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平成相撲史 平成の相撲史を紐解く。いつものようにデータ形式で必要と思われる情報を整理。 普通の優勝力士表では見られない、優勝争いの流れや2番手の力士がわかるものにした。 あわせて場所の内容を3つの基準で評価した。 1年ごとの顔ぶれの変化がわかるように表に整理したので参考にしていただきたい。 横綱大関は昇進順。三役は年内の在位場所数を重視。新入幕と引退は時系列。 場所の内容は、優勝争いと上位陣の動向、三役力士の成績、三賞力士らの活躍を中心に振り返る。 元年〜3年 4年〜6年 7年〜9年
10年〜12年 13年〜15年 締りC 伯仲B 接戦C 躍進B 人気C
注) (決定)は、優勝決定時を表す。「13」、「14」等は決定日。千秋楽決着は、「決」、「巴」、「C」、「D」が決定戦(人数で分類)。「相」は前日まで相星、「直」は1差の相手と対戦して、本割で決定。それ以外は「千」。
<この一年> 白鵬が横綱昇進 前代未聞朝青龍2場所出場停止 朝青龍が3度目の4連覇で大台の優勝20回に乗せて明けた19年。依然ライバル不在が続くかに思われたが、白鵬が復調。春場所朝青龍との決定戦に勝って2度目の優勝。朝青龍との決定戦を変化で決めてケチがついたが、その声を跳ね返すように夏は朝青龍を圧倒し全勝優勝で横綱へ。さらに朝青龍不在の秋、九州も一人横綱として賜杯を抱いて年4回の優勝。ただ、まだ安定感は乏しかった。初日に弱い、同じ相手にやられるといった欠点もあり、朝青龍好調の場所に実力で賜杯を奪ったこともない。まだ完全に覇権を奪ったとは言い難かった。11年の武蔵丸と重なる。一方、初優勝以来初めて2場所連続で優勝を逃し、横綱昇進を許した朝青龍。名古屋では白鵬を圧倒し、賜杯を奪い返す。さあ二強時代と盛り上がった残り2場所、まさかの出場停止を食ってしまう。数々の事件を起こしてきたお騒がせ横綱は、名古屋場所後腰の怪我を理由に夏巡業を休場し帰国、ところが祖国でサッカーのイベントに参加している映像が出回った。ついに処分が下り、解離性障害と診断されて姿を消した。 モンゴルの二強に賜杯を独占され、日本人力士の手から史上最も長い期間離れてしまった。チャンスがなかったわけではない。名古屋場所は長らく関脇に定着していた琴光喜が地元で大関取りに挑み、新横綱白鵬との全勝対決を制す。しかし天敵朝青龍に捕まって、千秋楽に競り落とされた。九州では、やはりご当初の大関千代大海が俄かに復活。白鵬と2敗で並走したが14日目の決戦で力尽きた。彼らの活躍も単発で、琴欧洲、魁皇などは終盤まで優勝争いに加わることさえなかった。栃東は脳梗塞の痕が見つかり、余力を残しながら引退。 31歳琴光喜が悲願の大関昇進。史上最多在位の「名関脇」がようやく卒業し、雅山も陥落。占有されていた三役の座が開放され、若手がどっと流れ込んむ。稀勢の里は、まだ不安定で関脇には上がれず。琴奨菊、豊ノ島ら高卒組の飛躍も目立ったが、定着まではいかなかった。大器把瑠都も膝の怪我に苦しんで回り道を強いられていた。より大関へ近づいたのは安治川勢で、ベテランの安美錦が本格化して新関脇10勝。安馬も小結で連続10勝と、急浮上した。成績こそ不安定だったが、一年通して頑張ったのは元大関出島。33歳ながら初場所は白鵬、朝青龍を連破するなど上位を再三食い、夏には12勝で敢闘賞。九州も二桁勝ち三役復帰へ。若手では栃煌山、豪栄道と、稀勢の里世代の高卒組も頭角を現わした。 朝青龍の出場停止処分とともに衝撃的だったのは、時津風部屋の新弟子暴行死事件。親方や兄弟子数人が逮捕、書類送検される異常事態で、解雇された親方に代わって急遽幕内時津海が継承することとなり、幕内番付に空白ができる珍現象が起きた。大相撲暗黒時代の幕開けとなった。
<選考理由>優秀力士は大関昇進を決めて1年通して勝ち越した琴光喜。白鵬にもよく対抗し、一年治めの一番でも優勝を決めた横綱を投げ飛ばした。三賞はいずれも殊勲賞を獲得した力士。安美錦は朝青龍、安馬は白鵬を連破しての2場所連続受賞で他の賞はなし。豊ノ島、豪栄道といった優勝を争う平幕力士に引導を渡した点を評価して安馬を殊勲賞として、円熟の技術を見せつけた安美錦は技能に回した。三賞を各1つずつ獲得した新三役豊ノ島が敢闘賞に入った。新人王争いは、同期3人が新入幕三賞を記録したが、優勝争いまで演じた豪栄道に軍配。在位2場所ながら、他の候補が後半伸び悩んだ。 <十九年初場所> 逃げ切り ドラマC レベルC 白熱度D 朝青龍四連覇 上位は相手にならず 平幕の健闘が光る 初のカド番白鵬は前半で3敗ともたつき、いまだ回復途上。そうなると朝青龍が3日目出島(4年ぶり金星)に敗れても競りかける力士がいない。千代大海が何とか10日目まで1差につけるのが精一杯で、終盤は上位にライバルがいなくなった。先々場所の安馬、先場所の豊真将に続き、平幕力士一人が追いかけるという展開。