大相撲解体新書

相撲徹底分析

第2回は、「力士」を取り口(得意な攻め方、相撲の取り方)で分類する。
「力士データ」でもこの分類を使用している。

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二日目 取り口分類


総論

力士の個性は多種多様。二人として同じ取り口の力士はいないが、相対的には似た力士はたくさんいる。

相撲には「型」というものがあって、それを身につけることが出世への早道と言われており、稽古場で日々それを磨く。

当然憧れの力士をまねることもあろう。同じような取り口の力士がいるのも当然である。

すると、力士は無限といえどもだいたい何種類かの取り口に分類できるはずである。

数全てを網羅することはできないが、分類することで理解しやすくなるはずだ。

縦軸:↑速攻/遅攻↓    横軸:←技/力→

    スピ-ド 突貫    
  撹乱     突押  
  技能 正攻法 押し 疾風 前進
業師         パワ-
食下     本格    
    堅牢 荒技 怪力 スケ-ル

上の表は、これから取り上げる分類した取り口を、2つの基準で分類したものである。

「速攻/遅攻」は、その取り口の勝ち身の速さの目安。

「技/力」は、その取り口において重視される度合い。

大まかながら、マトリクスにする上で便宜上配置した。

複数の取り口を併用している力士も多い。


各 論

それぞれの取り口の、標準的なタイポロジー。

(低い)1<2<3<4<5(高い)

取り口

代表力士

前進型

1〜3 出島、岩木山、土佐ノ海、稀勢の里

出足を活かした押し、寄りでどんどん前に出ていく馬力相撲。

武双山、黒姫山

パワー型

1〜3 黒海、

パワーを武器に突き押し、寄りで圧倒する相撲。上体の強い力で攻める。

北の湖、小錦、曙、武蔵丸

スケール型

0、4 琴欧州、露鵬、白露山

懐の深さ、リーチを活かした大きな相撲。強引に捕まえるか長い手で一方的に突く。

貴ノ浪、大内山、

怪力型

1、2 魁皇、若の里、玉乃島

並外れた腕力を活かしたおっつけ、投げ、吊り、極めなど力技で攻める。

吉葉山、安芸乃島

突押型

3、4 千代大海、雅山、北勝力

離れて激しい突き押しに徹する相撲。突き出しの多いタイプ。 

麒麟児、前の山

疾風型

0、1 普天王、北桜

上手を引きつけて、体をぶつけるような怒涛の寄りが持ち味。

東富士、三根山、琴風

本格型

0、1 白鵬、旭天鵬

どっしり構えて四ツに持ち込み、胸を合わせて正面から寄り、押しで決める。

双葉山、貴乃花、大鵬

正攻法

安馬、豊真将、高見盛

懐に入り、前褌を取ったり二本差したりと相手より有利な形を作って攻める。

千代の富士、貴ノ花、若嶋津

堅牢型

栃乃洋、十文字、光法

腰が重く、時には半身になって守り、機を見て攻める。下手相撲に多い。

輪島、金城

荒技型

朝青龍、春日王

独特の力とセンスで大技を繰り出す。

初代若乃花、栃赤城、陸奥嵐

突貫型

1、2 垣添、豪風

重心低く、おっつけ・ハズを効かせた押し、寄りの速攻。

琴錦、富士桜、北勝海

スピード型

1〜3 朝青龍、琴光喜、皇牙

鋭い寄り、突きなどで前へ横へスピードを活かして攻め切る相撲。

北の富士 追風海

押し相撲型

2,3 武雄山、栃栄、

突き放すよりも、近い距離で下からもちゃもちゃと押し、引き技を誘う。

大受、若羽黒、琴ヶ梅

撹乱型

3、4 千代大海、闘牙、旭鷲山、玉春日

変化技を交えた緩急をつけた突き押し相撲。間合を計り方がうまい。

貴闘力、寺尾、龍虎

技能型

1,2 栃東、栃乃花

おっつけなど基本技に長けた相撲。前捌きで巧さを発揮する玄人好みの相撲。 

栃木山、栃錦

業師型

安美錦、旭鷲山、豊ノ島、時天空

食いついて多彩な技を武器にした相撲。投げ、捻り、掛け技の匠。

栃錦(初期)

食下り型

 

懐に入って食いつき、小技を絡めて幻惑する。無双、足癖、反り技と変幻自在。

舞の海 智乃花 岩風

 

 

取り口の分類、名称はかなり独断なところがあるので、だいたいの印象で掴んでいただきたい。

16の取り口に分類したが、もっと合理的な分類はできないか、研究中。

もちろんさらに細分化も可能だが、あまり細かいと分類の意味がなくなるし、最適なカテゴリーの数は決めづらい。

現段階での筆者の見解・見識のレベルから、このくらいに分けるのが妥当と判断している。

時代によって最適なカテゴライズも変化していくことだろう。

昔の相撲なら、「食下り」型に近い力士がもっといただろうし、そうなると多くの力士が属するタイプは細分化を求められることになる。

平成20年ごろの相撲界において一ファンが行った取り口の分類として、後世比較すればそれなりの資料となることだろう。

 


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二日目 取り口分類

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