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平成相撲史 平成の相撲史を紐解く。いつものようにデータ形式で必要と思われる情報を整理。 普通の優勝力士表では見られない、優勝争いの流れや2番手の力士がわかるものにした。 あわせて場所の内容を3つの基準で評価した。 1年ごとの顔ぶれの変化がわかるように表に整理したので参考にしていただきたい。 横綱大関は昇進順。三役は年内の在位場所数を重視。新入幕と引退は時系列。 場所の内容は、優勝争いと上位陣の動向、三役力士の成績、三賞力士らの活躍を中心に振り返る。 元年〜3年 4年〜6年 7年〜9年
10年〜12年 13年〜15年 締りB 伯仲C 接戦C 躍進A 人気B
注) (決定)は、優勝決定時を表す。「13」、「14」等は決定日。千秋楽決着は、「決」、「巴」、「C」、「D」が決定戦(人数で分類)。「相」は前日まで相星、「直」は1差の相手と対戦して、本割で決定。それ以外は「千」。
<この一年> 朝青龍時代の幕開け 圧巻の35連勝 武蔵丸が引退して名実ともに一人横綱となった朝青龍。もう一人の横綱を期待する声とは裏腹に、まれに見る独走時代がやってきた。初、春と連続の全勝。平成6年の貴乃花以来の記録である。連勝記録への挑戦が話題になった夏場所、6日目伏兵北勝力にまさかの黒星を喫し、平成最長の35連勝が止まった。余勢を駆って北勝力が逃げ切られるかという千秋楽、新入幕の白鵬が平幕優勝に待ったをかける。ようやく追いついた朝青龍は決定戦で借りを返した。このときモンゴルの先輩を援護した19歳の若者が数年後ライバルとして立ちはだかることになる。何たる因縁だろうか。名古屋も制し貴乃花以来の4連覇を記録、秋場所こそ9勝と大乱調だったが、きっちり九州では賜杯を取り戻す。2場所続けて賜杯は譲らないという神話を作った横綱が完全に角界を支配した。 古参の大関陣も全く沈黙したわけではなかったが、浮き沈みが激しく、この年から公傷制度も廃止されてしだいに独走阻止よりも大関維持が現実的な目標になっていった。栃東は初場所綱取りに挑んでいたが、故障で名古屋には陥落。10勝の特権を生かして復帰したものの、直後に再び故障で再陥落となった。前年から雲行きが怪しくなっていた武双山は、故障を抱えても休めず角番の繰り返しの末ついに九州で力尽きた。春には13連勝した千代大海も下降気味で、最後のチャンスはあっけなく潰え、じり貧に。最も健闘したのが32歳の魁皇で、一年通じて二桁をマーク。春13勝、名古屋は楽日1差対決まで粘り、秋場所では朝青龍自滅のスキに優勝。地元九州では3敗を喫してから粘り、千秋楽朝青龍を破って12勝に乗せたときは横綱昇進決定のようなムードだったが、やはり成績の不足は致し方なく見送りとなった。 役力士は激しく入れ替わったが、最も大関に近づいたのは若の里。一年を通して勝越し、最後の2場所は取りこぼしが減って10,11勝。朝青龍に連勝するなど大関よりも頼りになった。元大関雅山もまだ26歳、復調して関脇で勝ち越すまで戻ってきた。朝青龍を吊り出した旭天鵬、夏12勝の玉乃島、秋は最後まで魁皇に食い下がった栃乃洋も何度か三役に名を連ねた。初場所13勝と復活した琴光喜だが、なかなか星が安定せず。夏13勝の北勝力が関脇に躍進するも一発屋に終わった。春場所13勝の朝赤龍もムラが激しく三役届かず。 注目すべきは新入幕勢。のちの1横綱3大関が大挙して押し寄せた。中でも白鵬は新入幕場所で前述の大仕事を含む12勝、九州では金星を含む12勝という黄金ルーキーぶり。欧州から初の幕内力士となった黒海も大いに暴れて大関武双山に引導を渡す。ハワイ、モンゴルに続いて東欧が第三の外国勢力として台頭してきた。足技の達人時天空に、最軽量力士安馬と個性派モンゴル勢が登場すれば、曙以来の2メートル力士・琴欧州、対して身長が足りずに第2検査を経て入門した業師・豊ノ島、貴花田に迫る年少出世の18歳稀勢の里など、同年引退した大関貴ノ浪、武双山に代わる新たなヒーロー候補が登場。まさに時代の転換期を迎えた。
<選考理由>最優秀、優秀は文句なしだが、年間三賞は候補が乱立。平幕で6人もの力士が12勝以上を挙げたが、一発屋が多く決め手がない。白鵬は上記理由から殊勲賞。大勝ちは少ないが大関目前の若の里は唯一の三賞でもあった技能賞を与え、残るは敢闘賞。敢闘の意味に立ち返ると、派手な活躍をした面々を押しのけて上位で勝ち越しこそないが、印象的な活躍の多かった大ベテランを推した。安美錦との投げの打ち合い、死に体論争で大紛糾の末に同体となった横綱戦、秋には千秋楽で栃乃洋を破って優勝決定を演出。敢闘賞受賞回数でも年間単独トップで実績も問題ない。 <十六年初場所> 独走 ドラマB レベルB 白熱度C 朝青龍 黄金時代の到来告げる初の全勝優勝 先場所相星決戦を演じた朝青龍と栃東が優勝争いの中心と目された。