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平成相撲史 平成の相撲史を紐解く。いつものようにデータ形式で必要と思われる情報を整理。 普通の優勝力士表では見られない、優勝争いの流れや2番手の力士がわかるものにした。 あわせて各場所を3つの基準(ドラマ性・レベル・白熱度)で評価した。 また、1年ごとの顔ぶれの変化がわかるように表に整理したので参考にしていただきたい。 さらに相撲史におけるその一年の意義や、勢力の変遷をコンパクトにまとめている。 また、私製表彰力士として、年間表彰を設けて活躍の際立った力士を取り上げた。 各場所の内容は、優勝争いと上位陣の動向、役力士の成績、三賞力士らの活躍を中心に振り返る。 元年〜3年 4年〜6年 7年〜9年
10年〜12年 13年〜15年 締りB 伯仲B↑ 接戦B 躍進C↑ 人気A↑
注) (決定)は、優勝決定時を表す。「13」、「14」等は決定日。千秋楽決着は、「決」、「巴」、「C」、「D」が決定戦(人数で分類)。「相」は前日まで相星、「直」は1差の相手と対戦して、本割で決定。それ以外は「千」。
<この一年> 日本勢巻き返すも なお厚い3横綱包囲網 アラサー上位陣にあって、王者白鵬に対抗する一番手は、ようやく現れた平成生まれ大関・照ノ富士。強引な相撲ぶりも整備されはじめ、世代交代を引っ張っていくかに思われたが、優勝へ順調に走っていた昨秋に負った膝の怪我から暗転。回復どころか他の怪我も重なる悪循環で絶不調に陥った。奮闘が目立ったのがベテラン勢。初場所で32歳最古参大関琴奨菊が初優勝。秋には30歳の大関豪栄道が全勝で初優勝。10年賜杯から遠ざかっていた日本勢がようやく息を吹き返した。しかし綱取りとなると、3横綱が壁となって立ちはだかる。琴奨菊、豪栄道とも3横綱に全敗で、綱取り場所は二桁届かず。春・夏・名古屋と優勝争いを演じた稀勢の里も、勝てば初優勝、横綱も、と期待された直接対決で尽く跳ね返され、猛追するも逃げ切られた。 照ノ富士の不振に合わせるように新世代のホープは停滞。平成生まれの先頭を走ってきた高安は躍進して九州で大関挑戦の権利を手にしたが、負け越し。それ以外に急浮上したのは大卒の正代くらい。先輩照ノ富士との競り合いが期待された大器・逸ノ城も後退。
<選考理由>24年以来の優勝2回に留まるが、30連勝超の実績を買って白鵬を最優秀に。優秀には年間最多勝を評価して、優勝0ながら稀勢の里を。他の4人は優勝1回ずつも波が大きかった。年間三賞は残念ながら敢闘賞安のみ。故障による下位転落から復活を期す年だったが、二桁3度。初の大関挑戦も経験した。もうひとり複数受賞したのは初場所新入幕の正代。下位と中位で二桁勝利で敢闘賞を得たが、同じ三賞2回でも三役での連続受賞の高安には見劣りした。もちろん新人賞には文句なしで相当。年間を通じて多くの力士が受賞したが、単発の活躍が目立ち年間表彰には満たず、殊勲、技能は該当なしとした。そのほか、度重なる故障で大きく番付を下げていた千代の国が上位まで進出してきたことを評価、カムバック賞とした。 <廿八年初場所> 競り勝ち ドラマAA レベルB 白熱度B 10年ぶり日本勢V 琴奨菊3横綱撃破、ライバル豊島振切り悲願 <廿八年春場所> 三つ巴 ドラマC レベルB 白熱度B 白鵬 2大関を叩いて逃げ切る <廿八年夏場所> 一騎打ち ドラマB レベルB 白熱度B 全勝決戦は今度も白鵬 稀勢を返り討ち 初日から白鵬と稀勢の里が無傷で並走。追いかけていた鶴竜、日馬富士、豪栄道が後退し、いよいよ一騎打ちとなった。共に3大関を退けて13日目に全勝決戦。これを勝てば先場所の13勝が生きて横綱昇進も見える稀勢の里だったが、左四つになりながら下手投げについていけずまたもや白鵬の軍門に降った。さらにお決まりの連敗を喫して14日目に優勝決定。白鵬は15戦全勝で連覇。3年前の全勝対決の再現となった。白鵬はケチがついた先場所のモヤモヤを振り払った。 稀勢の里は連続の13勝で次こそは横綱と期待が高まる。鶴竜11勝、日馬富士10勝に終わった。琴奨菊10勝、豪栄道9勝と勝ち越したが、照ノ富士は連勝のあと13連敗を喫し大関ワーストタイ記録。別人のように弱体化。新関脇琴勇輝は1横綱2大関に勝つが、新小結で勝ち越しをかける魁聖に敗れ1点負け越し。西関脇勢、再小結隠岐の海と、横綱に勝った力士はみな負け越して殊勲賞はなし。中位で11勝の御嶽海が初の敢闘賞、4枚目10勝の栃ノ心は大して上位とも取っていないが初の技能賞を得た。新十両19歳佐藤と、居反り得意で小兵の宇良が躍動し共に二桁。 <廿八年名古屋場所> 競り勝ち ドラマB レベルC 白熱度B 直接対決制した日馬V8 稀勢また一歩及ばず 今度こそ稀勢の里の綱取りなるか。先場所敗れた鶴竜、苦手琴奨菊は前半で途中休場。日馬富士は3日目に土、5日目稀勢の里に土がつくと白鵬も敗れ、9日目には白鵬と日馬富士が続けてコケて、いよいよ運が向いてきたかに思われたが、翌日松鳳山の変化に落ちてお付き合い。