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部屋データ 23年版
昨年、平成の部屋乱立も一段落かと思って作成した「部屋データ」の分析コラム。
ところが、その直後に理事選をめぐって貴乃花グループが破門同然の独立。
他の一門からの「造反」を巡って年寄が移籍したり、さらに賭博や暴力団関係の事件で部屋取り潰しや師匠解雇も。
何十年に一度の再編が起きてしまってせっかく整理したデータがあっという間に過去のものに(涙)。
何でもデータ化パラメータ化する当サイト、部屋についても一つのコンテンツとして毎年更新することにした。
師匠現役名:青字は元横綱、○は現理事(23年1月改選後。北の湖、九重、陸奥は八百長問題で辞任)
創設形式:「独立」(旧所属から内弟子を引き連れるなどして分離)
「改称」(名跡変更等により部屋名を変更)、
「継承」(他の部屋を自身の年寄名のまま受け継ぐ)
★は当代の親方がそれらを行った場合。
★二所一門 所属部屋10 理事2
(近年の動き:16年二子山を貴乃花が継承。19年に押尾川、20年に荒磯が閉鎖。22年貴乃花、間垣、阿武松、大嶽が離脱。)
部屋名 | 師匠現役名 | 創設年 | 創設形式 | 独立元 | 代表力士 | 現役関取 | 四股名の特徴 | 勢力 | 実績 | 備考 |
二所ノ関 | ○金剛 | 明治42 | 独立 | 旧・友綱 | 玉錦、大鵬 | 大、漢語 | D | S | 始祖は海山、佐賀ノ花時代に独立相次ぐ | |
放駒 | ○魁傑 | 昭和56 | ★独立 | 旧・花籠 | 大乃国、花ノ国 | 傑、魁、駒 | D | B | 旧花篭部屋から独立後、同部屋を吸収 | |
芝田山 | 大乃国 | 平成11 | ★独立 | 放駒 | 大勇武 | 大 | E | D | ||
峰崎 | 三杉磯 | 昭和63 | ★独立 | 放駒 | 峰 | E | E | 現役時代は花籠のち放駒 | ||
鳴戸 | 隆の里 | 平成元 | ★独立 | 二子山 | 若の里、隆乃若 | 稀勢の里 | 隆、里 | B | B | |
松ケ根 | 若嶋津 | 平成2 | ★独立 | 二子山 | 若孜、若光翔 | 若 | D | C | 荒磯から行司ら受入 | |
花籠 | 太寿山 | 平成4 | ★独立 | 二子山 | 光龍 | D | D | 新たに花籠部屋を興す。荒磯から力士受入 | ||
片男波 | 玉春日 | 昭和37 | 独立 | 二所 | 玉の海、玉ノ富士 | 玉乃島、玉鷲 | 玉 | C | A | 玉ノ海が独立。玉ノ富士を経て22年に当代 |
佐渡ヶ嶽 | 琴ノ若 | 昭和30 | 独立 | 二所 | 琴桜、琴風... | 琴光喜、琴欧洲 | 琴 | A | A | 先代琴錦が独立、琴桜、17年に当代へ継承 |
尾車 | 琴風 | 昭和62 | ★独立 | 佐渡 | 富風 | 豪風、嘉風 | 風 | C | C | 師匠退職に伴い押尾川部屋を吸収 |
小部屋も少なく粒揃い。大きな勢力を有する一門だが、22年理事選における貴乃花親方の一門離脱でヒビが入った。
旧藤島部屋の若手親方ばかりか、前理事の間垣や中堅の阿武松までも一門を出ることになり理事数減少。
しかし武蔵川理事長の辞任に伴い、放駒が新理事長に就くという明るいニュースもあった。
同一門からの理事長輩出は、先日死去した初代横綱若乃花の二子山以来。
