若返りを図って長期政権を目指すか、それともどこかから呼び寄せるか。ちなみに喧嘩別れした押尾川は、名力士を数多く出したが、親方停年後は尾車部屋に吸収され部屋を閉じてしまった。

 ★放駒

  元大関魁傑。理事を務めるが、現役に有力な後継候補はいない。部屋付き親方もいない。一時は元輪島の廃業で花籠部屋を吸収し、一気に拡大した新興勢力だったが、近年は駿傑くらいしか幕内を出せていない。そこで、やはり出世頭の元横綱大乃国、芝田山が挙がってくる。独立して10年以上になるが、モンゴル人関取を一人出しただけと大苦戦している。その場合、放駒を襲名して合併か、芝田山のまま吸収するかということになる。親方となって早期に横綱や大関を育てた場合、弟子は親方の停年まで部屋付きというわけにもいかず、いったん独立するのが常。他に有力な後継がいれば、そのままでいいが、本家を継ぐ者がなければ、独立した親方も俄然候補となる。放駒はまさにそのケースになるが。

 ★鳴戸

  元横綱隆の里。まだ先の話だが、理事候補として名を上げておく。名力士を育てているが、まだ大関は出ず。関脇隆乃若は角界を去り、部屋付きは借株の隆の鶴だけ。大関目前まで行った若の里、これから大関を目指す稀勢の里が関脇まで昇進。ともに年寄株を確保していて独立の権利も得られそうだが、鳴戸の停年となれば師匠が必要。まだ23歳の稀勢の里は隆の里停年後もまだまだ現役だろうから、晩年を迎えている若の里がしばらく部屋付きで修行した後、継承が既定路線だろう。

 ★出羽海

  超名門だが、近年勢力が減退。佐田の山からバトンを受けた元関脇鷲羽山も高齢であり、後継探しが始まっているものと思われる。とは言え、鷲羽山が継承して以降育った現役関取は十両に落ちた普天王だけ。急に衰え始めているだけに停年ごろには引退してもおかしくないが、名門継承を納得させるだけの実績には小結1場所では人気力士と言えどちょっと心許ない。OBは多いが、多くが独立。名門だけに吸収させるわけにもいかないので、大部屋となってしまった横綱三重ノ海の武蔵川は実績十分とは言えまずない(放駒の項で書いた、師匠が若いうちに育ってしまった横綱が独立したケース。正確には弟弟子だが。芝田山部屋と違って大成功してしまっているだけに逆に難しい。停年も近い)。新興の境川・元両国は、前出羽海の元佐田の山と名跡交換した経緯もあり、出羽海を襲名して合併し本家を強引に再興させる可能性はなきにしもあらず。他の候補は、独立組なら元久島海。部屋付きの長老なら元関脇出羽の花の出来山も現役時代の実力は一番上だが、停年近し。さらに大錦、小城兄弟といるが、決定的な候補がいない。

 ★武蔵川

  現理事長の元横綱三重ノ海。弟子も数多く育ったが、多すぎて困る。しかし、ここは元大関武双山の藤島が継承で間違いなさそうだ。横綱武蔵丸の振分は年寄株確保が精一杯で、出島の大鳴戸、現役雅山と大関はいるが、先輩格に軍配。彼らも独立するか残るか決断の時が来る。

 ★三保ヶ関

  大関増位山は、北の湖が一代年寄となって独立したため、すんなり父から継承した三保ヶ関部屋を守って来たが、現在関取は阿覧だけ。把瑠都は尾上と一緒に独立してしまった。その尾上(元濱ノ嶋)と木瀬(元肥後ノ海)は、学生や外国人をスカウトして急速に勢力を伸ばしているが、本家は元気がない。部屋付きの2人も師匠と同世代であり、後継者探しは難航しそう。尾上に継承する予定が、「自信がない」と蹴られてしまっては、候補者がいない。現役日本人力士は、長く幕下に低迷している元十両増健(現柳川)くらいであまりに実績が乏しい(宮城野を継承した元十両金親の例があるから否定できないが)。もう一度尾上、木瀬に継承合併を打診するか。北の湖と合併するウルトラCを出すと、三保ヶ関部屋の看板は消滅する。これだけ弟子を輩出しながら伝統ある部屋が消滅するのは忍びない。