混戦模様だったが、不調白鵬はカド番脱出も危うい照ノ富士に敗れ後退。13日目、2敗同士の対決となり、さあ優勝へ横綱への大一番と期待されると、案の定日馬富士のスピードに圧倒されて3敗目。3場所連続1差で横綱の結果を待つが、前2場所とは逆に日馬富士が白鵬を下して逃げ切った。 33連勝で止まった白鵬10勝止まり、大関豪栄道は負け越し、照ノ富士は千秋楽にカド番脱出。新関脇魁聖、栃ノ心は負け越し。勢いのあった小結琴勇輝は故障もあって2勝に終わる。再小結高安は3大関破って初めて三役で二桁11勝、初の技能賞を獲得した。関脇以下で初めて横綱白鵬に続けて勝った宝富士は10勝で敢闘賞。12勝の貴ノ岩も敢闘賞。日馬富士を破って10勝の嘉風が殊勲賞。先場所の安美錦に続いて豊ノ島もアキレス腱を切り、当代きっての老巧2人が全休で長く保った幕内から転落。場所後、元千代の富士の九重が死去。 <廿八年秋場所> 独走 ドラマB レベルB 白熱度C カド番全勝V豪栄道 日本勢20年ぶり 白鵬が初めての全休。鶴竜は連敗スタート、綱取り継続の稀勢の里も3日目で2敗を喫し序盤から荒れ模様、これを演出したのは前頭筆頭の隠岐の海。ベテランの域に入った31歳は、2横綱3大関を破って6連勝。立ちふさがったのは、最後の上位陣豪栄道。7日目全勝対決を制して単独トップに立った。11日目、1差で追いかける日馬富士は、好調の関脇高安に2敗に引きずり込まれる。豪栄道は2敗稀勢、3敗鶴竜を下してライバルを蹴散らし、13日目日馬富士のもろ差しの攻めも伝家の宝刀首投げで裏返して独走。14日目玉鷲を破って優勝決定、千秋楽も締めて日本人力士としては20年ぶりの全勝優勝。カド番とは思えない見事な初優勝だった。 日馬富士12勝、鶴竜、稀勢の里は何とか10勝。琴奨菊は13日目にカド番を脱出したが、照ノ富士は後半9連敗でまた二桁黒星でカド番に逆戻り。東関脇高安は早々に連続二桁をマーク、敢闘賞を得たが、最後の平幕戦3連敗が痛恨。西関脇宝富士は4勝、東小結魁聖6勝、西小結栃煌山は初日鶴竜を破るも7勝に終わって三役は3つ空席に。隠岐の海は結局9勝止まりだったが殊勲賞。5,6枚目で10勝した御嶽海、玉鷲とともに三役復帰へ。度重なる故障で十両落ちも経験した遠藤が、13勝で敢闘賞。高安との2敗対決も制して最後まで優勝を争った。 <廿八年九州場所> 逃げ切り ドラマC レベルC 白熱度C 鶴竜充実の快走 1年ぶり賜杯 豪栄道綱取り、高安大関取りが注目された場所。前半戦を盛り上げたのは、先場所好調の勢いを駆った力士たち。初日日馬富士を破った玉鷲は、6日目豪栄道に土をつけるなど3大関2関脇を破り、遠藤は白鵬、稀勢の里ら1横綱3大関を倒した。豪栄道は好スタートを切ったが微妙な判定で2敗、3横綱に完敗で二桁も届かず。高安は中盤5連敗を喫して負け越し、三役を守るのがやっと。折返し地点で無傷の上位陣は鶴竜だけ、これを日馬富士、白鵬が1差で追走。この展開を動かしたのが2敗の大関稀勢の里。10日目からの3日間で横綱を3タテ、自身も急浮上したが、翌日平幕栃ノ心に取りこぼして脱落。1敗を守り続けた鶴竜に2横綱もついて行けず、14日目に7場所ぶりの優勝が決定した。技のキレが戻った鶴竜は、昇進後最高の成績・内容で14勝。 1年間のうっ憤を晴らした。 日馬富士、白鵬11勝。稀勢の里は12勝で、白鵬の10年連続年間最多勝を阻止。これが大きかった。琴奨菊は10敗を喫し、何とか8勝で脱出した照ノ富士とまた入れ替わりのカド番。関脇復帰の隠岐の海は5勝止まり。新小結御嶽海は6勝。玉鷲は突き押しを評価されての技能賞。32歳にして初めて三役で勝ち越して10勝。新入幕石浦は2日目から10連勝。小兵らしい俊敏な技で魅了し敢闘賞獲得。前頭3枚目正代も稀勢を破り11勝で敢闘賞。この両者を破って11勝の30歳荒鷲も三賞こそなかったが見事な活躍だった。 締りC 伯仲B 接戦B 躍進A 人気A 元年〜3年 4年〜6年 7年〜9年
10年〜12年 13年〜15年
<この一年> 和製横綱誕生に沸くも 乱調目立った4横綱時代は残念な幕切れ 初場所後に稀勢の里が昇進し、4横綱となる。揃って30歳を超えていたが、直近5場所で1度ずつ優勝、実力伯仲の優勝争いが期待された。ところが、看板が揃ったのは僅か11日のみ。鶴竜は春場所の10勝しか皆勤がなく、長期休場で再起をかける。新横綱場所で連覇を果たして新主役にと期待された稀勢の里は、代償に負った左大胸筋の断裂から調子を崩して休場続き。全休明けの九州では5つも金星を与えて途中休場と厳しい状況。白鵬も休場が増えてきたが、ライバルの失速も追い風になり、3度の優勝で面目を保った。日馬富士は満身創痍の身体と折り合いをつけつつ最低限の星を残し、3横綱全休の秋は1人横綱として踏ん張って1年ぶりの優勝を果たした。ところが10月の鳥取巡業中に3横綱が会した場で、貴ノ岩に暴行、怪我を負わせていたことが発覚。日馬富士は目標の10回目の優勝を前に無念の幕引きとなり、平成の第三期4横綱時代はわずか5場所で閉じた。 