9枚目の豊ノ島が最後まで2敗を守って優勝決定を引き伸ばしたが、全く上位力士と当てる気配もなかった。それも14日目安馬に敗れて3敗目、同日朝青龍が4場所連続20回目の優勝が決めた。尻上がりに調子を上げた横綱の前に、5大関は枕を並べて討ち死に。 大関はみな前半で取りこぼして星が上がらず、後半は白鵬が4大関に全勝、栃東が全敗したほかは潰し合い、足の引っ張り合い。千代大海と白鵬が10勝、琴欧洲9勝、魁皇辛くも8勝、栃東はケガを抱えて強行出場したが5勝に終わった。関脇は琴光喜相も変わらず8勝7敗。雅山は1年ぶりに負け越して陥落。大関復帰への挑戦が終わった。小結露鵬わずか3勝、稀勢の里も千秋楽負け越して三役陥落。三賞は12勝の豊ノ島が敢闘・技能の2賞独占。三賞は見送られたが、筆頭で9勝の琴奨菊、4枚目で10勝の安馬はそれぞれ2大関破り三役復帰へ。 <十九年春場所> 一騎打ち ドラマB レベルC 白熱度C 楽日変化合戦 朝青龍這わせ5場所ぶり白鵬V 波乱の初日。カド番の栃東、魁皇と不安な2人が勝って静かなスタートだったが、2m琴欧洲が170cm弱の豊ノ島に投げられると空気が一変、白鵬は稀勢の里の逆転に、大海は安馬に潜られ完敗、そして横綱朝青龍も時天空に珍しく後ろを取られて土。朝青龍は雅山にも敗れて初めての連敗スタート、「荒れる春」を地で行く場所となった。波乱の土俵をリードし7連勝したのは、意外やカド番栃東。ところが上位戦と同時に突然変調し、カド番は脱出したが朝青龍に敗れ3敗となったところで休場した。頭痛を訴えていたが、その後脳梗塞の痕が発見され、この場所限りで引退となった。1敗を守る白鵬が連勝を続けて引っ張り、朝青龍、豊真将、黒海、栃煌山ら2敗勢がピタリと追う。やがて平幕勢は消えて青と白のマッチレースに。14日目に両者が対戦。朝青龍が勝ってついに2敗で並ぶ。千秋楽、先に白鵬が勝って2敗を守ると、結び朝青龍は7勝7敗と不振の千代大海相手に変化を決める。騒然とした雰囲気のまま1年ぶりの両者の決定戦へ。すると今度は白鵬が立合い変化で制し、場内あっけに取られた。当然両者に非難の声が挙がったが、ともかく白鵬が2度目の優勝を果たした。 魁皇は先場所に続いて7敗してからの驚異的な粘りで勝越し。琴欧洲も何とか8勝。朝青龍、白鵬は初場所に続いて4大関に全勝、実力の差が歴然としてきた。関脇琴光喜は終盤こらえてようやく二桁に乗せた。同部屋で関脇に並び立った琴奨菊は早々に負け越したが粘って三役残留。後半型が定着。小結は安馬が三役で初の勝ち越し。時天空は1横綱2大関を倒すが最後に連敗して殊勲賞のチャンスを逃す負け越し。上位躍進の場所、2大関を倒した第2検査出身初の関取・豊ノ島は、筆頭で勝ち越して新三役へ。5枚目で11勝の豊真将は技能賞を得るが、三役にはなかなか縁がなかった。新入幕11勝の栃煌山に敢闘賞。 <十九年夏場所> 突き放し ドラマB レベルB 白熱度C 白鵬全勝横綱昇進 二横綱時代へ 栃東が引退を発表し、1横綱4大関で迎えた夏場所。珍しく上位安泰が続く。両関脇まで上位7人が3連勝の立ち上がり。中日を終えて、朝青龍、綱取りの白鵬が予想通り全勝、さらに出島、普天王も無傷で勝ち越した。3大関と関脇琴光喜、平幕朝赤龍も1敗で折り返し。僅差での締まった優勝争いが期待されたが、終盤を前に安治川勢がかき回す。安美錦が9日目琴欧洲、10日目朝青龍と連破。関脇安馬は8日目魁皇に土をつけ、琴欧洲を脱落させた。11日目、1敗対決で琴光喜を下した朝青龍がただひとり白鵬と1差につけ、やはり一騎打ちの展開に。かと思われた12日目、2敗千代大海に圧倒されて朝青龍は後退。するとそのまま大関陣に相手に連敗。13日目、全勝白鵬は2敗で追う琴光喜を下すと、2差の力士は平幕出島、朝赤龍のみ。14日目、高ぶる気持ちをぶつけて千代大海を圧倒し2場所連続優勝を決めた。横綱確実となった白鵬は、千秋楽朝青龍にも快勝して初めての全勝優勝。文句なしの69代横綱誕生となった。 朝青龍は4大関に全敗で10勝5敗。遂に史上最長の一人横綱時代が終わった。前半健闘し、横綱を倒して意地を見せた大関陣も両ベテラン10勝、琴欧洲9勝に留まった。関脇琴光喜は先場所の10勝に続いて12勝の好成績、5年半ぶりに大関取りに挑む。安馬は何とか関脇を守ったが、新三役豊ノ島は場所前朝青龍に膝を壊されて4勝どまり。琴奨菊も千秋楽負け越して同学年小結は共に陥落。金星の安美錦に初の殊勲賞、12勝の出島が8年ぶり4度目の敢闘賞。同じく12勝朝赤龍に2度目の技能賞。 <十九年名古屋場所> 三つ巴 ドラマB レベルB 白熱度B 朝青龍3場所ぶり優勝 琴光喜賜杯は逃すも悲願の大関へ 新横綱と大関を目指す関脇に注目が集まった。朝青龍がまたも初日に土。しかも先場所に続いて安美錦に敗れた。下位の力士に続けて負けるのはこの横綱にしては珍しい。連続V逸に続く神話崩壊は時代の変化を感じさせた。