2度目の綱取りに挑む栃東は、若の里に破れて黒星スタート。目にも止まらぬ速攻で勝ち進む朝青龍を1差で追っていた。しかし9日目高見盛に引き落されると3連敗で脱落。朝青龍は10日目から追いかける力士と直接対決。まず手始めに、1差の琴光喜を土俵中央豪快に吊り落として力の差を見せつける。続いて2敗垣添を吹っ飛ばすと、3敗の大関2人も一蹴して千秋楽を待たずに優勝を決めた。千秋楽は綱取りを逸した栃東も下し全勝優勝を果たした。全く危なげのない完全優勝であった。 優勝争いに最後まで食い下がった琴光喜に敢闘賞。朝青龍に叩きつけられる屈辱も翌日から2大関連破で晴らし優勝以来の13勝。中盤まで1敗で走った新鋭垣添も魁皇を破るなど11勝の活躍で技能賞。やはり11勝の霜鳥と共に翌場所は新三役となる。三役陣は奮わず、小結の若の里以外はその地位を手放した。 十両の元小結小城錦が引退。 <十六年春場所> 突き放し ドラマC レベルAA 白熱度A 朝青龍連続全勝 4強デッドヒート抜け出す 朝青龍が今場所も快調に勝ち進む。先場所と違ったのは、食い下がる力士がいたこと。11日目を終えて、全勝で並んでいたのが千代大海、魁皇の2大関、そしてもう一人、朝青龍の弟弟子・入幕1年の朝赤龍だ。12日目、直接対決の幕が切って落とされた。12枚目の朝赤龍が魁皇に挑戦し、あっけなく引き落とす。13日目、続いて千代大海との全勝対決に挑むが、熱戦の末最後まで差させなかった大関が制す。魁皇は朝青龍の小手投げに沈んだ。14日目、千代大海は苦手魁皇に一矢報いられ、朝赤龍と並ぶ1敗に後退。千秋楽、結び、全勝の横綱に挑んだ千代大海だが、渾身の突きを外されてバッタリ。先場所と違って最後まで粘った大関陣だったが、横綱に全勝対決を挑む前に潰し合い、最後は横綱に一掃された。 2大関は13勝して来場所綱取りのチャンス。武双山は9勝どまり、栃東は途中休場。実力派関脇若の里、琴光喜ともに目立った活躍はなし。新小結の垣添、霜鳥は6勝9敗。13勝の朝赤龍には殊勲、技能。11勝のベテラン琴ノ若に敢闘賞。 この場所から公傷制度が廃止、一方で幕内、十両が4人ずつ増加(あまり救済にはなっていないが)。増枠の恩恵で幕下16枚目で優勝の大真鶴が異例の新十両昇進を果たした。 <十六年夏場所> 一騎打ち ドラマAA レベルC 白熱度A 伏兵北勝力が連勝ストップも 決定戦でリベンジV 13勝した千代大海、魁皇に綱取り挑戦の声がかかり、連続全勝の朝青龍による連勝記録が注目された夏場所。3人に土をつけて主役に躍り出たのが前頭筆頭の新鋭・北勝力。初日に魁皇、2日目武双山、3日目この場所12勝する玉乃島、4日目千代大海と破り絶好調のスタートを切った。そして6日目、35連勝に伸ばした朝青龍との全勝対決を迎える。しばらく連勝記録に飢えていた平成の相撲界、平成1位となった記録を大横綱たちと比べて煽り立てていたが、終末はあっけなし。立ち遅れて中途半端に下がった平幕に対し、間合いがずれたことで一度軽く叩いてしまったのが大失敗。絶好調ののど輪押しで一気に出られて押し倒された。傷心の横綱は11日目に2敗に後退。北勝力は中日に捕まって若の里に1敗に引きずり込まれたが、勢いは止まらず優勝争いをリード。上位は足の引っ張り合いで若の里も魁皇も脱落、13日目玉乃島が3敗となって一騎打ちの様相を呈した。役力士との対戦を終えた北勝力がこのまま逃げ切るかと思われたが、千秋楽に伏兵の伏兵がいた。新入幕ながら11勝3敗で敢闘賞の19歳白鵬だ。立合い焦らされての変化に、突き押し一本のダークホースはバッタリと落ち、決定戦に。絶好の雪辱の機会を得た横綱が全く寄せ付けずにこれを制して逆転優勝。この時はモンゴルの後輩に救われたてキスなどしていたが、その後輩こそが自らの王座を脅かす存在だった。 綱取り大関、千代大海は前半の3連敗であえなく消滅、最後のチャンスを逃した。魁皇は10日目まで1差につけたが10勝どまり。武双山は負け越し。栃東は全休し優勝からわずか3場所で大関陥落となった。後半取りこぼした若の里二桁届かず、関脇復帰の旭天鵬は朝青龍を吊り出したものの負け越し。琴光喜は三役を守ったが、大関陥落後初めて三役復帰の雅山は3勝に終わる。三賞は13勝の北勝力に殊勲敢闘、12勝の玉乃島が技能賞、白鵬敢闘賞とハイレベルだった。 元大関貴ノ浪が序盤連敗して引退を発表した。幕下以下に下がっていた元小結濱ノ嶋や幕内若ノ城も引退した。 <十六年名古屋場所> 逃げ切り ドラマC レベルC 白熱度C 朝青龍四連覇 大関には無敵 琴ノ若戦の疑惑の判定こそあったが、この場所も順当に勝ち進んだ朝青龍。対して今場所も追いすがったのは平幕勢だった。全勝対決を挑んだ雅山を下して10連勝とした朝青龍が独走するかと思われたが、11日目栃東、12日目若の里と関脇に連敗。これで雅山が再び並び、2大関に栃東、平幕4人が1差につけた。