大関陣も受難。1年前の初場所は日本勢10年ぶりの優勝を果たして時の人となった琴奨菊は、皮肉にも日本人横綱の場所で陥落。復帰を狙った春は健闘したが、14日目に変化技に望みを絶たれた。この無慈悲な変化で猛批判にさらされたのは照ノ富士。久々に好調で、この勝利で優勝争いトップに立ったが、翌日は手負いの稀勢の里に逆転を許した。実は場所中膝が悪化した中での出来事だったが、運に見放されたかのように7、9月を連続途中休場、26歳にして陥落となり、さらには暴行事件にも巻き込まれ、心身のダメージが慮られる。豪栄道は、秋場所一時2差の首位に立ったが、自滅して逆転を許した。安が初場所から3場所連続二桁、三賞を獲得し、名古屋で新大関となったが、怪我に祟られまだ二桁勝利なし。 上位陣を苦境に追い込んだのが、幕内上位の充実。三役に定着した御嶽海を筆頭に、貴景勝、阿武咲、北勝富士、宇良。入幕間もない若手が初挑戦で横綱大関を食う活躍を見せ、毎場所三賞候補が乱立した。若手だけでなく、とうに30歳を過ぎた玉鷲、嘉風は三役を主戦場に、大関から落ちた琴奨菊共々上位陣を苦しめた。一方で、前年新入幕で活躍した正代や逸ノ城、貴ノ岩、遠藤ら20代後半の実力者は飛躍し切れず、同世代の高安に続く活躍は見られない。ベテランの域に差し掛かった黄金のロクイチ世代も、稀勢の里の昇進に奮起とはいかず、凋落の様相を呈している。
<選考理由> 白鵬は全勝もあり、前年を上回る優勝3回を記録。最優秀に値する実績だが、休場が2回あり、1位に返り咲いた年間勝利数も、史上最低の59勝に留まった。さらに九州場所は土俵内外で大きく評価を落とした。結果、優秀止まりとした。連覇を果たして優秀力士に相当するはずの稀勢の里も、その後4場所連続休場では表彰できない。横綱が金星を大量供給し、勢いのある若手には稼ぎ時となった。三賞候補も豊富で、3場所連続受賞で大関昇進を果たした高安を一番手に、同じく受賞3回の御嶽海、貴景勝。受賞2回でも、敢闘に史上初の新入幕から3場所連続二けた勝利を記録した阿武咲、技能には二桁こそないが35歳で三役に定着した嘉風と、受賞回数以上のインパクトを残して捨てがたい。また技能1回のみで二桁2回の北勝富士も、3場所連続で金星を挙げる活躍。運に恵まれず、三賞や三役を逃していたことも考えれば、他の候補に匹敵と考えて技能賞に加えた。新人賞も3人が甲乙(丙?)つけがたく。かつてない表彰大放出となった。 <廿九年初場所> 逃げ切り ドラマA レベルC 白熱度C 稀勢悲願なる 19年ぶり和製新横綱誕生 殊勲琴奨は大関陥落 日馬富士、鶴竜が途中休場。大関豪栄道も勝ち越し後に休場となり、照ノ富士、琴奨菊は序盤から負けが込んだ。上位が崩れる中で、白鵬と稀勢の里が白星を並べる。中日、波瀾を起こしたのは30歳にして上位初挑戦の伏兵荒鷲。5連敗スタートだったが、前々日の鶴竜戦に続く大金星。翌日稀勢の里も、カド番で2勝6敗と追い込まれた琴奨菊の出足に屈し土がつくが、その弟弟子安が援護射撃に成功、1差変わらず。平幕の2敗貴ノ岩も加え、しばらく膠着状態が続く。13日目、これまた安が露払いとばかり貴ノ岩を破り、2強の対決に。14日目、稀勢の里は逸ノ城を寄り切って13勝目。すると結びで貴ノ岩が白鵬を下し、千秋楽を待たずに稀勢の里の初優勝が決まった。さらに横綱昇進の理事会召集が決まったが、楽日本割で白鵬の意地の寄り身を堪えて逆転。堂々と最高位へ上り詰めた。 白鵬は11勝4敗。鶴竜は先場所が嘘のような大乱調で関脇以下に5敗。栄光の初優勝から1年、琴奨菊は12日目玉鷲に押し出され陥落決定。日本勢復活の堰を切った大関が、5年間日本勢の砦として共に大関を張ったライバルの横綱昇進に一矢報いつつ、その座を去った。楽日は10敗同士の大関戦となり、すでに陥落が決まった大関にも敗れた照ノ富士も深刻。 32歳の新関脇玉鷲は千秋楽不覚を喫して惜しくも連続二桁は逃したが健闘の9番。25歳の正代はあまり見せ場はなかったが、三役は維持の7勝。大関取り再スタートの小結安は11番勝って敢闘賞。栃ノ心は白星のないまま途中休場。前頭筆頭御嶽海は2横綱2大関を破っての11番で技能賞。殊勲賞は11勝の貴ノ岩。最後の3日で他の受賞者を3タテした蒼国来が単独準優勝となる12勝をマークし、技能賞。 <廿九年春場所> 一騎打ち ドラマAA レベルB 白熱度AA 手負いの新横綱稀勢の里 奇跡の逆転劇で涙の連覇 17年ぶりの4横綱。白熱の優勝争いが期待されたが、序盤で白鵬が途中休場。鶴竜、日馬富士も中盤までに3敗。大関豪栄道も負けが込んで休場した、走ったのは田子ノ浦勢。安は6日目大関照ノ富士との全勝対決を制し、新横綱の兄弟子稀勢の里と並走。これを1敗で照ノ富士と平幕栃煌山が追った。終盤に入り、高安が横綱に連敗し、栃煌山共々脱落。楽日対戦予定の両者、一騎打ちの展開となる。嵐は13日目から。照ノ富士は鶴竜を倒したが、稀勢の里は日馬富士の速攻に完敗。しかも土俵下に突き落とされて左肩の辺りの筋肉を傷めた。14日目も大荒れ。