これを追い風に注目の両力士はともに無傷で走り、10日目に直接対決を迎えた。熱戦の末に琴光喜が出し投げ一閃、横綱白鵬に初めての黒星をつけた。ここ一番での勝負弱さを脱却、一気に走るかと思われた琴光喜だが、翌日天敵朝青龍に止められた。3人が1敗で並んで激しい優勝争いとなる。13日目から白鵬が大関相手に連敗し、脱落。相星の千秋楽、琴光喜は平幕稀勢の里に敗れる。朝青龍は結びで自身初の横綱対決に挑み、乱調の新横綱を圧倒。黒星スタートから追い上げて、千秋楽に初めてトップに立つ見事な差しっぷりだった。 白鵬は新横綱のジンクスどおり息切れして11勝。3大関は早々に脱落して二桁に届かず。魁皇は勝ち越し後の白鵬戦で故障して途中休場。13勝の琴光喜に敢闘、技能賞、3場所35勝の好成績で31歳にして大関昇進を果たした。小結安美錦は2場所連続の殊勲賞。初日以降は上位に勝てず8勝だったが、優勝者を倒したのは大きかった。関脇安馬はスロースタートが響いたが、盛り返して三役は死守。小結時天空も7勝に終わった。新入幕11勝の豊響に敢闘賞。前半9勝1敗の豊真将は終盤上位と当てられ5連敗、最後に大仕事して11勝の稀勢の里、共に三賞は逃した。 <十九年秋場所> 追い込み ドラマC レベルC 白熱度B 王者不在の土俵 白鵬が穴埋める 新横綱を倒して実力を誇示した朝青龍だが、場所後のサッカー事件で2場所出場停止。突然トップが消えた土俵、当然本命視された白鵬が、課題の初日に黒星。波乱を演じた小結安馬は、新大関琴光喜と千代大海にも土をつける大暴れ。持ち直した白鵬がすぐに大関陣を捕える。最後まで全勝を守ったのは新関脇安美錦。8連勝で驚かせたが、天敵の若の里と千代大海に連敗して脱落した。大関も脱落していく中、平幕勢が健闘。11日目には白鵬が2敗目を喫し、新入幕豪栄道が単独トップに立つが、上位戦が組まれて豪栄道は連敗。14日目ようやく首位に立った横綱と新入幕の1差の対戦は、白鵬がいきなりのとったりで一蹴した。旭天鵬が12勝3敗と粘って優勝は持ち越され、千秋楽結びで千代大海を下した白鵬が優勝を決めた。あまり強みは見せつけられなかったが、一人横綱の責任は果たした。 新大関琴光喜は早々に取りこぼして脱落したが10勝はマーク。千代大海、琴欧洲は後半奮わず二桁に届かず。魁皇は休場明け強行出場したものの1勝しかできずまた途中休場で地元カド番へ。安馬が10勝で殊勲賞を獲得。同じく1横綱2大関を倒した豊ノ島にも殊勲賞。12勝の旭天鵬と新入幕豪栄道に敢闘賞。新入幕11勝で敢闘賞は、栃煌山、豊響に続いて3場所連続。しかも3人は17年初場所初土俵の同期だ。関脇返り咲きの朝赤龍は3大関破り勝ち越し、新関脇安美錦は10勝して一躍大関候補にのし上がった。稀勢の里は6勝どまりでなかなか三役に定着できない。 <十九年九州場所> 追い込み ドラマB レベルD 白熱度B 白鵬3敗も連覇 千代大海健闘及ばず またも白鵬が黒星スタート。琴奨菊の出足に不覚を取った。久々に快調に飛ばしたのは大関千代大海。難敵を次々連破し7連勝のスタート。黒星スタートの白鵬、琴光喜、先場所新入幕で活躍の豪栄道も6連勝で追いかける。中日、千代大海に土がつくが、1差の3人も揃って2敗目。運がついているように見えた千代大海だが10日目も落とし、2敗で白鵬、琴光喜、再々入幕・把瑠都と並び、3敗も多数の混戦模様に。12日目、大関対決は千代大海が制して琴光喜は3連敗で脱落。さらに把瑠都も退けた千代大海は、14日目白鵬との相星決戦に挑む。猛然と突っ張るが、白鵬が強引に腕を手繰り、最後は引き落とす。千秋楽を前に1差、他力での逆転にかけると思いきや、手繰られて肘を負傷して千秋楽は不戦敗。地元の声援を受けての大活躍だったが、最後はあっけなく優勝が決まった。白鵬も琴光喜に投げられて3敗、攻防のある優勝争いに白熱したが、最後が締まらなかった。 混戦を演出したのは元気な若手。東小結安馬は白鵬に連勝、その他3大関を破っての10勝で殊勲賞。西小結琴奨菊も初日白鵬を出足で圧倒、9勝で技能賞を受賞した。共に横綱を倒したが後半平幕に星をこぼして優勝争いには絡めず。敢闘賞は11勝の把瑠都。この年は強引に呼び込む相撲で膝の故障を繰り返し、2度の十両陥落を味わったが、這い上がってきた。カド番大関35歳魁皇は一進一退、7勝6敗で好調大関戦を残したが、琴光喜に勝って危機回避。琴欧洲は負けが込んで中盤で休場した。関脇は安美錦8勝、朝赤龍3勝どまり。先場所の勢いはなかった。平幕上位も好調で、時天空が4大関、出島が3大関、稀勢の里2大関を下した。10勝の33歳出島はついに三役復帰。 元年〜3年 4年〜6年 7年〜9年
10年〜12年 13年〜15年 締りB 伯仲B 接戦B 躍進C 人気C