残り3日で大関陣が逆転に向けて奮起するかと期待されたが、16年に入って大関には無敗の横綱に蹴散らされる。千秋楽、魁皇が勝てば最大4人の決定戦だったが、すんなりと朝青龍の4連覇に終わった。 またも期待に応えられなかった大関陣。カド番武双山は1勝3敗から持ち直して脱出したものの、終盤故障し休場。栃東が10勝し涙の大関復活。来場所は連続でカド番大関がいる異常事態がようやく止まって4大関が揃うが、不安いっぱい。新関脇北勝力は先場所が嘘のように初日から9連敗し3勝に終わる。その北勝力に敗れて若の里は8番どまり。小結琴光喜、玉乃島は負け越して陥落。千秋楽まで優勝の可能性を残した12勝の雅山、11勝の朝赤龍、白鵬ら、殊勲候補も横綱に勝った2関脇などいくらでも活躍力士はいたのに三賞は12勝で敢闘賞の豊桜しか選考されず、選考委員の中からも選考方法に不満の声が挙がった。 <十六年秋場所> 抜け出し ドラマB レベルC 白熱度C 魁皇が5回目の賜杯 朝青龍大乱調で混戦に 序盤から大きく荒れた。朝青龍が珍しく平幕に連敗。リードしておきたい大関陣だが、武双山と栃東は途中休場。魁皇、千代大海もすぐに追いつかれた。中盤は落ち着いて上位では2敗で朝青龍、魁皇、若の里が並走。10日目に1敗出島を朝青龍が下し、一人ストレートの給金を直した旭鷲山が連敗したことで2敗が先頭に立った。ところが12日目から朝青龍が崩れてまさかの4連敗、二桁にも届かず5連覇を逃した。2敗で単独トップに立った魁皇が逃げ、14日目若の里との1差対決。伝家の宝刀右上手投げで制すと、旭鷲山と新入幕露鵬も敗れ、千秋楽まで圏内に残ったのは栃乃洋だけ。これも琴ノ若の投げに敗れ、魁皇の7場所ぶり優勝が決まった。 千代大海は中盤崩れたが1年半ぶりに横綱を下し辛くも勝ち越した。関脇若の里は最後に連敗したが4場所ぶりの二桁。雅山は出遅れたが終盤若の里、朝青龍を後退させて存在感を示し完全復活。小結に戻った旭天鵬は5勝どまりで陥落、琴光喜はなんとか三役を守った。朝青龍から11個目の金星で11勝の栃乃洋に殊勲賞。新入幕二桁の露鵬と、千秋楽で大役を果たした36歳琴ノ若に敢闘賞。岩木山は初金星、黒海は3大関を倒したが1点届かず三役ならず。上位初挑戦の白鵬も意外と苦戦して千秋楽勝越し。 <十六年九州場所> 抜け出し ドラマB レベルC 白熱度C 最後は朝青龍が締める 九州熱狂の魁皇コールも綱届かず ご当初魁皇の綱取り一色となった九州場所。しかし苦手琴光喜相手に初日黒星。しかしここから立ち直って若の里、白鵬とともに1差で全勝朝青龍を追う展開となった。まず気を吐いたのは白鵬。10日目魁皇との1敗対決を制すと、翌日朝青龍に2度目の挑戦で初金星。若の里と3人が1敗に並んだ。望みがつながった魁皇だったが、それも束の間稀代の壊し屋・雅山の突っ張りに3敗目を喫して絶望的に。朝青龍は気を取り直して若の里との直接対決を制し、白鵬は千代大海、琴欧州に連敗して殊勲がフイ。14日目若の里が魁皇に屈し、朝青龍が千秋楽を待たずに優勝を決定した。 放駒審判長が綱取りの可能性を示唆したことで千秋楽は熱狂、期待を背負った魁皇が朝青龍を寄り切る。13勝の優勝の後の12勝準優勝となったが、やはり星の不足は明らかで見送りとなった。座布団が乱舞するムードには流されなかった。ヌカ喜びさせられた観衆は気の毒だが、最後まで盛り上がったのも事実。一方、丸3年並び立った4大関がついに解体。魁皇のライバル武双山は初日から3連敗で遂に引退。栃東はまたも途中休場で、復活即大関陥落となった。千代大海も負け越して翌場所カド番、あわや「横綱大関」の地位が復活するところだった。 関脇に定着する若の里が11勝で技能賞。千秋楽またも不振の千代大海に負けたのがもったいなかったが、連続二桁で大関目前。二桁をかけた千秋楽三役対決は、小結琴光喜が関脇雅山を下した。上位キラー栃乃洋は2大関破るも負け越し。12勝の白鵬が殊勲賞、入幕2場所目の琴欧州が11勝で敢闘賞。20歳安馬、18歳稀勢の里が新入幕で勝越し。 元年〜3年 4年〜6年 7年〜9年
10年〜12年 13年〜15年 締りB 伯仲D 接戦C 躍進C 人気C