俄かに復活した照ノ富士だが膝の調子が悪化、この日は出足の琴奨菊を変化で仕留めたが、これで大関復帰へあと2勝としていた琴奨菊は望みが絶たれた。稀勢の里は結びで鶴竜に力なく寄り切られた。これで照ノ富士が先頭に立ったが、稀勢の失速が濃厚な中で、大関復帰へ必死のベテランに対してあまりに無情な変化技に、場内大ブーイング。外国人差別的なヤジも飛んで問題となった。不穏な空気のまま千秋楽。13年夏の貴乃花を彷彿させる展開も、追う立場でなお状況は悪い。ところが、本割・決定戦と捨て身とも言える思い切った相撲で2たび逆転勝利。奇跡というべき大逆転劇を演じて、稀勢の里が新横綱優勝を飾った。 両横綱とも早々に脱落し10勝5敗。照ノ富士はこの1年で3度も二桁黒星を喫する不振から突如復調して13勝したが後味の悪いものとなった。3関脇は存在感を発揮。琴奨菊は序盤2横綱を破って順調に星を伸ばしたが、終盤取りこぼしが響き大関復帰の10勝へ1番足らず。玉鷲は終盤2横綱を破って給金。安は12勝をマーク。優勝のチャンスがあったが連敗が1つ余計だった。3関脇で唯一横綱戦勝利がないが、優勝争いを盛り上げた点を買って殊勲賞。フレッシュな両小結、御嶽海は9勝、初日白鵬を破った正代は4勝止まり。入幕2場所目の貴景勝が11番勝って敢闘賞。技能賞は該当なし。金星を挙げた力士4人が二けた黒星を喫しては、いよいよ横綱の権威が問われる。4横綱時代は荒れ模様だ。 <廿九年夏場所> 突き放し ドラマC レベルB 白熱度C 白鵬追撃寄せ付けず復活全勝 高安大関へ 先場所好成績の稀勢や照らが序盤で躓く中、白鵬と日馬富士が白星を並べる。関脇も好調で追い上げていたが、玉鷲は日馬富士に敗れ3敗。安は白鵬に敗れ2敗に後退。両横綱の決戦かと期待されたが、日馬富士が力尽いて終盤は不戦勝の1勝のみ。白鵬は13日目3敗玉鷲を下し、14日目は連敗スタートから11連勝と勢いのある照ノ富士を迎えたが、貫禄の相撲で退け優勝決定。昇進後最長ブランクとなる5場所ぶりの賜杯を抱き、全勝で締めた。 ケガの回復が心配された稀勢の里は踏ん張っていたが、中盤連敗して途中休場。鶴竜も早々と途中休場に追い込まれた。日馬富士は11勝。照ノ富士は先場所に続く次点の12勝。カド番豪栄道は9勝で脱出。 関脇・小結は5人中4人が勝ち越し。玉鷲は10勝、高安はまた最後に連敗したが、13日目日馬富士を破って挙げた11勝目が効いて、技能賞を手土産に大関昇進を決めた。琴奨菊は後半も盛り返すも7勝止まり。小結の御嶽海と嘉風は共に8勝ながら2横綱を破っており、殊勲/技能の賞を得た。その他三賞は、新入幕10勝の阿武咲に敢闘賞。候補者が続出、12勝の休場明け栃ノ心、11勝では派手な相撲で魅せた入幕2場所目・宇良、先場所受賞の貴景勝も見送りとなった。もう一人の新入幕は、豊山を襲名したが4勝止まりで陥落。 <廿九年名古屋場所> 逃げ切り ドラマD レベルC 白熱度C 白鵬連覇、余裕の独走 若手は躍動 4横綱3大関となったが、初日から荒れた展開。まず新大関高安が上位初挑戦の北勝富士に敗れると、3大関全滅。鶴竜は勝ったが、稀勢の里、日馬富士と立て続けに敗れた。上位陣では前半戦のうちに稀勢の里、鶴竜、照ノ富士がリタイア。白鵬が余裕を持って逃げた。11日目、成長著しい関脇御嶽海に土をつけられたが、同日平幕1敗の碧山、2敗高安も敗れ縮まらず。高安は連敗グセを露呈して脱落。2敗碧山、3敗日馬富士が懸命に追いかけたが、千秋楽日馬富士を退けた白鵬が、そのまま危なげなく39回目の優勝を果たした。前頭8枚目碧山は13勝で敢闘賞を受賞したが、千秋楽に小結と当てられたのみ。あまりにもノーマークだった。 日馬富士は連敗スタートながら踏ん張り11勝。2横綱は2場所連続途中休場。前半は1敗で収めた新大関は息切れ、千秋楽7ー7の豪栄道を破って4連敗で止め、9勝6敗。2大関はカド番に。関脇御嶽海が文句なしの殊勲賞終盤3連敗で二桁に乗らなかったのは悔やまれる。三賞候補は乱立したが条件付きが多く、小結嘉風は1横綱2大関を破っていたが、二桁勝てば技能賞となる碧山戦を落とし、1横綱2大関を倒した北勝富士も既に8敗の小結琴奨菊に屈し敢闘賞を逃す。強豪にも勝って新入幕から連続二桁の阿武咲も、11勝目を御嶽海に阻まれ敢闘賞を逸した。さらに敢闘賞確定の碧山も、優勝すれば殊勲賞の条件を満たせず。4人もの三賞が幻に終わるのは超異例。結果だけ見ると、2人しか受賞者がいないのに5枚目12勝の栃煌山が落選していることが際立つ。また、金星も獲得した小兵・宇良の活躍も見逃せない。しかし皮肉にも白眉とも言える高安戦で負った怪我の影響で負け越し、さらに翌場所も負傷休場して、一気に幕下下位まで転落してしまったのは残念だ。 <廿九年秋場所> 追い込み ドラマA レベルD 白熱度B 一人横綱日馬富士、豪栄道との3差を逆転 3横綱が全休。さらに高安、照ノ富士の2大関も前半戦で離脱。初の一人横綱を務めることになった日馬富士だが、3日目から3連敗で黒星先行。こちらも休場必至かと思われたが、休むに休めない状況。思わぬ展開に、伏兵が優勝候補に上がった。