<この一年> 青白対立から覇者交代へ 白鵬3連覇 安馬が大関レース1番乗り 一年を通して上位陣の顔ぶれは変わらず。しかし勢力図は移り変わった。3場所ぶりに復帰した朝青龍は何事もなかったかのように下位力士を蹴散らし、白鵬との2場所連続相星決戦を戦って賜杯を分け合う。遅ればせながらも二強時代が実現かと思われたが、突然乱れる。消化試合となった夏場所千秋楽の横綱対決では、決着後の接触から両者が険悪なムードになって汚点を残したが、これを起点に両者は対照的な年後半を過ごす。白鵬が全勝を含む2度目の3連覇を記録したのに対し、朝青龍は途中休場、途中休場、全休と皆勤すらできず。稽古不足のつけが回ってきたと批判され、進退も問われる大ピンチに陥った。 対照的な2横綱の陰で、大関陣は若手に押されて存在感を失っていく。夏場所に琴欧洲が突如覚醒して初優勝を果たしたものの、その夏場所しか二桁勝てなかった。琴光喜も昇進時の勢いが衰え、11勝2回はあったが8番に終わる場所が多かった。魁皇も何とか勝ち越しを続けていたが二桁には一度も届かず、九州では途中休場。千代大海は19年九州で負った肘の影響で不振、初場所7連敗で休場という惨憺たる成績で夏も二桁黒星。やはり二桁は一度も勝てずにカド番最多記録を更新し続けた。 関脇に定着する力を身につけた安馬、しばらく大勝ちできなくなっていたが、後半には盛り返して二桁勝利を重ね、九州は決定戦にまで進出して大関取りに成功した。琴奨菊も三役定着に成功したが、怪我もあってブレイクとはいかず先を越される。稀勢の里、豊ノ島も小結で10勝して名乗りを挙げたが、安定感に乏しかった。上位陣を苦しめた朝赤龍、安美錦も定着はならず。年後半には把瑠都もようやく三役に顔を出して本領を発揮し始める。若手が大関の壁を打ち破り始め、存在感を増してきた。 角界は大麻事件に揺れた。19歳のホープ若ノ鵬が大麻所持で逮捕。その後の抜き打ち検査で同じロシア人力士の露鵬・白露山兄弟もクロとされ、3人とも解雇処分となった。師匠も監督責任を問われ、北の湖理事長が無念の引責辞任。前年に続いて幕内の番付に空白ができる異常事態が起こった。
<選考理由>最優秀力士は朝青龍を凌駕した白鵬。優秀賞には、後半乱調の朝青龍、低調な大関陣を飛ばして関脇を1年務めた安馬。十分大関の務まる活躍だった。年間三賞は伊勢ケ浜勢が文句なしの連続受賞。今年も2回とも殊勲賞だった安美錦を今年は殊勲賞に。安馬は受賞回数の多い技能賞とした。敢闘賞候補は僅差だったが、横綱に強い稀勢の里と豊ノ島が甲乙つけがたく同時受賞。関脇3場所の琴奨菊は安定感で上回るが二桁なしで印象で劣った。新人王争いは、残念ながら該当なし。昨年九州新入幕から負け越しなしで筆頭まで進んだ19歳若ノ鵬が有力だったが... <二十年初場所> 一騎打ち ドラマA レベルB 白熱度A 白鵬三連覇 出場停止明け朝青龍との相星決戦 朝青龍が復帰。しかし2日目に早くも土がついた。相撲勘が戻らずこのまま崩れるのではという不安の声も挙がったが、その後は徐々に調子を上げて勝ちっぱなし。白鵬は初日から白星を並べたが、10日目にまたも関脇安馬に敗れ1敗で並ぶ。上位で二人について来られる力士はおらず、平幕勢が数人が残っていたが、旭天鵬、鶴竜は終盤の大関戦で3敗に後退。予想通り千秋楽まで1敗を堅持した両横綱の決戦となった。14年秋以来の横綱楽日相星決戦、四つに渡り合って引き付け合う熱戦となったが、終始胸を合わせて体格に勝る白鵬が押し気味。朝青龍が強引な吊り身で浮いたところを強烈な上手投げ。初の三連覇で、2場所の間一人横綱を務めた意地を見せつけた。 大関陣はひどい出来。先場所活躍した千代大海は負傷した肘の影響から初日から7連敗の醜態で休場。他の3大関も序盤から「ヌケヌケ」で五分五分の星取り。最終的には揃って勝ち越したが、2横綱にも歯が立たず全く見せ場なし。関脇では、安馬が3場所連続で白鵬を破る快挙、9勝で殊勲賞。小結琴奨菊も前半6連勝と好調だったが、横綱戦で負傷し途中休場、それでも再出場して9勝し、地力の高さを見せつけた。ベテラン安美錦は後半8連敗で5勝どまり。出島も9連敗があって3勝に終わった。朝青龍から金星の稀勢の里は10勝して殊勲賞。12勝の豪風敢闘賞で新三役へ。14日目まで1差につけた鶴竜も11勝で技能賞。 元小結の千代天山、栃乃花ら4人の幕内経験者が引退した。 <二十年春場所> 一騎打ち ドラマB レベルC 白熱度A 2場所連続青白相星決戦 朝青龍復活優勝 予想通り2強を中心とした優勝争い。4日目、白鵬に土がついたが、朝青龍は無傷で勝ち進んで1差で推移。平幕北勝力は6連勝、栃煌山と豊真将が7連勝など好調力士が多かったが中盤で後退して、両横綱の争いに。12日目、白鵬が千代大海に敗れて2敗目を喫するが、直後朝青龍も関脇琴奨菊に敗れる。13日目、朝青龍は28連勝中のカモ・琴光喜にも敗れて連敗。一時は絶望かと思われた白鵬が追いついた。2敗でつけていた把瑠都と栃煌山もこの日3敗目。14日目は両横綱譲らず、先場所に続いて相星決戦で雌雄を決することとなった。勝負はあっけなく、差して出て行った白鵬を朝青龍が小手投げで逆転、雪辱を果たした。初優勝以来最長の4場所ぶり優勝。