<この一年> 歴史に残る一強の年 急浮上の琴欧洲が大関へ 前年5回もの優勝を果たした朝青龍が、さらに独走の勢いを増し、これまで誰も成し遂げられなかった年間完全制覇をやってのけた。年間通じて6回しか負けず、北の湖が打ち立てた年82勝を更新した。加えて史上初の7連覇。初場所の全勝に始まり、春は黄金時代を誇示するかのような黄金廻しで圧勝を続け、前年の35連勝を上回るかとも期待させた。わずか一つの黒星で元の黒い廻しに戻したが、黄金時代の色はますます濃くなっていった。後半はやや調子を落としたが、他との差は歴然。あまりの圧勝ぶりと、それを許す日本人大関のふがいなさに相撲人気は下降線を辿ったが、これに対抗する勢力も現れ始めた。その筆頭に挙げられていた白鵬は大関を前にして停滞したが、代わって琴欧州が破竹の勢いで上昇。名古屋、秋と横綱と互角に賜杯を争い、九州でも横綱に唯一の土をつけて大関昇進を決めた。 日本人の上位力士に話題を移せば、前年末の活躍で初場所は魁皇が綱取り、若の里が大関取りを賭けていた。1横綱2大関の寂しい番付を盛り上げるためにも昇進を期待されたが、魁皇は3度の途中休場で大関維持が精一杯。若の里もまさかの負け越しで3年ぶりに三役から転落、秋場所の故障で大関の夢は頓挫してしまった。前年後半から不調に入った千代大海はさらに状態が悪化、カド番を繰り返して脱出も危うく、秋の連敗スタートでいよいよ引退危機を迎えたが、何とか立ち直った。2度目の大関復帰を果たした栃東はまだマシだったが、やはり故障がちで優勝は期待できず、大関への風当たりは相変わらず強かった。三役に復帰していた雅山、琴光喜も成績は安定せず。琴光喜は夏に13勝を挙げるも勢いは続かなかった。岩木山、垣添らも平幕上位で健闘するも善戦止まり、玉乃島も相変わらずムラが激しい。連続三賞から新三役で朝青龍を倒した普天王も急ブレーキがかかった。決定戦経験のある北勝力も上位では全く通用しなくなった。対して外国勢は露鵬、時天空、安馬などが続々と台頭。幕内における外国勢の比率がますます高まってきた。
<選考理由>朝青龍は3年連続の最優秀力士。琴欧州が優秀、殊勲、新人のトリプル受賞。それ以外は候補者が枯渇。普天王も微妙ではあるが、連続受賞と新三役初日の活躍が鮮烈で何とか引っかかった。それ以外は目新しい活躍がなかった。カムバックには、史上初めて2度大関復帰を果たし、その後まずまず安定を取り戻した栃東。長く十両以下で低迷、初場所まで幕下に落ちていた栃乃花は復調して九州では敢闘賞を得た。どちらも見事で、不在の年間技能賞をも補う活躍だった。 <十七年初場所> 大独走 ドラマC レベルB 白熱度D 朝青龍二年連続全勝スタートでV10 栃東二たび大関復帰 期待は魁皇と若の里の同時昇進。しかし先場所の綱取りで燃え尽きた感のある魁皇は、2日目琴ノ若に敗れると3連敗で夢潰え、結局途中休場に追い込まれた。若の里も3日目から4連敗、最後も4連敗で大関どころか20場所ぶりに三役陥落。早々に期待が失望に変わった新年は、やはり朝青龍がひとり走った。これを追いかける力士もおらず、12日目に3敗の栃東が挑むが返り討ち。何とか史上最速12日目での優勝決定を阻止した白鵬も翌日岩木山に押し出され、何と13日目の割を待たずに優勝が決まってしまった。余裕の横綱は最後まで力を緩めることもなく、自身3度目の全勝で区切りの10回目の賜杯に花を添えた。 魁皇休場で1横綱1大関になったが、カド番千代大海は中盤負けが混んで苦しくなり、14日目にやっと脱出。大関復帰後2場所連続途中休場で再陥落となった栃東も、怪我の影響を感じさせない確実な取り口で14日目に10勝目。陥落直後の場所としては最多の11勝を挙げて今度は余裕の復活、結局3大関に戻った。その栃東に千秋楽敗れて二桁を逃した関脇雅山は大関復帰への足がかりを掴めず。逆に足がかりを掴んだのは新小結の白鵬。貴乃花以来の10代優勝は果たせなかったが、11勝4敗。東小結琴光喜は負け越して陥落。大した活躍力士はおらず、三賞は白鵬の技能だけと寂しい場所だった。 <十七年春場所> 突き放し ドラマC レベルC 白熱度D 黄金の朝青龍が独走V 大差は縮まらず 千代の富士を彷彿とさせる黒廻しがトレードマークの横綱朝青龍が、派手な黄金の締め込みで浪花を盛り上げる。初日からその廻しに全く触れさせない、まさに鎧袖一触の無敵ぶり。中日に出島が右下手を掴んだが、怒りを買ったように上から強かに叩きつけられ肩に大きなアザが残った。恐ろしいまでの白星街道、1敗で追い上げた魁皇もカド番脱出を前に連敗して後退し、平幕露鵬がその魁皇に挑戦するが屈し、12日目でまたも3差。しかし勝てば優勝の13日目に落とし穴、両差しになって寄るところを栃東のうっちゃりに振られ、やや分はあったが物言いの末取り直し。再戦では熱くなって呼び込み、寄り倒されて27連勝でストップした。翌14日目、なぜか黄金廻しを返上した朝青龍は、2差の魁皇を圧倒。結局は一矢報いたものの終始横綱独走の場所だった。 一矢報いた再々大関栃東は、連敗スタートながら終盤5連勝で二桁まで持ってきた。対して連勝スタートながら終盤5連敗の千代大海はまたも負け越し。魁皇も終盤息切れで10勝。満身創痍の3大関に横綱を止めることを期待するのは酷だった。それ以上に元気がなかったのが関脇小結勢。4人そろって3連敗スタート。3場所連続関脇で9勝と安定していた雅山、再小結岩木山、新小結琴欧州は二桁の黒星で陥落。白鵬だけ辛うじて勝越した。平幕中位の力士が頑張り、玉乃島12勝で敢闘賞、ベテラン海鵬は11勝で4年ぶりの技能賞、関取最軽量の新鋭・安馬も抜群の身のこなしで魅了し初の技能賞を獲得した。