昭和の前半から二所ノ関部屋からは分離独立が激しく(佐渡ヶ嶽、旧芝田山・花籠、片男波)、今日の大勢力を誇る礎となった。
それぞれの独立時には移籍問題が起こり、当代の二所ノ関継承を巡って勃発した「押尾川の乱」など、元々お家騒動が多い一門。
旧花籠からは横綱若乃花、輪島、大関魁傑。二子山からは横綱若乃花、隆の里、貴乃花、若乃花、大関貴ノ花、若島津、貴ノ浪が輩出。
佐渡ヶ嶽からは横綱琴櫻、大関琴風、琴欧洲、琴光喜。片男波からは横綱玉の海が出るなど、実績は抜群。
新しい部類の鳴戸、尾車からも役力士を輩出している。
大成した力士ほど独立志向が強くなるのは致し方なく、旧二子山部屋から5,放駒からも3つの分家が誕生。
二所ノ関→花籠、片男波、佐渡ヶ嶽、押尾川、大鵬(以上昭和期独立)
花籠ー二子山(貴乃花に継承)ー藤島(後に二子山を継承合併)、×間垣、鳴戸、松ケ根、新・花籠、荒磯(閉鎖、花籠や松ケ根に移籍)
ー放駒ー芝田山、峰崎
佐渡ヶ嶽ー尾車
押尾川(のち尾車部屋に吸収)
大鵬=×大嶽(一代年寄大鵬から継承)ー×阿武松(押尾川の弟子、大鵬部屋付から)
●元二所ノ関所属
★貴乃花グループ 所属部屋4 理事1
(近年の動き:平成22年、理事選立候補者調整難航で、貴乃花支持派が二所一門から大量離脱。大嶽が師匠解雇で交代)
部屋名 | 師匠現役名 | 創設年 | 創設形式 | 独立元 | 代表力士 | 現役関取 | 四股名の特徴 | 勢力 | 実績 | 備考 |
貴乃花 | ○貴乃花 | 平成16 | 継承 | (二子山) | 貴 | E | E | 二子山を一代年寄名で継承 | ||
間垣 | 二代若乃花 | 平成58 | ★独立 | 二子山 | 五城楼、若ノ城 | 若、三杉 | D | C | ||
大嶽 | 大竜 | 平成16 | 継承 | (大鵬) | 露鵬 | (右肩上、森麗) | 珍名多用 | E | D | 大鵬から継承 |
阿武松 | 益荒雄 | 平成6 | ★独立 | 大鵬 | 片山、古市 | 若荒雄 | 緑、 | C | C | 押尾川の弟子、大鵬部屋付から独立 |
二所一門を離脱した(させられた)部屋の連合。通称貴乃花グループと呼ばれる。
旧藤島系二子山部屋の貴乃花、貴闘力の大嶽、さらに改革派の阿武松、何故か元理事の間垣も加わる。
一門からは二所ノ関、放駒の現職に加えて新たに鳴戸を選出する予定だった。
強引に立候補した貴乃花親方は、支持者のほか二所一門を含む他の一門からの造反票も得て奇跡の理事当選。
勢いを得たが、野球賭博問題で水を差された。
グループのスポークスマンだった元貴闘力の大嶽が懲戒解雇。部屋付の大竜が二子山から名跡変更し継承。
阿武松部屋は賭博の中心人物を出した上、多くの弟子の関与が発覚。親方にも厳しい処分。
事件で最も重いダメージを受けた。先行きが不安だが、盛んに連合稽古を行い、意気を上げている。
●元高砂所属→二所一門
部屋名 | 師匠現役名 | 創設形式 | 独立元 | 代表力士 | 現役関取 | 四股名の特徴 | 勢力 | 実績 | 備考 |
高田川 | 安芸乃島 | 先代が独立 | 高砂 | (宮城山)剣晃 | (大雷童) | 前、安芸 | D | C | 平10、先代(元前の山)が破門され無所属に。 |
大胆な改革を打ち出した出羽海政権。理事選で反対派の元大関前の山の高田川は、高砂一門の候補者調整に応じず強引に立候補。
他の一門からの支持もあり当選したが、高砂一門からは破門された。騒動の煽りで北の富士の陣幕は退職。