「白鵬時代」到来の声を払拭し、二強時代に持ち込むかに思われた。 4大関はやはり冴えず、琴欧洲が中盤乱調して休場。前半順調だった魁皇とカド番千代大海は終盤崩れ、2勝6敗まで追い込まれた琴光喜は逆に盛り返して、仲良く8勝7敗に落ち着いた。関脇安馬と琴奨菊、小結稀勢の里も8勝7敗だった。新小結豪風は3勝に終わる。三賞は、初めて朝青龍を勝った琴奨菊に殊勲賞。最後まで3敗を守って大関も倒した黒海と把瑠都に敢闘賞。11勝の栃煌山にも技能賞。白鵬と3大関を破った安美錦だが、惜しくも負け越した。37歳で11回目の入幕を果たした皇司は4連勝スタートだったが10連敗で陥落。 <二十年夏場所> 突き放し ドラマA レベルB 白熱度C 琴欧洲初優勝 両横綱を突き放す 初日、先場所の覇者朝青龍に土。3大関も序盤から苦戦して早々に脱落。全勝で引っ張る白鵬に、意外にも並走したのはカド番の琴欧洲。2人を1差で朝青龍がピタリと追う展開となった。均衡が崩れたのは10日目。白鵬が苦手安馬に敗れる。トップに立った琴欧洲は、翌11日目朝青龍との直接対決。引きずり下ろして首位に並びたい横綱だったが、大関の勢いが勝った。続いて12日目には白鵬戦。これも制して2差。大関昇進後はなかなか勝てなかった両横綱を連破して願ってもない展開に持ち込んだ。ところが、勝負弱さを払拭したかに思われた長身大関は、不戦敗を含め4連敗中と大の苦手・安美錦に一方的に押し出される。17年秋にも2差を逆転されており、不安が過ぎった。が、直後に白鵬も琴光喜に敗れ3敗。兄弟子の援護により王手がかかった14日目、やはり合口の良くない関脇安馬との対戦だったが、今度は弱気を出さずに送り倒して初の賜杯を手にした。大関昇進後は一度も関脇時代の成績を上回ることなく、直近は連続でカド番を迎えていた2mの巨人が突如真価を発揮。14勝して綱取りに挑む。 朝青龍、白鵬は共に終盤に3敗を喫し、初めて消化試合の横綱対決。不調同士らしく朝青龍の引き技であっけなく決したが、ダメ押しの形になってしかも顔に入ったことから白鵬が押し返し険悪なムードに。前代未聞、横綱同士の決着後の睨み合いという汚点を残したが、両者の再戦は翌年まで実現せず、対照的な道を辿る。両者11勝4敗。 横綱戦では仕事をした3大関だったが、成績は奮わず。琴光喜、魁皇は横綱戦が効いて8勝、千代大海は5勝10敗と大きく崩れて再度カド番。関脇安馬9勝(技能賞)、琴奨菊8勝と大関への足固めはならず。両小結は序盤から上位食いで存在感を発揮したが、稀勢の里は初の三役10勝、朝青龍食いで敢闘賞、朝赤龍は6勝と明暗分かれた。三役1枠をめぐる争いは千秋楽まで激しく、19歳・2枚目若ノ鵬が10勝の北勝力を下して勝ち越したが、二桁を狙う関脇安馬を破って11勝の豊ノ島が技能賞とともに三役復帰の切符を手にした。殊勲賞の安美錦も10勝目を挙げたが、わずかに届かず。 <二十年名古屋場所> 大独走 ドラマC レベルB 白熱度D ライバル不在 白鵬一人旅 白鵬は勝ちっぱなしたが、朝青龍が6日目から休場。優勝争いなど成立せず、11日目に琴光喜が3敗となって勝負アリ。白鵬が13連勝で優勝を決定した。このところ取りこぼしの目立っていた白鵬だが、下位相手には落とさなくなり、先場所苦しんだ大関戦もしっかり修正して2度目の全勝優勝を果たした。 綱取りが期待された琴欧洲だが、初日安美錦、3日目豊ノ島と天敵に阻まれて早くも瓦解した。小結豊ノ島は初日朝青龍にも土をつけるなど、1横綱3大関を破る大暴れ(殊勲賞)。関脇安馬も3大関を破り10勝(技能賞)。34歳の栃乃洋も久しぶりの上位戦でハッスルし、4日目琴光喜に土をつけると、翌日朝青龍を休場に追い込む通算12個目の金星、10日目千代大海にも3敗目をつけた(千秋楽惜しくも負け越して殊勲賞ならず)。新旧上位キラーの活躍で本命の一角が崩れたが、他の役力士がおとなしく、4大関は12日目には全て勝ち越し。それでも琴光喜11勝のほかはクンロク。関脇琴奨菊、小結稀勢の里は6勝どまり。中盤から終盤にかけて9連勝と馬力の戻った豊響が敢闘賞を得たが、平幕の目立った突き上げはなかった。 前頭筆頭の若ノ鵬は4勝11敗に終わり三役昇進を逃したが、場所後落とした財布から大麻が見つかり解雇。さらに同じロシア出身の露鵬、白露山兄弟も抜き打ち検査で陽性反応が出て解雇となった。 <二十年秋場所> 逃げ切り ドラマC レベルB 白熱度C 白鵬強し 朝青龍は連続途中休場 休場明けの朝青龍は3日目に土がつくと、中盤で崩れた。白鵬は5日目に稀勢の里に敗れて上位陣の全勝は消える。中日、1敗同士の対戦では関脇安馬が大関琴光喜を破る。さらに9日目には朝青龍を下して休場に追い込んだ。勢いに乗って挑んだ白鵬戦、しかし横綱の牙城は崩せず2敗に後退。5枚目の豪栄道も好調で、7日目琴光喜に敗れた1敗のみ。朝青龍戦が不戦勝となって、11日目白鵬と相星で対戦したが及ばず、連敗し脱落。