3枚目で久しぶりに10勝の33歳土佐ノ海は関脇復帰。34歳出羽の郷が新十両を果たすなど、若手よりベテランが目立った場所だった。 <十七年夏場所> 独走 ドラマC レベルB 白熱度C 朝青龍再び全勝 向かうところ敵なし 朝青龍を止める者はまだまだ現れない。前2場所よりは古豪にも粘りが見られた。5連勝スタートの魁皇は怪我で休場したが、11日目まで1敗で千代大海と平幕旭鷲山、2敗で栃東、小結琴光喜が追走した。しかし最後に息切れ。1敗だった二人が脱落し、2敗の二人が追い上げたものの朝青龍が星を落とさない。14日目に千代大海を下し優勝が決定、千秋楽好調栃東も圧倒して4回目の全勝を記録した。 大関は栃東12番、大海11番と久しぶりの好成績。小結琴光喜は自身4度目の13勝で6度目の技能賞。しかし他の三役はパッとしない。4連敗を喫するなど集中力に欠けた白鵬は9勝どまりと勢いを失い、土佐ノ海、若の里もあっけなく陥落した。32歳旭鷲山が12勝の活躍で敢闘賞、日大卒の普天王も11勝で初の敢闘賞。久しぶりの大卒新鋭だ。 <十七年名古屋場所> 競り勝ち ドラマB レベルC 白熱度B 琴欧州波乱起こし並走も 最後は経験の差で横綱5連覇 大関が相変わらず横綱についていけない中、新鋭古豪が粘る展開が続く。大関へ二桁を重ねたい琴光喜は序盤から星をこぼして期待を裏切ったが、新旧大関候補の白鵬と若の里が1敗で横綱を追う。ところが、上位初挑戦ながら魁皇、千代大海を破っている上がり馬・普天王に寄り倒された白鵬は、足の親指を痛めて初の戦線離脱。その白鵬に代わって対抗馬に名乗りを挙げたのは、再小結の琴欧州だった。2差で迎えた中日の横綱戦、2mの体力を活かしてガバっと上手を取ると、横綱の投げに構わず上手投げを仕掛けると無敵横綱がくるりと回転して頭から落ちた。豪快な勝ちっぷりで調子に乗った22歳はそのまま2敗で猛追。横綱もさすが、翌日の首位対決では若の里を突き放した。ところが11日目、上位の休場者続出で抜擢された3敗の黒海に引き落とされて2敗目。にわかに混戦モードに突入した。12日目若の里が後退、首位に並んだ2人、朝青龍は魁皇、琴欧州は黒海、高見盛とそれぞれ1差の力士を退けて、千秋楽には二人に絞られた。最後はやはり経験の差が出たか、琴欧洲は硬くなり、前日自滅して優勝が消えた若の里に完敗。結びで栃東を倒した朝青龍が本割で5連覇を決めた。 栃東は9勝、魁皇10勝。大海は中盤負けが込んで途中休場、魁皇と交互に角番を繰り返してともに最多カド番記録を更新していく。関脇琴光喜は負け越して先場所の13勝がフイ。途中休場の白鵬、三役復帰の雅山も負け越して陥落。翌場所の三役は、殊勲賞の小結琴欧洲が新関脇に。三賞はなかったが優勝争いに絡んで11勝の若の里、そして2大関に白鵬、若の里を破っての10勝で技能賞・普天王の昇進が濃厚となった。初金星の黒海にも敢闘賞が与えられた。14日目まで優勝争いに絡んだ高見盛は久しぶりの二桁だったが三賞ならず。 <十七年秋場所> 追い込み ドラマA レベルC 白熱度B 2差ひっくり返し6連覇 新関脇13日目王手から一転 スタートダッシュが持ち味の朝青龍が初日に土。勢いに乗っている新三役の普天王が真っ向寄り倒した。しかし2日目にして大関はすべて敗れてリードできない。それに代わって朝青龍を焦らせたのが新関脇琴欧州。初日から勝ちっぱなしで走る。すると朝青龍は先場所に続いて11日目で2敗目。星の差は2つに開き自力優勝が消滅した。そして13日目に直接対決、琴欧州が勝てば初優勝が決まる大一番は、一瞬背中を見せながら向き直った横綱が、出鼻を変則の首ひねりでねじ伏せて1差に詰めた。14日目、琴欧州の相手はかつてライバルと呼ばれた前頭16枚目の稀勢の里。番付は大きく離されたが、この場所は3敗と圏内にいるため抜擢された。するとメンタルの弱い長身関脇は先場所に続いて鳴戸勢に痛恨の黒星。運も味方した朝青龍は、千秋楽栃東をカチ上げでKO。決定戦では突き押しで琴欧州に何もさせず、残り3日で2差を大逆転。大鵬以来史上2人目の6連覇を達成した。 大関は、栃東は10勝。魁皇は3連敗で休場。カド番の千代大海は連敗スタートで、3日目は気鋭の普天王に十分の左四つに組まれて絶体絶命だったが、執念の逆転勝ち。そこから復調して10勝に乗せた。破竹の勢いだった新小結の普天王は、対照的にその一番から泥沼8連敗で陥落。その後上昇気流には乗れなかった。琴欧洲が13勝で大関王手をかけた一方、西関脇若の里は白鵬戦で膝を痛めて5年ぶりの休場。以後往年の強さは戻らなかった。小結琴光喜は千秋楽ふた桁を逃す。休場明け白鵬はパッとせず9勝に終わる。金星の安美錦は惜しくも負け越し。琴欧州とともに敢闘賞に輝いたのは、19歳稀勢の里。12勝とブレイクして、幕内下位での停滞を脱した。 <十七年九州場所> 逃げ切り ドラマA レベルC 白熱度C 朝青龍劇場 金字塔打ち立て最強伝説完成 殊勲の琴欧州、大関昇進 いまだかつて誰も成し遂げたことのない7連覇、年6場所完全制覇、そして年間勝利数の更新。大記録へ向かって孤高の横綱の挑戦が始まった。ここ2場所は取りこぼしに琴欧州の台頭が重なって危うい展開が続いていたが、初日難敵白鵬、3日目初顔稀勢の里などを下して順調に滑り出す。対抗馬として最も期待される関脇琴欧州は、大関取りとあって初日から垣添の肩透かしに遭って土。課題のメンタルとの戦いのなか、終盤まで3敗でまとめるのがやっとだった。大関陣も栃東が序盤で休場、千代大海、魁皇も星を落として前半で差が広がった。なんとか大海が2差で追いかける展開となっていたが、13日目に大関を目指す琴欧州が朝青龍を寄り切る大きな白星。優勝争いもこれで1差、面白くなってきたのも束の間。14日目に大海も琴欧州に屈し、朝青龍は魁皇を寄り切った。この一番で朝青龍の優勝が決定したが、ちょうど年間83勝目。3つの新記録を同時に達成してしまった。まさに朝青龍一色となった平成17年。年間勝利を84に伸ばして締めくくった。 千代大海11勝、魁皇10勝とカド番続きの大関が最後は締めて地力を示した。琴欧州は優勝争う力士2人連破し11勝、3場所36勝の堂々たる成績で大関を手中にした。弟弟子に、後発に先を行かれた琴光喜と白鵬は、ともに後半息切れして二桁届かず。三役に戻ってきた旭天鵬は自身2度目の三役勝越し。三賞は琴欧州に殊勲・敢闘、3大関を倒し10勝の雅山に案外簡単に敢闘賞が渡ったほか、2年半ぶり入幕で11勝の栃乃花にも5年ぶり三賞となる敢闘賞、突っ張りの新戦法が冴えて10勝の時天空に初の技能。近年になく太っ腹だった。上位初挑戦の稀勢の里は、佐渡ケ嶽の両関脇に痛い2敗目をつけたが5勝に終わる。前頭11枚目の琴ノ若が、師匠停年のため13日目の一番を最後に異例の場所中引退、即部屋継承。ちなみに最後の一番は変化されて負けた。 元年〜3年 4年〜6年 7年〜9年
10年〜12年 13年〜15年
締りC 伯仲C 接戦B 躍進B 人気C
<この一年> 白鵬が一気に台頭も 朝青龍復権し一人横綱を堅持 まさに無敵だった朝青龍の連覇が止まり、夏には途中休場。その間に前年停滞していた白鵬が4場所連続13勝以上と覚醒、朝青龍時代を脅かす存在にのし上がった。しかし、朝青龍も簡単には王座を明け渡さない。春には決定戦で白鵬の初優勝を阻み、復帰した名古屋場所では14連勝、追う白鵬との対戦を前に優勝を決めたことで、白鵬は優勝・準優勝の2場所27勝ながら綱取りは見送られた。昇進ならず傷心の白鵬は秋8勝、九州は全休。朝青龍は対抗馬不在の中、余裕の3連覇で綻びかけた一強時代をすぐに立て直した。大本命が揺らいだ前半は白熱した争いが続いたが、後半は従来通りの淡白な優勝争いに戻った。 対抗馬として最も期待された新大関琴欧州は、関脇時代の勢いを徐々に失い、夏、名古屋は辛うじて勝越し、そのほかも10勝どまりで朝青龍には全く歯が立たなかった。5大関時代となり、外国勢の存在感が増す中、意地を見せたのはカド番大関の栃東。初場所、白鵬、朝青龍らの追撃をかわして3度目の優勝(以降和製力士は賜杯から完全に見放される)。期待された春場所は、日本人力士に3敗。外国勢をすべて破って夏場所に繋いだが、体が持たず夢は散る。その夏に大活躍したのが雅山。大関陥落から5年、ケガとの戦いをようやく終えた28歳は、突き押し相撲が安定し綱を狙う栃東に連勝するなど関脇に定着していたが、夏場所は白鵬に土をつけて14勝1敗。決定戦では敗れたが、あっと驚く活躍だった。翌場所も10勝し3場所34勝を記録したが、大関復帰は見送られその後はジリ貧。雅山以上に関脇に定着していた琴光喜だが、たまに連勝スタートを切れば後半崩れ、結局8、9番で上昇の気配はなし。 若手の突き上げも見られるようになった。夏場所新入幕ながら2敗で追走した把瑠都は、千秋楽結びの一番で白鵬と戦う。秋には安馬が、九州は豊真将が、役力士を抑えて最後まで横綱を追い上げた。稀勢の里も四股名ほどの勢いはないが、三役に定着し始めた。一方で、モンゴル力士のパイオニア旭鷲山、八艘飛びの追風海、モミアゲソックリさんコンビも引退。平成10年代に活躍した個性派たちから次世代へ、徐々に世代交代が進んでいった。