過去にも出羽海一門から破門された九重がすぐに高砂一門へ合流したことはあったが、高田川は以後10年以上無所属である。
貴乃花部屋付で元安芸乃島の千田川が、弟弟子の師匠との確執から高田川部屋へ移籍。
停年間際の元前の山と名跡交換して、高田川部屋を継承することとなった。
そのような経緯から、やはり無所属となった貴乃花グループとの合流は困難。
大雷童が陥落して以来関取はいないが、有望な若手を多くスカウトしており楽しみ。
※新師匠・安芸乃島が所属していた二所ノ関一門への合流が決定した。貴乃花グループの離脱による。
★出羽一門 所属部屋12 理事3
(最近の動き:18年二十山閉鎖、22年木瀬閉鎖。武蔵川部屋を年寄藤島が継承、部屋名も改称。いずれも力士らは北の湖へ移籍。)
部屋名 | 師匠現役名 | 創設年 | 創設形式 | 独立元 | 代表力士 | 現役関取 | 四股名の特徴 | 勢力 | 実績 | 備考 |
出羽海 | ○鷲羽山 | 江戸 | 常陸山、栃木山 | 出羽 | D | SS | 文久から続く老舗 | |||
藤島 | 武双山 | 平成22 | 継承 | 出羽海 | 武蔵丸、武双山 | 雅山、垣添 | 武、本名 | B | A | 元三重ノ海の武蔵川部屋を藤島が継承 |
三保ヶ関 | 増位山 | 大阪 | 独立 | 出羽海 | 北の湖、増位山 | 阿覧 | 増 | C | A | 昭和初期出羽海に吸収されるも戦後再興 |
北の湖 | ○北の湖 | 昭和60 | ★独立 | 三保関 | 巌雄、北桜 | 北太樹、臥牙丸 | 北、湖 | C | C | 二十山部屋、木瀬部屋を吸収 |
尾上 | 濱ノ嶋 | 平成18 | ★独立 | 三保関 | 把瑠都、山本山 | 本名から | B | C | ||
春日野 | 栃乃和歌 | 大正8 | 独立 | 出羽海 | 栃錦、栃ノ海 | 栃煌山、栃ノ心 | 栃、春日 | B | S | 大正期独立、栃木山ら3横綱から当代へ |
玉ノ井 | 二代栃東 | 平成2 | 独立 | 春日野 | 栃東、国東 | 東 | D | C | 初代の栃東が独立、停年に伴い継承 | |
入間川 | 栃司 | 平成5 | ★独立 | 春日野 | 皇司、Y司 | 将司、磋牙司 | 司 | D | D | |
千賀ノ浦 | 舛田山 | 平成15 | ★独立 | 春日野 | 舛ノ山 | 舛 | D | E | ||
境川 | 両国 | 平成10 | ★独立、改称 | 出羽海 | 岩木山 | 豪栄道、豊響 | 出身等から | B | C | 中立部屋として独立後、師匠が名跡変更 |
田子ノ浦 | 久島海 | 平成12 | ★独立 | 出羽海 | 碧、久 | E | E | 琴錦が独立、琴桜、当代と継承 |
出羽海部屋には長く分家独立を許さない伝統があったため、功労者の春日野や歴史のある三保ヶ関が例外的に独立しているだけだった。
その影響もあり、現在でも比較的シンプルな部屋の系図を描くことができる。
横綱千代の山の九重さえ独立時には破門されたが、近年は緩和されている。
横綱三重ノ海が武蔵川部屋を、それに続いて大学相撲出身の親方を中心に独立ラッシュ。
積極的なスカウトで一門に勢いが出ていたが、その代表格である木瀬部屋が22年に暴力団がらみでお取り潰しに。
有望株ぞろいの弟子は北の湖部屋へ。師匠の急死で閉鎖した二十山部屋からも弟子預かった同部屋は、一躍大所帯に。