琴光喜と安馬が1差で白鵬を追う展開となっていたが、14日目に安馬は豪栄道に、琴光喜は魁皇に3敗目を喫する。白鵬は最後まで1敗を守って逃げ切った。白鵬は2場所連続8回目の優勝。 琴光喜は先場所に続き11勝と健闘したが、魁皇、千代大海はともに千秋楽敗れて久々の二桁ならず。琴欧洲は楽日ようやく勝ち越しと元の木阿弥。安馬が連続二桁勝利となる自己最高の12勝で殊勲賞。朝青龍を倒したことよりも優勝争いを戦ったことが評価された。関脇豊ノ島も朝青龍は倒したが6勝どまり、平幕雅山、稀勢の里も金星を挙げながら負け越した。小結朝赤龍はまた序盤大関連破も4勝どまり、新三役把瑠都は琴欧洲にしか勝てなかったが2勝7敗から粘りの勝ち越し。豪栄道は10勝5敗で敢闘賞。 <二十年九州場所> 一騎討ち ドラマA レベルC 白熱度A 白鵬2度目の3連覇 決定戦進出の安馬、大関へ 朝青龍は3場所連続休場となる全休。大本命の白鵬だが、初日に土がつく。大関取りのかかる安馬も序盤で連敗を喫して苦しくなった。先場所優勝争いに加わった琴光喜も前半で3敗。豪栄道も3連敗スタートで安馬は破ったが、再び連敗地獄に。前半を盛り上げたのは武蔵川の両元大関。揃って6連勝、出島はまさかの9連敗だったが、雅山は9勝1敗で終盤を迎えた。1敗白鵬は11日目2敗の小結把瑠都を退けて単独トップに立つが、12日目連敗から立ち直った安馬が白鵬を渾身の相撲で下して2敗で並ぶ。3敗で大関琴光喜に平幕雅山、嘉風という混戦になった。しかし両モンゴル勢は共に千秋楽まで譲らず13勝2敗、同点決勝にもつれ込んだ。得意の左上手を取った横綱が、必死に食い下がる関脇の頭を押さえつけて強引に上手投げを決めて三連覇達成。安馬も3場所35勝、5度目の技能賞を手土産に文句なしの大関昇進を決めた。 終盤まで1差だった琴光喜も9勝止まり。千代大海、琴欧洲は辛くも8勝。魁皇は序盤で休場。新関脇把瑠都も終盤崩れて9勝。新小結豪栄道は5勝10敗、安美錦は初日白鵬を下手投げに下し2大関も連破、後半息切れしたが4度目の殊勲賞。千秋楽まで優勝争いに残った平幕嘉風がご当所で初の敢闘賞。4大関を破った豊ノ島は二桁届かず三賞は逃したが、三役復帰を決めた。 元年〜3年 4年〜6年 7年〜9年
10年〜12年 13年〜15年
締りA 伯仲B 接戦A 躍進D 人気C
<この一年> 白鵬年間86勝の新記録も決定戦3連敗 若手は伸び悩む 抜群の安定感を誇る白鵬、21年に入ると取りこぼしも激減。全場所1敗以内という無敵ぶりでわずか4敗しかせず、4年前に朝青龍が更新し不滅と思われた年間最多勝記録を2つも塗り替えた。年間完全制覇を成し遂げても不思議ではなかったが、優勝は何と3回に留まり、連覇もなかった。両国国技館ではいずれも14勝1敗で決定戦に持ち込まれ、朝青龍、日馬富士の前に苦杯を舐めさせられたのだ。3連続休場で引退危機を迎えた朝青龍は不利との予想を覆して2度優勝と食い下がり、それ以外は平凡だったが4年ぶりに6場所皆勤と復調を示した。勝負強さの点ではモンゴル勢に及ばなかった白鵬だが、本割では朝青龍に6戦全勝と圧倒。優勝争いでは二強間に1つの差しかつかなかったが、実質的には白鵬時代へと突入していた。 大関は初場所から安馬改め日馬富士が加わり5大関に。豪華番付の顔ぶれは年間通じて変わらなかったが、九州場所で史上最多在位65場所の千代大海の陥落が決まった。大関ワーストの13敗を喫し、などボロボロになるまで戦ったが、大関として負けを重ねるのはどうかという批判も強かった。大関に潔さを求める声は他の大関に対しても同様で、初場所2勝10敗となって横綱に不戦敗を献上した琴光喜や、年6場所8勝7敗の珍記録を残した魁皇にも向けられた。大関3場所目で初優勝を飾った日馬富士も、新大関場所で初日から4連敗のワースト記録を作るなど、やはり関脇時代の元気を失ってしまった。 若手の成長にも物足りなさが目立った。新入幕はわずか5人。三役に定着できたのは把瑠都くらいで、大関には届かなかった。期待の稀勢の里や琴奨菊らも安定せず、流動した三役にも同じ顔ぶれが入れ替わるばかりで、新三役は鶴竜と栃煌山だけ。両横綱が歴史的な安定感を誇ったとは言え、6場所とも殊勲賞該当者なしというのは寂しすぎる。 お決まりとなった不祥事では、十両若麒麟に大麻所持が発覚し解雇。前年あれだけ叩かれてまだ懲りないところに呆れる声が強かった。急遽番付から削除する異例の措置による番付空位が3年連続で発生した。