平幕に落ちた元大関琴奨菊は、日馬、豪栄を破って4連勝スタート。ところが直後4連敗。入幕3場所目の阿武咲は横綱初挑戦で日馬を破り5連勝、単独トップ。しかしこれを止めた大関豪栄道、黒星スタートから勝ち進み、首位固め。平幕で追いかけていた千代大龍、貴ノ岩らが脱落、11日目を終えて後続に2差がついた。ところが、ベテラン松鳳山、新鋭貴景勝に連敗。10日目で4敗目を喫して皆勤も微妙だった日馬富士に、自力優勝の可能性が復活した。14日目は共に勝ち、千秋楽直接対決。もはや勢いは追いかける横綱にあり、本割、決定戦と圧倒した日馬富士が史上初の3差逆転劇を完成させた。場所前から全休の可能性も示唆された中で、苦しみながら耐えた一人横綱に幸運が舞い降り、史上3度目の11勝での優勝を果たした。 強行出場の照ノ富士は膝をさらに痛め休場。一時の不調から春夏は優勝を争うまでに回復したが、急転大関陥落となった。両関脇は序盤出遅れも8勝。嘉風は技能賞獲得。小結玉鷲、栃煌山は負け越し、上位で10勝の琴奨菊、阿武咲が昇進へ。阿武咲は、史上初新入幕から3場所連続二桁で、2度目の敢闘賞。優勝を争う日馬富士、豪栄道を終盤破った貴景勝が9勝で殊勲賞。もう一人、新入幕の朝乃山も14日目まで優勝争いに残り、10勝で敢闘賞。 <廿九年九州場所> 独走 ドラマB レベルC 白熱度D 逆風何のその白鵬大台V40 日馬引責、土俵去る 平幕貴ノ岩が初日から謎の休場。何と秋巡業中に横綱日馬富士から暴行を受けていたことが明らかになり、初日から連敗した日馬富士は休場。白鵬、鶴竜らの同席、貴乃花親方の言動など、九州場所そっちのけで事件への報道が過熱していく。 立ち上がりの良かった両大関は二桁届かず。関脇は御嶽海がまた二桁に届かず9勝、殊勲の嘉風は6勝止まり。大関復帰を目指した照ノ富士は4連敗で休場。小結復帰の琴奨菊は6勝。新三役の阿武咲は初日日馬富士に連勝後6連敗したが、粘って勝ち越した。 締りD 伯仲A 接戦C 躍進B 人気B 元年〜3年 4年〜6年 7年〜9年
10年〜12年 13年〜15年
<この一年> 覚醒あり復活あり混沌 平成は最後まで貴劇場 3横綱となったが、稀勢の里5場所、白鵬4場所、鶴竜2場所と休場が目立った。初場所、29年が休場続きだった2横綱は、稀勢の里がまた途中休場に追い込まれたが、進退を賭けると明言していた鶴竜は10連勝で脱出。この場所は急失速で賜杯を譲ったが、翌場所も調子を維持して復活優勝。夏は自身初の連覇を達成し、休場勝ちでこの場所11勝に終わった白鵬を押しのけ、一躍優勝争いの本命視されるほどになった。それも束の間、名古屋は序盤乱調で休場。この場所は3横綱とも不在となった。秋は白鵬と10日目まで全勝で並走したが、初場所以上の失速ぶりで終盤5連敗。白鵬と直接争って立場を逆転するどころか、この場所ようやく皆勤した稀勢の里にも敗れ、九州は全休。危機からの劇的な復活も尻すぼみに終わった。白鵬は秋の全勝で実力は見せたが、4場所休んでは影が薄い。稀勢の里は秋10勝で一息つけるかに思われたが、2横綱全休の九州では、宮城山以来87年ぶりの4連敗。未勝利のまま横綱不在を招き、ついに横審の激励を受けた。 横綱陣が3場所の優勝に終わり、残りの場所を制したのは大関ではなく、関脇、小結、平幕だった。初場所は31歳の栃ノ心が突然覚醒、鶴竜が自滅して首位に浮上すると、そのまま止まらず平幕優勝。春は三役復帰し10勝、夏は逆転優勝を許したが13勝で一躍大関に昇進した。横綱不在の名古屋は新大関栃ノ心が5連勝で主役に立ちかけたが、足の親指を故障し暗転(残り2場所は何とか給金に留まった)。すると関脇に定着していた御嶽海の独走となり、逃げ切った(大関取りを期待されたが、続く2場所は結果が出せず白紙に)。そして九州は小結貴景勝。幕内最年少が、主軸不在の優勝争いのトップに立つ。追走し、直接対決で並んだのは大関安。初、春場所と12勝記録している実力派だが、千秋楽を落とし初優勝を逃した。豪栄道は秋の12勝はあったが、優勝争いの重要な一角を占めるまでには至らず。関脇以下は、年間三役で通した御嶽海を筆頭に、貴景勝、ベテラン玉鷲、ようやく復調の逸ノ城が定着。それ以外は激しく入れ替わった。新入幕敢闘賞を3人が記録。名古屋では御嶽海と争った豊山、朝乃山の大学トリオが息巻いたが、他の新興勢力同様活躍は単発に終わった。 前年11月の日馬富士暴行発覚以来の土俵外の注目は、年中続いた。焦点は被害にあった貴ノ岩の師匠・貴乃花の強硬な一挙手一投足に移った。貴公俊の付け人殴打事件、理事選強行出馬での惨敗、貴一門の解体、降格処分と続いて孤立を深め、一門所属義務化が引き金となって10月に電撃的退職。貴乃花部屋消滅で幕を閉じた。それでもまだ話は収まらず、千賀ノ浦部屋に移籍直後の貴景勝が初優勝。これで終わればよかったが、貴ノ岩による付け人への暴力が発覚。引退となる騒動に。平成の相撲界を前半は超人気力士・大横綱、後半は若き理事長候補として話題を集め続けた風雲児は、最後まで世間を騒がせつつ平成とともに去った。