賭博問題では武蔵川理事長が辞任、北の湖前理事長や出羽海理事が後任に推される場面もあったが他の一門に譲った。
出羽海ー春日野(大正)、三保ヶ関、武蔵川(以上昭和)、境川、田子ノ浦(以上平成)
春日野ー玉ノ井、入間川、千賀ノ浦(以上平成)
三保ヶ関ー北の湖(昭和)、二十山(北の湖部屋に吸収)、尾上、木瀬(北の湖部屋に吸収)(以上平成)
★立浪一門 所属部屋10 理事1
(閉鎖・消滅した部屋:旧伊勢ケ濱部屋、旧玉垣、旧高島、旧追手風、旧間垣、旧大鳴戸、大鳴戸、旧春日山、旧木瀬、武隈、安治川)
(最近の動き:「立浪一門」で一門名統一。19年安治川部屋が伊勢ヶ濱に改称。)
部屋名 | 師匠現役名 | 創設年 | 創設形式 | 独立元 | 代表力士 | 現役関取 | 四股名の特徴 | 勢力 | 実績 | 備考 |
立浪 | 旭豊 | 大正4 | 双葉山、羽黒山 | 猛虎浪 | 立、浪 | D | S | |||
大島 | 旭國 | 昭和55 | ★独立 | 立浪 | 旭富士、旭豊など | 旭天鵬、旭南海 | 旭 | B | A | |
追手風 | 大翔山 | 平成10 | ★独立 | 立浪 | 追風海 | 黒海 | 追風、大翔 | C | D | かつて大関清水川が独立も長く途絶えていた |
友綱 | ○魁輝 | 昭和36 | 改称 | 旧高島 | (太刀山、太刀光) | 魁皇 | 魁 | C | C | 明治に創設も一時消滅 |
朝日山 | 大受 | 大阪 | 高鐵山、琉王 | (大真鶴) | 朝、受、大 | E | C | 大阪相撲から続く。23年桐山部屋を吸収 | ||
高島 | 高望山 | 平成5 | ★独立 | 旧熊ヶ谷 | (吉葉山、三根山) | 高○山 | E | B | 何度も消滅、再興。前高島所属の現師匠が再興 | |
宮城野 | 金親 | 昭和35 | 独立 | 友綱 | 陸奥嵐 | 白鵬 | C | E | 吉葉山が独立、現師匠は一門外から | |
伊勢ヶ濱 | 旭富士 | 平成19 | ★改称 | 安治川 | (照国、清国) | 日馬富士.安美錦 | 富士、安 | D | C | 5年に安治川部屋を継承した現師匠が名跡変更 |
春日山 | 春日富士 | 平成9 | ★独立 | 安治川 | 春日王 | 春日 | D | D | 旧春日山の現師匠が独立し再興 | |
※桐山 | 黒瀬川 | 平成7 | ★独立 | 旧伊勢濱 | 徳瀬川 | ○瀬川 | D | E | 大鳴戸部屋を継承し独立 23年1月閉鎖へ |
巡業などを一緒に行ってきた経緯から、長く「立浪・伊勢ヶ濱連合」として存在した。
しかし、先般の旧伊勢ヶ濱部屋の閉鎖によって立浪一門と改称されることとなった。
双葉山・羽黒山らを輩出した名門立浪も、当代への継承時に大揉めとなり本家が茨城へ移転するなど混乱。
現在は、傍系の方が力を持っている状況である。
歴史のある部屋が多いが、部屋持ち親方の名跡変更で途絶え(2度変えた巴潟、最近では旭富士)、
ふたたび元弟子が再興するケースが多い(春日富士、高望山など)。
立浪、宮城野のように養子縁組などで他系列の力士が後継者となることも多く、極めて複雑な一門。
元旭富士の伊勢ヶ濱が理事選に立って若返るはずが、直前に千代大海引退に伴なう票数の変更もあって覆り、友綱が再出馬。
造反票の影響で大島が落選して理事数が減少。二所の内紛で割を食った。