<選考理由>白鵬が年間新記録を達成。4年前に朝青龍が塗り替えたばかりの年84勝を2つも上回る。不滅の大記録だろう。大きく水を開けられた朝青龍だが、久しぶりに年間皆勤。決定戦を2度制し、優勝回数は1差と健闘した。両横綱はほとんど下位に取りこぼさず、殊勲賞は6場所とも該当者なし。技能賞は3たび獲得の鶴竜で文句なしだが、敢闘賞は難航。連続受賞の豊真将も下位で取っただけで、上位では1勝14敗を記録。期待よりは停滞した印象から三賞受賞は1回ながら、大器の片鱗を見せた把瑠都に期待を込めて受賞させた。新入幕5人とさびしい年。前年後半入幕の阿覧が上位に食い込んだが、それ以上に翔天狼の金星はインパクトが大きかった。 <廿一年初場所> 一騎討ち ドラマA レベルA 白熱度B 横綱同士の決定戦 朝青龍が鮮やかに復活 2横綱5大関に膨らんだ上位陣。注目は新大関の安馬改め日馬富士だったが、まさかの初日から4連敗。琴光喜も大乱調だったが、そのほかは上々の滑り出し。5日目に2大関に土がついて、全勝は両横綱と関脇把瑠都、平幕栃煌山となった。1敗で追う琴欧洲が把瑠都に土をつけ、9日目白鵬が把瑠都を2敗に追いやる。栃煌山も後退して2横綱のデッドヒートになるかという10日目、白鵬が対大関緒戦で3勝6敗と絶不調の日馬富士に不覚。朝青龍が単独トップに立つ。終盤は両横綱とも大関をなぎ倒して1差で千秋楽に突入。3場所連続休場明けの朝青龍は、14連勝で引退の声を払拭、全勝を狙ったが白鵬に二本差されてなすすべなく寄り切られた。決定戦、今度は朝青龍が両差しを果たして寄り切り、5場所ぶりの優勝を決めた。14勝しながら優勝を逃すのは13年初場所の武蔵丸以来。復活優勝を狙う貴乃花の全勝を止めながら決定戦で敗れるという全く同じ展開だった。内容が二番ともあっけなかったのが残念。 琴欧洲は10勝に届いたが、千代大海、魁皇、日馬富士は8勝7敗。琴光喜は2勝10敗3休で初めてのカド番へ。関脇安美錦は朝青龍に押し倒されて膝を負傷、小結豊ノ島は魁皇の小手投げの餌食になって肘を負傷、それぞれ途中休場となった。関脇2場所目の把瑠都は後半5連敗で9勝どまり。相変わらず上位に苦戦。小結稀勢の里は3大関連破の活躍はあったが星は伸びきらず勝ち越しがやっと。幕尻で11勝と復活の豊真将に敢闘賞、10勝で三役復帰を決めた豪栄道に技能賞。共に実力からすれば驚く程の活躍ではないが、内容面が評価された。両横綱の取りこぼしがなく、殊勲賞は2年ぶりに該当なし。もうひと枠の三役には、後半盛り返した34歳旭天鵬が筆頭で勝ち越して確定。日本人力士歴代最重量となる山本山が新入幕で勝ち越し。規格外の相撲で盛り上げたが、8勝では三賞は却下。 <廿一年春場所> 抜け出し ドラマC レベルB 白熱度C 白鵬全勝で10回目の優勝 両横綱は初場所に続いて勝ちっぱなし。これについて来られる力士はおらず、一騎討ちの様相を呈した。ところが10日目、朝青龍は日馬富士に敗れる。先場所と反対の展開だ。さらに朝青龍は12日目カド番の琴光喜にも星を落として自力優勝が消滅。14日目、琴欧洲にも敗れてあっけなく白鵬の優勝が決まった。白鵬は千秋楽の横綱対決も制し4度目の全勝。節目の10回目の優勝を飾った。 琴欧洲と日馬富士は10勝。上位戦は健闘したが、取りこぼしが多かった。魁皇、琴光喜は8勝7敗。千代大海は大関史上ワーストの2勝13敗。満身創痍の中、なぜ出場にこだわったのか不明で先場所の琴光喜以上に批判が殺到。関脇把瑠都は千代大海しか上位陣を崩せず辛うじて8勝。千代大海にも敗れた新関脇稀勢の里は5勝10敗で陥落。小結豪栄道は3大関を倒し9勝、旭天鵬も2大関を破るが6連敗が響き負け越し。三賞は、両差し速攻が冴えて後半8連勝の前頭筆頭鶴竜が二桁勝って技能賞。豊真将は先場所に続いて11勝で敢闘賞。井筒系の2人が揃って受賞した。 <廿一年夏場所> 混戦 ドラマA レベルAA 白熱度A 日馬富士優勝 白熱の優勝争いを競り勝つ 極めてハイレベルな優勝争いが展開された。朝青龍は3日目に土がつくが、この1敗だけに収めて猛追。白鵬と日馬富士が全勝で首位を走った。平幕に転落した稀勢の里は6日目に土がついたが、1敗で追う。大関陣もまずまずの出来だったが、日馬富士が中日から2敗千代大海、1敗魁皇、2敗琴光喜と次々蹴落として全勝キープ。さらに11日目稀勢の里との直接対決も制した。両横綱も大関戦を取りこぼさず、13日目に白鵬‐日馬富士の直接対決となった。食い下がる小兵のお株を奪って裾払いを決めたのは白鵬。全勝を守って優勝に向かって一歩抜け出したかに思われた、ところが14日目、8勝5敗とパッとしない琴欧洲の思い切った投げに屈して1敗。自己最長だった本割の連勝も33でストップした。結び、1敗対決は日馬富士が朝青龍を外掛けに刈り倒し、再び並ぶ。千秋楽、まず敢闘賞の稀勢の里が13勝2敗として決定戦に望みをつなぐが、日馬富士はきのうの殊勲者琴欧洲を首投げで急襲し1敗を守る。肩を強打した朝青龍は元気なく白鵬に敗れ、14勝1敗での2者の決定戦となった。踏み込み良く左を差した日馬富士が下手投げを決め昨年九州の雪辱、大関3場所目で初優勝を決めた。 大関は終わってみれば平凡。白鵬を倒した琴欧洲も9勝に終わり、前半良かったベテラン3大関も終盤に5連敗で8勝どまり。先場所惨敗のカド番・千代大海は5勝7敗から2大関を倒し執念の大関残留。ただ、千秋楽の関脇把瑠都は故障抱えて4勝止まりとはいえ、あまりに不細工な倒れ方をして、両者に無気力相撲の注意が与えられた。