<選考理由>最優秀、優秀は順当に決定。新人は把瑠都の迫力に隠れたが、九州で2賞を獲得の豊真将もこれに迫る活躍だった。敢闘賞は7人、技能賞は8人が受賞する混戦。先に年間三賞が3人に絞られ、安馬と雅山の敢闘・技能振り分けで迷った。どちらも当てはまるものの、あえて印象とは反対のものを。雅山は突っ張りとはたきの円熟した技能を、安馬は小兵ながら真っ向突っ込む印象が強かったため。 <十八年初場所> 抜け出し ドラマB レベルB 白熱度A 栃東、V8阻む復活優勝 白熱の優勝争いを制す 史上初の7連覇を成し遂げた朝青龍は、新年早々2日目に土。千代大海、魁皇の2大関が途中休場する中、角番栃東と関脇白鵬が好スタート。7日目栃乃花に不覚を取った白鵬は、中日の栃東との微妙な一番も落として連敗。ストレートでカド番脱出の栃東も翌日土がついた。この時点で全勝は平幕の北勝力だけ。10日目に2敗の再入幕・時津海に止められたが、この2人も優勝争いに残った。12日目、1敗でトップを併走する朝青龍は、猛追する白鵬に敗れると、安馬にも敗れて大きく後退。13日目に北勝力も白鵬が引きずり下ろして栃東が単独トップに立った。14日目、栃東は北勝力、白鵬は時津海と2敗の平幕を駆逐し2人の争いに。千秋楽、白鵬は琴欧州を下して望みを繋ぐが、結びで朝青龍を上手出し投げに下した栃東が1敗を守り、ハイレベルな混戦を抜け出して2年ぶりの3回目の優勝を決めた。 横綱朝青龍は11勝、新大関琴欧州は2敗で追っていたが3連敗で10勝に終わった。関脇琴光喜は特に見せ場なく8勝、小結旭天鵬は大きく負け越し、玉乃島は故障を抱えながら1勝7敗から粘っていたが、千秋楽負け越し。栃東を含む3大関を破った雅山と、1横綱2大関を下した黒海、初金星の安馬も上位で勝ち越したが、三賞は成績で圧倒した殊勲白鵬(13勝)、敢闘北勝力(12勝)、技能時津海(12勝)。ガチガチの本命がいる中で、対抗馬が頑張り、思わぬダークホースも粘って近年稀に見る面白い場所だった。 <十八年春場所> 一騎打ち ドラマA レベルB 白熱度A 二たび新旧モンゴル決戦 本割の借りを返して朝青龍が制す 同時昇進がかかった春場所。栃東は前半で2敗を喫して苦しい展開。白鵬は朝青龍とともに白星を並べ、10戦全勝同士で激突。押し気味に進めた白鵬が上手出し投げで勝って一歩リードした。ところが、その日不振のカド番魁皇に敗れて綱取りに赤信号が灯った栃東が、翌12日目白鵬に土をつける。わからなくなってきた。大関陣を退けた両者はその後は譲らず1敗で並んで千秋楽を迎えた。この時点で白鵬の大関取りは確定的。しかし、3敗で耐えた栃東が綱取りの夢を来場所に繋ぐのか、引退必至の4勝7敗から懸命に踏ん張る魁皇はカド番を脱出できるのか、大事な一番を残した両大関の相手は、優勝を争う両者だった。蓋を開けてみると、絶望的かと思われた日本人大関が奇跡的にも立て続けに勝利。優勝争いも決定戦にもつれ込んで、ファン待望の展開となった。決定戦は、左四つから右四つに目まぐるしく変わる熱戦に。得意の四つに持ち込んだ白鵬が寄って出るところ、朝青龍が逆転下手投げで2場所ぶりの優勝を果たした。 琴欧州、千代大海は何とか終盤まで3敗でまとめたが、終盤3連敗で9勝止まり。ともあれ4大関が珍しく揃って勝ち越した。関脇琴光喜も前半2敗で朝青龍に挑んだが、返り討ちに遭ってかつてライバルと呼ばれた相手に屈辱の20連敗。以後崩れて8勝。小結雅山は得意の3大関食いで10勝。ロシア人初の三役・露鵬は4勝に終わった。白鵬が殊勲、技能。新三役を決めた安馬にも技能賞。二桁勝った力士は多かったが、ベテラン旭鷲山に敢闘賞が与えられた。蛇足ながら先場所12勝の北勝力、時津海が千秋楽に1勝13敗同士で対戦するという珍現象があった。 <十八年夏場所> 一騎打ち ドラマB レベルA 白熱度B 白鵬、決定戦を制し新大関優勝 朝青は3年ぶりの途中休場 序盤から大荒れ。2日目、朝青龍は若の里に突き落とされた際に肘を痛めて休場。綱取り継続の栃東も序盤から崩れて休場となった。琴欧州、魁皇も黒星先行。一気に大本命となった新大関白鵬だが、5日目に土。雅山の突き落としに落ちた。千代大海がひとり7連勝と気を吐いていたが、中日に土。全勝消えて1敗で大海、白鵬、雅山、2敗に魁皇、旭鷲山、新入幕把瑠都が残って終盤を迎えた。11日目、1敗対決は雅山に軍配が上がり、千代大海は連敗して脱落。1敗2人は並走を続け、14日目雅山が、千秋楽白鵬が追いすがる把瑠都を退けて、ついに決定戦に持ち込まれた。離れて取りたい雅山だったが、うまく捕まえた白鵬が慎重に180キロを寄り切って、惜しくも逃してきた初優勝を飾った。 千代大海、魁皇は終盤力尽きて10勝、9勝どまり。琴欧州は脱落してきた2大関に連勝して何とか8勝、昇進後毎場所成績が下降して初優勝を白鵬に先んじられた。琴光喜は取りこぼしが目立ってまた8勝。小結の旭天鵬は雅山に土をつけ、安馬は綱取り栃東に引導を渡したが、二桁の黒星を喫した。三賞は、大関陥落前にもなかった14勝の雅山に殊勲、技能。新入幕で千秋楽結びまで戦った把瑠都が敢闘賞。4大関を倒し10勝の朝赤龍にも敢闘賞、筆頭で勝越した稀勢の里とともに。翌場所の新三役を確実にした。 <十八年名古屋場所> 逃げ切り ドラマB レベルA 白熱度C 朝青龍綱取り阻止 まだまだ続く一人横綱時代 白鵬が双葉山以来の大関2場所目で横綱昇進を目指す。