立浪ー双葉山道場(のち時津風一門を築く)、旧春日山(閉鎖、安治川部屋に吸収される)、大島(以上昭和)、追手風(平成)
友綱(旧高島)ー宮城野(吉葉山道場として独立後襲名)、熊ヶ谷(閉鎖、立浪に吸収)、現・伊勢ヶ濱(先代が安治川として独立、名跡変更)(以上昭和)
安治川(現伊勢ヶ濱)ー春日山(平成)
熊ヶ谷ー現・高島
ー前・高島(前前・高島時代(のち友綱)に旧熊ヶ谷として独立後、名跡変更。のち閉鎖され熊ヶ谷部屋に吸収される)
朝日山ー大鳴戸(桐山部屋に力士移籍し消滅)
旧・伊勢ヶ濱(閉鎖、力士ら桐山へ合流)ー桐山
★時津風一門 所属部屋9 理事2
(近年の動き:20年時津風、22年湊が師匠交代)
部屋名 | 師匠現役名 | 創設年 | 創設形式 | 独立元 | 代表力士 | 現役関取 | 四股名の特徴 | 勢力 | 実績 | 備考 |
時津風 | 時津海 | 昭和20 | 独立後改称 | 立浪 | 鏡里、豊山 | 時天空、豊ノ島 | 時(津)、豊、双 | B | A | 立浪部屋の双葉山が現役中に独立 |
湊 | 湊富士 | 昭和56 | 独立 | 時津風 | 湊富士 | 湊 | E | D | 豊山が独立、名跡交換し二代目へ | |
式秀 | 大潮 | 平成4 | ★独立 | 時津風 | 潮、式 | E | E | |||
荒汐 | 大豊 | 平成14 | ★独立 | 時津風 | 蒼国来 | 荒 | D | E | ||
伊勢ノ海 | 藤ノ川 | 江戸 | 独立 | 錦島 | 柏戸、藤ノ川 | 土佐ノ海 | 伝統名 | E | B | 昭和期に途絶えるが、再興 |
鏡山 | ○多賀竜 | 昭和45 | 独立 | 伊勢ノ海 | 多賀竜、起利錦 | E | D | 柏戸が独立し、弟子の当代が継承 | ||
陸奥 | ○霧島 | 昭和49 | 改称 | 旧・井筒 | 敷島、星岩涛 | 豊桜、白馬 | 霧 | C | D | 旧井筒が名跡変更し陸奥部屋になり、3代目 |
井筒 | 逆鉾 | 昭和52 | 独立後改称 | 君ヶ浜 | (西ノ海)霧島 | 鶴竜 | 鶴 | D | B | 旧井筒から君ヶ浜として独立後、名跡変更 |
錣山 | 寺尾 | 平成16 | ★独立 | 井筒 | 豊真将 | 寺尾○ | D | D |
3つの系統からなる時津風一門。時津風は双葉山が開祖であり、比較的新しい。
伊勢ノ海、井筒の方が歴史があるが、何度か途切れるうちに時津風一門に入った。
総帥時津風は、双葉山が現役中に興した双葉山道場を前身とする。
同時に大関昇進した盟友鏡岩が継承した粂川部屋を譲られたため、当初からその勢力は大きかった。
横綱鏡里も元粂川部屋のひとり。時津風部屋はのちにその鏡里を経て、元大関豊山が継承し先代に続いて理事長となる。
しかし、続いて継承した元小結双津竜の時津風は序ノ口力士死亡事件で逮捕、解雇されて大混乱。
当時現役の幕内時津海が急遽引退して継承したが今度は野球賭博発覚と、受難の時代が続いている。
一門全体でも小部屋が多く、現役力士も少なくあまり元気がないが、共に師匠となった井筒兄弟の弟子輩出競争は楽しみである。
部屋持ち親方は比較的若く、最高位が低いのも特徴。唯一の元大関・陸奥と、優勝経験のある鏡山が新たに理事となる。
時津風(双葉山が襲名後)ー立田川(閉鎖、陸奥に吸収)、湊(昭和)、式秀、荒汐(平成)
錦島(時津風に吸収され消滅)ー伊勢ノ海ー鏡山
旧・井筒(のち陸奥に改称)ー君ヶ浜(のち井筒)、錣山
★高砂一門 所属部屋7