5人の優勝者が出て、全場所勝ち越し力士のいなかった幕内の土俵。複数優勝は鶴竜の2回のみ。優勝1、次点1の栃ノ心が年間最多勝と合わせて迫る。しかし鶴竜は休場2回、横綱にあるまじき終盤4連敗、5連敗を喫しては最優秀は与えづらい。栃ノ心も史上最低の年間最多勝(59勝)で、大関としては二けた勝利がない。白鵬時代に入って初の連覇を果たした鶴竜の実績を買って優秀力士とした。唯一の全勝優勝を記録した白鵬は4場所休場では厳しい。年間三賞はすんなり優勝力士3人。貴景勝は、その独特の押し相撲を評価したかったが、技能賞は未受賞。栃ノ心は殊勲2、敢闘1、技能2だが、真に殊勲と言える星を挙げたのは春くらい。御嶽海も優勝を評価されての殊勲賞受賞で、翌場所横綱陣に歯が立たなかったように、殊勲の星自体はあまりなかった。そのあたりを踏まえて賞を振り分けた。阿炎は敢闘賞で幕内デビュー、早々に上位に上がり、白鵬を初顔で破るなど金星2つを挙げた。 <丗年初場所> 抜け出し ドラマB レベルB 白熱度C 平幕栃ノ心が優勝 上位陣不調、快走の鶴竜も急失速 新横綱優勝後4場所連続休場中の稀勢の里、先場所優勝の白鵬は序盤で休場。両大関も中日までに3敗。29年は皆勤が一度しかなかった横綱鶴竜は、進退かけた厳しい場所だったが、意外にも無傷で走る。7日目、全勝で並んでいた前頭2・栃ノ心が挑戦したが、退けられた。7連勝スタートの御嶽海は中日から5連敗で脱落。上位力士に大差をつけた鶴竜が奇蹟の復活優勝を果たすかに思われたが、11日目玉鷲に敗れると、遠藤、御嶽海、安と4連敗。前半で2大関を破っていた栃ノ心は、御嶽海との1敗対決を制すとあとは平幕ばかり。絶好調の巨人に叶う者はなく、14日目松鳳山の突っ張りに真っ向突き返して逆の左四つに組み止めて寄り切り、優勝決定。型にこだわらず前に出る新スタイルがハマった。平幕優勝は24年の旭天鵬以来、春日野部屋には昭和47年の栃東以来となる賜杯を呼び込んだ。 鶴竜は千秋楽逆転の投げで何とか連敗を止め11勝。大関安は後半無敗で12勝。豪栄道は8勝に終わった。関脇御嶽海は後半鶴竜にしか勝てず8勝。玉鷲は全勝横綱を止めたが6勝止まり。21歳の両小結は、貴景勝5勝10敗、阿武咲4勝6敗5休。東筆頭北勝富士も4勝止まりと、ホープは大物食いこそしたが、軒並み壁にぶつかった。栃ノ心が殊勲・技能のほか、新入幕の阿炎と竜電が10勝して敢闘賞。元大関照ノ富士が前頭10枚目で復帰したが、1勝もできずに休場して、4人目の十両転落となった。 <丗年春場所> 逃げ切り ドラマB レベルC 白熱度C 鶴竜今度こそ復活 一人横綱責任果たす 2横綱が休場を決め、先場所負傷して手術明けでもある鶴竜だけが出場。不安を抱える横綱は苦しみながらも白星を重ね、一方両大関には初日から土がつくなど、序盤で2差がついた。平幕魁聖だけが全勝で並んでいたが、10日目に小結逸ノ城に敗れて単独トップに立つ。12日目、1敗魁聖は遠藤に引き落とされ、2敗安も不覚。鶴竜が優勝に王手をかけるかに思われたが、栃ノ心が殊勲。先場所の覇者ながら怪我を抱え、前日大関に連敗して圏外の4敗に後退していたが、大きな一番を取った。差は変わらず、13日目魁聖が挑戦するも返り討ち。王手をかけた鶴竜は、14日目豪栄道を引き落として優勝決定。がけっぷちを乗り越えて、8場所ぶりの栄冠に輝いた。 大関高安は、連敗スタートが響き、千秋楽熱戦、取り直しの末に鶴竜を下して連続の12勝とするも時すでに遅し。豪栄道は9勝どまり。関脇御嶽海は1点の負け越しに終わったが、栃ノ心は10勝をマークして殊勲賞。来場所の大関挑戦権を得た。小結では逸ノ城が9勝で関脇復帰へ。4年ぶり返り咲きの千代大龍は4勝どまり。前頭筆頭の遠藤は技能賞の活躍でついに新三役を決めた。優勝争いに加わり12勝の魁聖は敢闘賞。負越したが、両大関に痛恨の3敗目を与えた千代丸の上位初挑戦も見事だった(ところが以後負け越し続きで十両転落)。先場所十両に落ちて全休、普通なら幕下陥落の貴ノ岩は、異例の救済措置で十両12枚目で復帰、勝ち越した。 <丗年夏場所> 一騎打ち ドラマB レベルB 白熱度B 鶴竜逆転で初の連覇! 栃ノ心V逸も13勝で大関へ 白鵬が復帰したが、稀勢の里は連続全休、好成績を続けていた安も全休。さらに豪栄道も中盤に途中休場となった。鶴竜、白鵬は前半1敗を喫したが崩れず、全勝の栃ノ心を追う展開。大関こそ不在だが、関脇と横綱が強い、面白い場所だ。難敵を撃破して11連勝の栃ノ心は、ついに1差の白鵬と直接対決。過去25戦全敗、相四つの天敵と右四つがっぷり、真っ向勝負で寄り切って大化けぶりを見せつけた。愈々2場所ぶりの賜杯が見えたかに思われたが、先場所に続いて殊勲の翌日の正代戦が鬼門。勝ち急いだか引きに落ち、14日目の鶴竜戦は相星の決戦となった。大一番は、両差しに成功した横綱が、外四つで強引に攻める関脇の寄り、投げを凌いで掬い、貫禄勝ち。土壇場で逆転に成功すると、千秋楽白鵬にも快勝。決定戦に持ち込ませず、2場所連続5回目の優勝を果たした。