3大関連破でスタートした新関脇豪栄道は中盤から変調、新小結栃煌山もあと一歩粘れずそれぞれ陥落となった。やはり新小結の鶴竜は後半7連勝、二桁は逃したが3大関食いで技能賞獲得。21年に入って初めて関脇以下で横綱を倒した安美錦は負け越したため、殊勲賞は3場所連続で該当なし。4枚目で13勝2敗の稀勢の里を2大関にしか当てなかったが、横綱戦を組んでいればどうなったか。編成にもうひと工夫欲しかった。 <廿一年名古屋場所> 逃げ切り ドラマB レベルA 白熱度B 白鵬接戦制す 両琴健闘及ばず 綱取りを狙う日馬富士は序盤で2敗。苦手琴奨菊に屈し、初顔の阿覧にも敗れた。白鵬、朝青龍に加えて佐渡ケ嶽部屋の2大関が序盤を無傷で乗り切った。中盤を盛り上げたのは関脇に復帰した稀勢の里。6日目琴光喜を下し、白鵬には敗れたものの、朝青龍にも土をつけた。ことのほか2大関が健闘、琴欧洲は波に乗る稀勢の里を脱落させて10連勝、日馬富士に引導を渡した琴光喜も1敗で追う。波乱は11日目、琴欧洲は千代大海の叩きに落ち、白鵬は琴光喜に寄り切られて全勝が消えた。さらに朝青龍も魁皇の小手投げを食って3敗に後退。1敗に白鵬、琴欧洲、琴光喜が並んだ。12日目、琴光喜は不調の朝青龍に敗れると連敗を喫して脱落。13日目、直接対決は白鵬が上手投げで琴欧州を退けた。琴欧洲は朝青龍らを下して必死に食らいついたものの、白鵬も譲らず逃げ切った。 琴欧洲は昨年の優勝以来の13勝。琴光喜は12勝。久しぶりに大関らしい活躍だった。綱取り日馬富士はいいところなく9勝に終わった。古参大関2人は朝青龍を破ったものの最終盤まで勝ち越せず。23歳の両関脇は明暗。新関脇鶴竜は5勝どまりで陥落、稀勢の里は9勝したが、前半の活躍からすると物足りない。10勝に終わった朝青龍を倒してももはや殊勲賞には挙がらなかった。34歳の小結旭天鵬はまた6勝どまり。琴奨菊は後半盛り返して勝ち越した。三役には共に11勝の2人が復帰確実。共に上位戦は少なかったが、3大関戦全敗の把瑠都に対し、琴光喜を脱落させた安美錦に技能賞。もうひとり平幕で11勝と健闘した翔天狼に敢闘賞、上位進出を果たす。 出島は大きく負け越して場所途中で引退。故障と戦って35歳まで取り、大関陥落後の幕内在位最長記録だが、翌場所雅山が並ぶことになる。 <廿一年秋場所> 一騎討ち ドラマB レベルA 白熱度B 上位に対抗馬不在 朝青龍が連続優勝 先場所好調の佐渡ケ嶽2大関が今場所も好スタート。6日目白鵬が伏兵翔天狼に今年初の金星を献上したことで優勝争いが面白くなった。9日目を終えて朝青龍が全勝、白鵬と2大関が1差という好展開だった。しかし大関はここからガタガタと崩れる。2敗で猛追の把瑠都に飲み込まれて脱落した。全勝朝青龍、1敗白鵬という構図は千秋楽まで変わらず、初場所の再現となった。結びの大一番、凄まじい出足で寄り切ったのは白鵬だった。14勝1敗で優勝決定戦、今度は朝青龍が攻勢、休まずに攻め立てると、虚を突く下手投げを一閃。初場所同様全勝は逃したが、見事な立ち直りで4場所ぶりの賜杯を手にした。初場所と違い熱戦で盛り上がったが、当時問題になったガッツポーズをまたも派手に作って顰蹙を買った。 前半期待させた2大関は揃って9勝に終わる。序盤五分五分の星取りだった3大関、日馬富士、魁皇も9、8番と奮わず、千代大海は6連敗で負け越し途中休場。再小結把瑠都が5大関総ナメし12勝で早くも4度目の敢闘賞。その把瑠都を14日目に脱落させた鶴竜も11勝して4度目の技能賞。関脇稀勢の里、琴奨菊、小結安美錦は最後に力尽きて負け越し。 <廿一年九州場所> 独走 ドラマC レベルB 白熱度C 白鵬全勝締め 年間最多勝記録を樹立 やはり朝青龍と白鵬が好スタートを切る。大関陣は前半1敗に留めた琴欧洲を除いてはボロボロと星を落として早々に脱落。関脇復帰の把瑠都、鶴竜も不調で、代わりにトップ集団に入ったのは平幕勢。10日目を終えて1敗に嘉風、2敗に大関琴欧洲のほか栃ノ心、豊ノ島が生き残った。両横綱による並走が最後まで続くかと思われたが、12日目から朝青龍が大関相手に3連敗。息切れする癖が出て自滅した。栃ノ心が14日目まで2敗を守ったが、難なく5大関を退けた白鵬が優勝。同時に朝青龍が17年に達成した年間84勝を破った。千秋楽結びの朝青龍戦も、年6場所全て制して全勝優勝。優勝こそ3回だが記録に残る安定感を示した一年だった。 大関65場所目の千代大海が陥落。連勝スタートだったが、8連敗で負け越し。下手人は朝青龍だった。来場所に再起を賭けて休場した。他の大関も琴欧洲の10勝が最高で、朝青龍に勝ったくらいしか見せ場はなかった。先述の関脇に加えて小結稀勢の里、豪栄道も前半から星が崩れ、9勝の把瑠都以外は負け越し。大関は倒すので何度もインタビューは受けていたが、潰し合いも激しく勝ち越しも厳しい。 元年〜3年 4年〜6年 7年〜9年
10年〜12年 13年〜15年 |