(閉鎖・消滅した部屋:旧井筒、若松)
(近年の動き:22年に東関部屋師匠交代)
部屋名 | 師匠現役名 | 創設年 | 創設形式 | 独立元 | 代表力士 | 現役関取 | 四股名の特徴 | 勢力 | 実績 | 備考 |
高砂 | 朝潮 | 江戸 | 小錦、朝潮 | 朝赤龍 | 朝、伝統名 | A | S | 当代が襲名時に若松部屋と合流 | ||
中村 | 富士櫻 | 昭和61 | 独立 | 高砂 | 彩豪、須磨富士 | 富士 | E | D | ||
東関 | 潮丸 | 昭和61 | 独立 | 高砂 | 曙、潮丸 | 高見盛 | 高見 | D | B | |
錦戸 | 水戸泉 | 平成14 | 独立 | 高砂 | E | E | ||||
九重 | ○千代の富士 | 昭和42 | 先々代独立 | 出羽海 | 北富士、北勝海 | 千代白鵬 | 千代(富士) | D | S | 独立時に破門され、高砂一門に合流 |
八角 | 北勝海 | 平成5 | 独立 | 九重 | 海鵬 | 北勝力 | 北勝、保志 | C | C |
あまり独立が盛んでない一門。そのせいか、明治期に大きな権力を持った本家高砂の勢力は脈々と受け継がれている。
現師匠も名乗った「朝潮」は、昭和には横綱を出した伝統の四股名。
ハワイから高見山をスカウトするなど、いつの時代も個性派を生んでいる。
その高見山は史上唯一の外国人師匠となり、やはりハワイ出身の横綱曙を生んだ。
高砂も負けじと大関小錦、横綱朝青龍と大物を育成。
昭和期に合流した九重勢は、千代の富士、北勝海の両横綱で10連覇を達成するなど角界を一時席巻。
その両横綱が師匠となり、平成10年代には九重からは大関千代大海、千代天山、八角からは海鵬、北勝力が三役に。
勢力は安定しているが、朝青龍、千代大海の引退で存在感は薄れている。横綱大関を狙える存在が欲しい。
高砂ー若松(一時西岩、高砂に合流)、×高田川、中村、東関(以上昭和)、錦戸(以上平成)
九重ー八角(平成)
大相撲解体新書
★おまけ 23.4.30
■年寄の格について
年寄も番付社会。年寄は年寄でも、地位によって順席がある。引退して名跡を襲名したら、元横綱も元十両も、部屋持ちも部屋付きも、まずは年寄(平年寄)からスタート。ただし、よっぽど仕事の出来る人は覗いてやはり力士時代の最高位によって出世の速さは異なる。
それでも次々と新たな新米親方が入ってくるので、押し出されるようにして比較的早く「主任」に上がる。つづいて「委員」に。審判部に所属して土俵下に座るのは、委員以上である。
ただし、親方株を所有しない借株の親方は、平年寄のままである。武蔵丸や琴錦といった実績ある親方が何年も平年寄なのは気の毒だが、そのあたりは容赦なし。
それ以外の場合は、数年で委員となる。しかし、そこから先の役員へはとてつもなく高い壁。30年以上委員のまま停年を迎えるケースも少なくない。通常の役職は、実質3段階しかないのである。