平成に入り、横綱で連続優勝は7人目。 連続休場明け白鵬は4敗。栃ノ心は13勝で敢闘・技能W受賞、平幕優勝を起点に3場所37勝。大関に昇進した。逸ノ城は白鵬を上手投げに破って関脇で3年半ぶりの給金。小結御嶽海は9勝、新三役遠藤は途中休場、再出場後は白星は得られなかった。鶴竜に唯一の土をつけた松鳳山は殊勲賞で三役返り咲き。新入幕から連続二桁で上位躍進の阿炎は初顔で白鵬を一方的に押し出したが、惜しくも給金ならず。新入幕から旭大星、二桁で敢闘賞。十両に落ちて2場所目の照ノ富士は、3連敗で休場。5番勝てれば残留と11日目から出てきたが何もできず未勝利に終わり、大関経験者として初の幕下陥落。現役続行を選んだ。 <丗年名古屋場所> 逃げ切り ドラマB レベルC 白熱度C
横綱不在の場所 御嶽海が初優勝
稀勢の里は全休し、横綱としてワーストの8場所連続となった。さらに順調に滑り出したかに見えた白鵬が膝を痛め、同じく鶴竜も連敗して故障が発覚しそれぞれ途中休場。3人の横綱が不在となった。さらに5連勝スタートの新大関栃ノ心までリタイア。2大関も出遅れ、全く読めない展開となった。好機を活かしたのは、再関脇御嶽海。無傷の連勝街道を走る。これを平幕朝乃山が1差でついていった。御嶽海は上位に大差をつけ、鬼門の中盤も乗り切った。いよいよ大関戦となったが、12日目不振の安の逆転技を食って1敗。だが、同日平幕で2敗だった栃煌山、朝乃山も敗れたため2差は変わらず。翌日、3敗で追い上げてきた豪栄道に快勝。これで王手を掛けると、14日目栃煌山を破って優勝決定。 豪栄道10番、安9番。東関脇逸ノ城は、小結玉鷲は8勝7敗で地位を守ったが、4年ぶり小結の松鳳山は4勝に終わった。三賞は若い大卒トリオ。御嶽海は殊勲・技能。3敗のまま後半負けなかった豊山は、千秋楽御嶽海と大熱戦を戦い、勝って12勝。敢闘賞を得た。優勝争いを盛り上げた朝乃山も11勝で敢闘賞。三賞はならなかったが、2大関破って二桁の3枚目貴景勝が10勝、金星取って勝ち越した2枚目勢を上回り、三役復帰へ。十両で貴ノ岩が優勝して幕内復帰。 <丗年秋場所> 独走 ドラマC レベルB 白熱度C 白鵬健在全勝V41 稀勢進退危機脱す 大関取り御嶽二桁届かず
3横綱が揃って出場。3場所連続全休明けの稀勢の里は不安視されたが、奇跡的な粘りを見せ、序盤は3横綱とも無傷。安、先場所優勝し大関取りの御嶽海も無敗で乗り切り、豪栄道1敗、栃ノ心2敗と続く。最近では稀に見る上位の堅調ぶり。中盤、御嶽海は大乱調、稀勢の里も2敗を喫したが、給金直してピンチは脱した。2横綱は無敗のまま終盤戦。11日目、白鵬は1敗安の挑戦を退けたが、鶴竜はカド番で苦しい星どりの栃ノ心に土をつけられた。するとそのまま横綱大関戦に5連敗してしまった。対して白鵬は、横綱同士で初対戦となった稀勢の里や大関陣を全く問題にせず封じ、14日目、2敗でついてきた豪栄道も簡単に投げ捨てて優勝決定。全勝で締めくくった。
稀勢は、鶴竜と並ぶ10勝で何とか面目を保つ。大関豪栄道は2横綱下し12勝。安は最後に連敗し11勝。栃ノ心は初のカド番、本調子でなく苦労したが9勝。現上位陣初の総皆勤となった。早々に大関取り失敗となった御嶽海だが、最後に鶴竜、安を破って何とか9勝で翌場所に可能性を残した。西に回った逸ノ城は終盤5連勝で辛くも関脇維持。再小結貴景勝も同じく終盤無敗で9勝。玉鷲は珍しく4勝11敗と崩れた。上位陣の好調もあり、関脇以下はめぼしい活躍力士がおらず、史上初の三賞受賞者なし。
<丗年九州場所> 競り勝ち ドラマA レベルC 白熱度B 小結貴景勝、移籍直後の快挙 猛追安、楽日に落とし穴 2横綱が全休。先場所進退危機を脱した稀勢の里が1人横綱として期待されたが、まさかの初日から4連敗で休場。場所後に横審から「激励」を受けて、再び危うい立場に。またも横綱不在となり、大関陣や大関再挑戦の御嶽海も7日目までに2敗以上を喫した。1横綱2大関を破って序盤5連勝のベテラン栃煌山も中盤崩れ、トップは小結貴景勝。7日目御嶽海に土をつけられたが、押し相撲が冴えて1敗を維持して終盤へ。追う2敗勢は大関高安、平幕大栄翔、碧山、阿武咲。14日目、前日平幕勢を突き放した1敗貴景勝と2敗安の直接対決が組まれた。強襲した幕内最年少の小結だが、重い大関が耐え凌いで突き落とし。薄氷の勝利ながら大関が意地を見せて相星で千秋楽。先に貴景勝が平幕錦木を下す。結びで登場の安、大関取りどころか負け越した御嶽海の猛攻を耐えたが、土俵際逆転を許して3敗。本割で貴景勝の初優勝が決まった。先場所後に師匠が突然退職、貴乃花部屋が消滅して千賀ノ浦部屋に移籍したばかり。兄弟子貴ノ岩が暴行を受けてから1年にわたる騒動に揺るがずに力をつけ、入幕から12場所目にスピード優勝を成し遂げた。豪栄道は立て直して勝ち越したが途中休場。栃ノ心も一時黒星が先行していたが、何とか勝ち越し。関脇は御嶽海が7勝、逸ノ城6勝に終わった。西小結に復帰した魁聖だが、ケガで4日目から出場。何とか3勝したが悪化し再休場した。先場所と真逆で役力士が締まらず、平幕上位に勝ち越し力士が続々。 場所後の巡業先で幕内に復帰していた貴ノ岩が付け人に暴力を振るっていたことが分かり、騒動に。責任を取って引退した。 締りC 伯仲B 接戦B 躍進C 人気B 元年〜3年 4年〜6年 7年〜9年