ところが初日、新三役の小結朝赤龍の引きに落ちてつまづく。弟弟子の援護を受けて休場明けの朝青龍は勝ちっぱなし。栃東が併走し、1差で白鵬、千代大海がつけて前半は大関陣の奮闘が見られた。やはり昇進がかかっていた関脇雅山は、得意の大関戦にさっぱり勝てずに黒星が先行していたが、9日目白鵬に2敗目をつけて復調する。ストレートの勝ち越しでカド番脱出の栃東だが、千代大海に敗れるとまさかの7連敗。1敗千代大海、2敗琴欧州もそれぞれ平幕把瑠都に敗れてから5連敗と、大関陣は急失速していった。全勝朝青龍と2敗白鵬は、調子を落としていく大関陣を一蹴してそのまま千秋楽へ。すでに優勝を決めた朝青龍に対し、勝てば13勝の準優勝で綱取りには申し分のない成績となる白鵬は、必死の相撲で横綱を寄り切って全勝を阻む。関脇雅山も終盤5連勝で3場所連続の二桁勝利をマーク。共に人事を尽くして天命を待ったが、結果はダブル見送りとなった。この厳しい判断には賛否あるが、その後の成績を見ると結果論では正しかったことになる。 5大関は白鵬以外は一桁ながらも揃って勝越し。関脇琴光喜はまたも最後に3連敗で8勝。新三役の両小結、殊勲のスタート24歳朝赤龍は翌日故障し休場、20歳稀勢の里後半盛り返して勝ち越した。終盤まで1敗を守った片男波コンビは共に11勝で、玉乃島5回目の敢闘賞、玉春日は9年ぶりの三賞となる技能賞獲得。34歳が円熟の押し相撲で魅せた。 千代大海‐露鵬戦では、決着後に土俵下で睨み合う醜態を演じ、両者呼び出し。怒りの収まらない露鵬は暴れてカメラマンを負傷させ、前代未聞の3日間出場停止というハプニングがあった。大問題となったが、翌年から立て続けに起こる不祥事、トラブルに比べれてみれば本当に可愛いものだった。 <十八年秋場所> 突き放し ドラマC レベルC 白熱度D 上位に対抗馬不在 朝青龍が連続優勝 惜しくも昇進を逃した2人は再挑戦の場所となったが、初日に揃って土。共に連敗を喫した中盤戦で可能性が消えた。初日白鵬を破った稀勢の里は、6日目朝青龍を初めて倒す。他の大関も前半で星を落としており、1敗の横綱についていったのは平幕力士。露鵬を自ら蹴落として、安美錦は大関戦で後退。6枚目で圏外にいた安馬は10勝1敗と粘っていたが、白鵬に敗れて2敗。そして割を崩して組まれた横綱戦では返り討ちにあい、14日目も栃東に敗れて朝青龍の優勝が決まった。大関が横綱の露払いをさせられているかのような展開で盛り上がりを欠いた。稽古不足を指摘された朝青龍は2敗を喫するなどそれほど強みを感じさせなくなっていたが、まわりの停滞で難なく優勝。 綱取りが白紙に戻った白鵬はまさかの8勝7敗。魁皇は不調で途中休場。栃東は初日から3連敗、先場所からの連敗が10にまで伸びて心配されたが盛り返した。千代大海、琴欧州は10勝。三役は休場の魁皇以外は勝越し。雅山は盛り返したが9勝に終わって大関取りはほぼ白紙に。琴光喜は好スタートもやはり最後に連敗して二桁届かず。殊勲賞の稀勢の里も星は上がらず千秋楽不戦勝で勝越し三賞決定。黒海も3大関を倒して新三役勝越し。3大関を連破して11勝の安美錦が技能賞で、敢闘賞の同部屋・安馬と揃って受賞。前頭筆頭で4大関を倒した露鵬、なぜか5人目の白鵬との対戦はなく、三賞からも漏れた。三役目前だった把瑠都は膝を痛めて途中休場、長年三役に定着した若の里も怪我の連続でついに十両陥落となった。 <十八年九州場所> ドラマC レベルB 白熱度D 朝青龍5回目の全勝 やはり一強時代 白鵬が足首を折って全休。朝青龍独走の予想が大方だった。蓋を開ければやはり横綱は白星街道。だが見くびられた大関陣も意地を見せる。中日を終えた時点で、琴欧洲(この場所から改名)は3敗だが、ご当初魁皇は全勝でカド番脱出、千代大海・栃東は共に普天王に敗れた1敗だけ。さらに関脇琴光喜も7連勝していたが、全敗の安馬に不覚を取ると例によって脱落していって二桁にも乗らず。他の大関も潰し合って横綱との差は広がるばかり。最後に残ったのはやはり平幕力士で、入幕4場所目の豊真将が初日黒星のあと10連勝。栃東に当てられて2敗に後退。その後は上位とも当てられず12勝したため優勝決定は14日目まで伸びたが、朝青龍を止める者はおらず昨夏以来の全勝優勝を果たした。 大関陣は勝ち越した途端に息切れするいつものパターンだったが、3人が10勝。ベテラン両関脇もそろって一桁で、上位はすっかり固定化されてしまった印象。流動性を補うべく、先場所平幕上位で大勝ちの2人を昇進させて珍しく4小結の番付だったが、稀勢の里と露鵬が8勝、安美錦6勝、黒海はわずか3勝で停滞した土俵をかき回すカンフル剤とはならず、「緩和政策」は奏功せず。豊真将には敢闘・技能、2枚目で10勝の琴奨菊に敢闘賞。3枚目の出島も10勝していたが、翌場所は三役枠が引き締められて昇進ならず。 元年〜3年 4年〜6年 7年〜9年
10年〜12年 13年〜15年 |