役員は理事、副理事、監事とあり、選挙で決まる。理事は各部の部長を務める重要なポスト。その中から理事長が互選される。事前の根回しがあって出来レースで行われる理事選挙を勝ち抜くには、やはり一門内の支持を集めることが重要。出羽海一門のように3人当選させられる票を持つ一門もあれば、高砂一門は1名が限界。他に実績のある理事がいれば立候補すらままならない。千代の富士の九重は、高砂一門の先輩や本家の高砂(元大関朝潮)に唯一の理事枠を埋められて実績の割になかなか理事になれなかった。こういうケースを考えて、「役員待遇委員」というポストも用意されている。副理事と同等の役職につき、主に各部の副部長を務める。理事を優待した親方が就くことが多い。九重は、高砂が弟子の朝青龍の騒動で降格となった影響でようやく理事に就いたが、やはり弟子の千代白鵬の八百長問題に連座して役員待遇に逆戻り。理事長候補と目されるが、一歩後退。逆に貴乃花は二所一門に先輩の元横綱・大関が多く、理事出馬には10年はかかると思われたが、強引に立候補。抜群のカリスマ性で他の一門からも票を集めてまさかの当選を果たした。40代もいない理事の中、38歳が存在感を増している。外部理事の登用などの流れで、これから一層狭き門となる。
理事になっても停年の65歳は例外ではなく、理事長も停年で勇退するのは一般企業より潔いところ。理事長を降りた場合、春日野、時津風などは相談役という臨時ポストになったが、近年は一般の理事に戻って職務に就いている。前出羽海理事長が、審判部長として土俵したに座っているのは違和感があったが。若き北の湖理事長は長期政権が期待されたが、弟子の大麻事件で辞任、さらに八百長問題で弟子に連座し理事からも降格、役員待遇委員となっている。問題を起こした弟子は、いずれも弟弟子の部屋の力士を吸収した際に引き受けた力士。大麻疑惑の白露山は北天佑の二十山が早世したため、八百長疑惑の清瀬海は肥後ノ海の木瀬部屋が暴力団に関わって取り潰しとなった際に引き受けた。気の毒ではある。
年寄の番付は段階が少ない分、降格となればあっという間にペイペイと同格となる。10年来大阪場所部長を務めた間垣理事は、自身が病気に倒れた上、部屋に不祥事が続出。体罰事件で減俸、直後久々の有望力士・若ノ鵬の大麻事件で理事辞任(不祥事での理事辞任は初めてだったが、このあと続出する。)。さらにこの度の八百長事件で若天狼がクロ認定されて引退、降格処分によって主任に落とされた。長く理事として活躍し、十分理事長の資格もあったのだが。ならば同期の晩成型・鳴戸(元隆の里)に後を託すかと思いきや、昨年貴乃花グループを支持して鳴戸の理事選任を阻んでいる。年寄の世界も人間模様が色々見える。
■理事長レース
春日野、二子山までは現役時代の実力、部屋の格、協会内の実力ともに文句なしの理事長が続いていたが、続く出羽海時代に改革を巡って揉めてからは絶対権力はなくなっている。出羽海は6年間精力的な改革に取り組んだが、年寄株管理のタブーに斬り込んで体制崩壊。久しぶりに元横綱以外から理事長となった時津風(元大関豊山)は、32歳で理事になった学生相撲出身の元インテリ大関。年寄株等改革反対派の支持を基盤に選出され、4年間でひとまず混乱を収束させたが、若貴らの引退もあり相撲人気は下降線、改革も後退した。時津風は定年前に勇退、満を持して登場した大横綱・北の湖体制では借株解禁など出羽海時代の改革を廃して支持は磐石、公傷制度廃止などの荒療治を強行するなど豪腕ぶりも発揮。40代での就任とあって長期政権が期待された。しかし、時の看板力士・朝青龍の度重なる問題行動、さらに不祥事の連続。現役時代同様、ぶっきらぼうな対応も誤解を招いた感があり、対応ぶりに批判が集まった。ついには弟子の不祥事で辞任に追い込まれる。後を受けた武蔵川理事長は一代で武蔵川部屋を隆盛に導いた実力派。北の湖よりは巧く対応していたが、不祥事の波は止められず対応に終始。