10年〜12年 13年〜15年
<この一年> 稀勢引退 平成末期は群雄割拠 新元号・令和への移行は5月1日となり、平成31年としては2場所が開催された。平成大相撲は、年6場所*30年+2場所(31年)-1場所(23年春中止)=181場所となる。 わずか2場所ではあるが、平成の最後の動きを振り返る。最大のポイントは、横綱稀勢の里の引退。復活を目指していたが、30年秋の千秋楽に敗れてから、九州場所0勝5敗、初場所0勝4敗で引退となり、横綱ワーストの10連敗を記録。昇進後の勝率も5割となってしまい、もはや身を引くしかなかった。 初場所は白鵬が突然失速して休場、前の場所優勝し、大関取りもかかる貴景勝の追い上げをかわした玉鷲が関脇同士の争いを制して初優勝。翌場所は白鵬が最後まで走り切って全勝。対抗は14勝の逸ノ城がおり、横綱対決で熱戦の末に優勝が決定した一番が平成最後となった。貴景勝と栃ノ心が大関入替戦という異例の厳しい一番を戦った。 <丗一年初場所> 追い上げ ドラマB レベルC 白熱度B 34歳関脇玉鷲が初制覇 白鵬独走から急転 横綱稀勢の里が初日から3連敗して引退。鶴竜も序盤で3敗を喫してまた途中休場、こちらも危うくなってきた。3大関も記録的な絶不調で、4日目を終えて安2勝2敗、豪栄道と栃ノ心は全敗。全休明けの白鵬も序盤ピンチの連続だったが、上位では一人星を落とさず、気が付けば10連勝。早くも後続に2差がついて独走ムードだったが、思わぬ刺客が現れた。2横綱を倒して5連勝スタートも足を痛めて休場していた御嶽海が再出場、いきなりの白鵬戦で横綱3タテを達成。すると翌日、唯一の2敗力士玉鷲を仕留め損ね、逆襲に遭って連敗。さらに3敗の貴景勝のいなしにもあっけなく落ち、3連敗で首位転落。翌日から休場した。急浮上した両関脇は、そのまま1差で並走。先場所小結で優勝の貴景勝は、14日目で3場所33勝に達し大関昇進が現実味を帯びたが、逃げる玉鷲はプレッシャーに負けず千秋楽も先勝、超晩成の華を咲かせる初優勝を決めた。目前で連覇の消えた貴景勝は、豪栄道に電車道で運ばれる完敗で昇進見送りとなった。 体調不良の安は、兄弟子に捧ぐVとはならず取りこぼし、中盤以降立て直した豪栄道と同じ9勝止まり。場所前肉離れの栃ノ心はいいところなく休場。優勝を争った両関脇、玉鷲は殊勲、敢闘。貴景勝は技能。来場所の成績如何では同時昇進もありうる。小結御嶽海は8勝4敗3休で殊勲賞、途中休場者の三賞は史上初。魁聖は故障響き小結から転落、代わって初日から3大関を倒した勢いで9勝の北勝富士が新三役を決めた。 <丗一年春場所> 逃げ切り ドラマB レベルA 白熱度B 白鵬3場所ぶり全勝 14勝逸とは顔合わず 大関入替戦は貴景勝 初日から横綱鶴竜が敗れたが、先場所と打って変わって上位陣は安定した立ち上がり。さらにダークホースとして西前頭4枚目の逸ノ城が好調で、カド番の苦手栃ノ心に土をつけられたが、2大関との1敗対決を連勝して勢いに乗った。白鵬が全勝を守って逃げ、1敗逸ノ城、2敗で多数の有力者が追ったが、2敗勢や前2場所の覇者・両関脇を蹴散らした2人のデッドヒートとなる。番付通り東4枚目まで横綱戦が組まれたため、直接対決はなし。最後まで割は崩されず。逸ノ城は14勝1敗としたが、白鵬も譲らず。千秋楽結びで鶴竜の抵抗に遭うが、下手投げで体を入れ替え全勝で逃げ切り。取組中に右腕を負傷して、表彰式では助けを借りて賜杯を受けた。奇しくも平成2場所目となった同じ春場所、左肩を脱臼した千代の富士が賜杯を受ける姿が、平成最後の場所で蘇った。 連続休場明け鶴竜は、終盤疲れて10勝5敗。安も10勝止まり。豪栄道は地元の大声援を受けて好調、12勝3敗。大関昇進を狙う貴景勝は、苦手力士らに星を落とし5敗。千秋楽は、カド番で7勝7敗の栃ノ心との過酷な一番が組まれたが、完勝で二桁に乗せ、昇進を決めた。敗れた栃ノ心は、故障が響きわずか5場所で大関の地位を失った。先場所の覇者玉鷲は、序盤躓いて完全にリズムを崩し、二桁黒星。大関取りどころではなかった。小結御嶽海、北勝富士は調子上がらず1点の負け越し。三賞は、優勝争いを演じた逸ノ城に殊勲。貴景勝が条件の10番を満たして技能賞。敢闘賞は、勝った方が受賞の一番で、新入幕友風を下した碧山。同じく12勝目を条件とされた元大関の琴奨菊は、竜電に敗れてこれを逸した。元大関といえば、5場所連続休場して序二段まで番付を下げていた照ノ富士が復帰。元大関が幕下以下で取るのは初めてだったが、ほとんど足を動かさずに7戦全勝。2番相撲は同じく連続休場で落ちていた天風と、序二段初の元幕内対決もあった。決定戦では、同郷で高校の後輩、初のモンゴル人高校横綱の狼雅に敗れて優勝は逃した。 元年〜3年 4年〜6年 7年〜9年
10年〜12年 13年〜15年 |