 ★千賀ノ浦

  元関脇舛田山。かなり年を食ってから独立したため、残された期間は最初から少ない。関脇栃乃洋を連れて独立する目論見が外れてしまい、期待の舛東欧、舛名大も苦戦していてピンチ。本家春日野の元栃乃和歌が若いので、後継に栃乃洋を連れてくる可能性も。ただ、栃乃洋も独立する権利を手にしており、また蹴られるかもしれない。

 ★大島

  元旭國の大島は、先日の理事選でまさかの落選したショックが覚めないところだが、停年も近い。「旭」のつく四股名ですぐわかる大島部屋は、早々に横綱旭富士を育て、旭道山、旭鷲山ら人気力士も多数。後継候補には事欠かないと思われたが、定年間近に弟子の輩出が減少。実績で飛び抜けている旭富士に継いで欲しいところだが、安治川を継承した後、名門の伊勢ヶ濱を襲名。大関も育てており、今から大島を名乗る可能性はないだろう。となると、急浮上するのが現役の35歳旭天鵬。モンゴル出身だが、既に日本国籍を取得。親方の姓を取って「太田勝」という本名まであり、年寄株取得の権利を得ている。OBも他におらず、かなり旭天鵬の大島部屋継承が強まっている。高見山以来2人目の外国出身力士の部屋が誕生するのか。

 ★伊勢ノ海

  26歳の若さで引退した元藤ノ川。前師匠の死去に際し、兄弟子の横綱柏戸は鏡山として独立していたため、伊勢ノ海を襲名した。以後、アマ横綱・藤ノ川や北勝鬨、大碇らを育てる。伝統的な四股名を抱える老舗だが、一時代を築くほどではなく、幕内力士もポツポツと出るくらい。その中で、関脇土佐ノ海は金星11を獲得するなど若貴時代の雄として大活躍。大関は届かなかったが、いまだに現役で頑張っている。継承者として間違いないだろう。学生時代からのライバルの玉春日は一足先に引退して片男波を襲名、共に親方としてライバル対決が見られるだろう。

 ★湊

  元小結豊山の湊部屋だが、弟子の育成には苦労した。唯一の関取・湊富士が現在立田川として部屋付きで在籍。名跡変更して継承することになるだろう。幕下の仲の国などをうまく育成したい。

 ★式秀

  千代の富士、魁皇に次ぐ通算964勝を誇る元小結大潮が独立。しかし20年近く経つが関取は育たず。当然後継者も見当たらず、このままいけば消滅の危機。外部から招聘するか。

 ★中村

  高砂一門は、平成初期まで現役で活躍した力士が師匠として君臨。世代交代まで時間はあるが、元富士櫻の中村部屋はそろそろ代替わりの時期に来ている。弟子に高卒の資格を取らせたり、おかみさんが論文を書くなど独自の部屋経営を頑張っているが、力士は十両の彩豪、須磨ノ富士、一の谷くらいで、幕内力士は出ず。弟子もいるので消滅は避けたいが、後継者候補不在。高砂部屋の弟弟子なら、水戸泉朝潮がいるが、共に部屋持ち。闘牙は借株で立浪一門にいるが、それくらいしか残っていない。高見山の弟子・潮丸の東関も含め、吸収先を探すことになるのか、それとも外から連れてくるか。

 

以上の部屋で近々師匠交代が考えられる。

関取のいない部屋では、師匠の退職を機に部屋を閉じてしまうことも考えられる。

新弟子の数が減っている現在、部屋経営は厳しいものがあるからだ。

しかし、部屋を持ちたいと言う若い親方にとっては、小さくとも既存の部屋は価値がある。

先般の改正で、独立には大関以上や関取10年などの厳しい基準が設けられてた。

そのため関脇以下でかなりの実績を残しても、活躍期間が短ければ部屋は起こせなくなった。

ならば、今ある部屋を継ぐしかない。

所属部屋や一門の枠を超えて、継承者が名乗り出てくるかもしれない。

松登の高島、大麒麟の押尾川、清國の伊勢ヶ濱、北天佑の二十山など、元大関の部屋が停年などで消滅するケースが目立つ。

一方、前の山の高田川部屋は一門からも外れて消滅濃厚だったが、一門の違う安芸乃島を移籍させてバトンを繋いだ。

一門の意義が揺らいでいる現在なら、こうしたケースは多くなりそうだ。

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