前向きな改革に取り組む間もなく、さらに野球賭博問題では弟子が関与して自らも謹慎、外部理事に代行を依頼。体調も崩してわずか1年あまりで辞任した。外部理事長登用を求める世論もあったなか、異例の投票で北の湖を退け放駒理事長が誕生。現役時代から角界の紳士と評された元大関は、今度こその期待を受けて毅然とした対応を見せている。不祥事は止まらず八百長問題に直面、春秋園事件以来の本場所中止、20名以上の力士らへの引退勧告と修羅場を経験。当然不満の矢面に立つ事となったが、潔癖で知られた同理事長でしか成し得ないという評価もされている。史上最大の難局を乗り切りつつある。
これでは誰も理事長などやりたくないだろうが、放駒理事長の任期も来年初場所まで。外部に譲らない限り誰かが引き受けなければならない。よほど意気込まない限り担えない重責である。将来的に、若手親方からの信望厚い貴乃花理事長の誕生は濃厚と見えるが、理事の互選で決まるもの。まだまだベテランの支持は薄く実現の日は遠そうだ。ニッパチの北の湖理事長で一気に若返ったが、武蔵川・放駒の世代に戻ったため候補者は増える。現役時代の実績で言えば九重という大物が控えている。大鵬、柏戸らが就任していないことから実績は関係ないとも言えるが、存在感という意味でやはりネームバリューは重要。初代貴ノ花はNo.2の事業部長まで上り詰めながら早世し、その存在は際立つ。上記のように弟子の不祥事で理事を降りたとは言え、高砂一門から新たな補充はなし。一門内のライバル、高砂も朝青龍問題で株を下げ、監事として一度は先行した弟弟子の八角も八百長問題で処分を受けた。次回選挙では復活するだろう。その前に、北の湖理事長の復活もまだまだ有力。先日の理事長選でも貴乃花ら4人の支持を受けたようである。
他に元横綱で言えば、部屋経営でも実績のある鳴戸(隆の里)、伊勢ヶ濱(旭富士)。どちらも本当なら現在理事職にあるはずだった実力者。芝田山(大乃国)は部屋での実績は劣るが、監察委員として存在感を発揮したい。部屋経営で言えば、現理事の友綱(魁輝)、宮城野(竹葉山)、若手では春日野(栃乃和歌)、境川(両国)も実績がある。名門の部屋持ちも力を付ける傾向があり、春日野の他、立浪、佐渡ヶ嶽、時津風、片男波といった若い師匠にも将来的にはチャンスが来るかもしれない。しかし理事経験者に限れば、停年に近い面々も多くかなり限られてきそう。北の湖、千代の富士の再戦を経て、貴乃花へ行くのか。しかし、3人とも部屋を大成功に導いたとは言えず、役員としての実務でアピールする必要がある。春日野、二子山、出羽海はそれぞれ横綱を輩出した実績を持つ。北の湖部屋からは三役なし、九重からは大関が出たが現在関取なし、貴乃花部屋は関取もまだいない。複数の役力士を出すような実績も、発言力に関わってくる。ダークホースが登場する余地もある。
★各一門理事・幹部候補生(停年までの残り任期)
二所−放駒理事長(0)、二所ノ関理事(1)、鳴戸(3)、不知火副理事(1)
出羽ー出羽海理事(1)、武蔵川理事(0)、三保ヶ関副理事(1)、北の湖(元理事長、役員待遇、3)、山科(役員待遇、3)
立浪ー友綱理事(3)、大島(元理事、0)、伊勢ヶ濱(主任、6)
時津風ー鏡山理事(5)、陸奥(元理事、本部委員、6)、伊勢ノ海(元理事、役員待遇、0)
高砂ー九重(元理事、役員待遇、4)、中村副理事(0)、高砂(元理事、4)、八角(元監事、本部8)、大山(2)
無所属ー貴乃花理事(13)、間垣(元理事、主任、3)