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平成相撲

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平成の相撲史を紐解く。いつものようにデータ形式で必要と思われる情報を整理。

普通の優勝力士表では見られない、優勝争いの流れや2番手の力士がわかるものにした。

あわせて各場所を3つの基準で評価した。

1年ごとの顔ぶれの変化がわかるように表に整理したので参考にしていただきたい。
(横綱大関は昇進順。三役は年内の在位場所数を重視。新入幕と引退は時系列)

さらにその年の相撲史のなかでの位置づけや、勢力の変遷をコンパクトにまとめている。

また、私製表彰力士として、年間表彰を設けて活躍の際立った力士を取り上げた。

場所の内容は、優勝争いと上位陣の動向、三役力士の成績、三賞力士らの活躍を中心に振り返る。

元年〜3年 4年〜6年 7年〜9年 10年〜12年 13年〜15年
  16年〜18年 19年〜21年 22年〜24年 25年〜27年 28〜31年


平 成 廿 二 年

締りB 伯仲D 接戦C 躍進D 人気D


  優勝者 成績(決定) 次点(差) V争い ドラマ レベル 白熱  
初場所 朝青龍 13-2(14) 白鵬、豊響(1) 抜け出し A C C V25残し風雲児が去る
春場所 白 鵬 15-0(千) 把瑠都(1) 一騎打ち A A B 一人横綱がデッドヒート制す
夏場所 白 鵬 15-0(13) 阿覧(3) 大独走 C B D 白鵬「黄金」時代 初の連続全勝
名古屋場所 白 鵬 15-0(14) 阿覧,鶴竜,豊真(4) 独走 B B C 異例の場所 白鵬3連続全勝
秋場所 白 鵬 15-0(14) 豪風(3) 独走 B B C 千代も超えた 無敵白鵬また全勝
九州場所 白 鵬 14-1(決) 豊ノ島(同) 混戦 AA A B 63連勝でストップも切り替えて5連覇

注) (決定)は、優勝決定時を表す。「13」、「14」等は決定日。千秋楽決着は、「決」、「巴」、「C」、「D」が決定戦(人数で分類)。「相」は前日まで相星、「直」は1差の相手と対戦して、本割で決定。それ以外の決定は「千」。

顔触の変化 初場所  九州場所
横綱 朝青龍、白鵬 白鵬
大関 魁皇、琴欧洲、琴光喜、日馬富士 魁皇、琴欧洲、日馬富士、把瑠都
三役 把瑠都、(千代大海)、豊ノ島、稀勢の里、安美錦、琴奨菊、鶴竜、栃煌山、白馬、栃ノ心、阿覧
新入幕 隠岐の海、徳瀬川、磋牙司、臥牙丸、蒼国来、旭南海
引退 朝青龍、千代大海、玉力道、大真鶴、北桜、琴光喜、海鵬、岩木山、土佐ノ海

<この一年>  一人横綱白鵬が63連勝 賭博事件に揺れる角界を支える

 不祥事と大記録が印象に残る年。一人横綱白鵬に「おんぶに抱っこ」の一年だった。
 初場所、順調に飛ばした朝青龍が白鵬を振り切って25回目の優勝。往年の安定感はなくなっても、持ち前の勝負強さで二強時代を演出していくかに思われた。ところが場所中の暴行事件の真相が明らかになり、詰め腹を切らされた。
 突然ライバルを失った白鵬だが、一人横綱となってさらに凄みを増す。春場所から4場所連続の全勝優勝という大記録を残す。連勝は自己記録の33を更新、平成1位の朝青龍の35、大鵬・千代の富士も上回って年6場所制下の新記録に達した。九州場所、63連勝でストップしたが、この1敗に止め、自身初の5場所連続優勝。年間勝利も連続で86勝をマークした。その過程は平坦ではなく、野球賭博事件では自身も軽微な賭博を認めて謝罪。名古屋場所では天皇賜杯辞退という異例の事態に心を痛めたが、相撲振りは右四つ上手投げが冴えてまさに双葉の再来というべきものだった。

 ポスト朝青龍として次の横綱を期待する声も高まった。春場所14勝し大関となった把瑠都に期待が集まったが、昇進後成績はじり貧。大関2年目の日馬富士も見せ場なく、夏場に好スタートを続けた琴欧洲も復活とはならず、共に10勝がやっと。38歳になった魁皇は地元九州では13日目に白鵬と相星決戦を演じ最後の見せ場を作った。千代大海は大関復活を狙ったが3連敗で引退。同い年の琴光喜は野球賭博事件で地元名古屋場所を前に解雇。

 大物が相次いで去った一年だったが、把瑠都の昇進の他はブレイクする力士は出なかった。常連力士も三役に定着しきれず、新三役勢も勝ち越せなかった。程度の差こそあるが賭博事件に関与した力士も多く、強豪の豊ノ島、豪栄道が謹慎し陥落、若荒雄、松鳳山らのちの三役力士も遠回りを余儀なくされた。

 親方の世界も大変で、理事改選での貴乃花の乱により二所一門が分裂。賭博事件では武蔵川理事長が辞任。貴一派の大嶽が解雇、主犯を出した阿武松も厳しい処分を受けた。暴力団との関わりに対する目も厳しくなり、不祥事により木瀬部屋が閉鎖されるなど、処分の嵐が吹き荒れた。

私的年間表彰 該当力士 受賞理由
最優秀力士賞 白 鵬 63連勝含む連続の年86勝で5連覇。危機の角界の屋台骨を支える。
優秀力士賞 把瑠都 後半の失速は期待外れだが、一時は新ライバルに浮上。
殊勲賞 該当なし 昨年の全場所に続き4場所で該当なし。
敢闘賞 把瑠都 初場所白鵬破り12勝、春場所14勝で大関昇進。
技能賞 該当なし 毎場所受賞者は出るが、決め手欠く。
カムバック賞 該当なし 強いて言えば6年ぶりの12勝、魁皇くらいか
最優秀新人賞 徳瀬川 恵まれた体で大関も倒し、地味ながら上位進出

<選考理由>把瑠都は大関としての成績を考えると優秀賞も微妙だが、最初の2場所の活躍が効いた。その2場所だけの活躍で敢闘賞。それ以外の賞は候補はいるが決め手に欠いて選考が困難。殊勲賞は九州の稀勢の里が連勝を止める大金星を挙げて受賞しているものの、それ以外の場所では期待はずれで10勝が1回では年間表彰に届かない。秋に関脇で11勝した栃煌山が一番大関に近づく活躍だったが、これも単発。複数受賞者では、連続敢闘賞の阿覧は上位相手には通用せず、変化ばかりの相撲が目立った。九州で2賞受賞し決定戦に出た豊ノ島も謹慎処分などで幕内での勝ち越しは2場所のみ。カムバック、新人とも有力候補が不在だった。2年前に1場所幕内経験のある白馬が再入幕から新三役に躍進したが、どちらにもはまりきらなかった。


<廿二年初場所> 抜け出し ドラマA レベルC 白熱度C

 朝青龍 北の湖超えV25も、場所中の不祥事で引退へ 

 前半戦は混戦模様。5日目朝青龍に土がつくと、7日目に白鵬も把瑠都に初めて敗れる。1敗は両横綱に琴欧洲、日馬富士の2大関、そして殊勲の関脇把瑠都が並んだ。把瑠都台風は止まらず、1敗の2大関も連破したが、小兵豊ノ島に止められた。11日目、2敗に後退しての直接対決は、朝青龍に軍配。スピードで圧倒し、つかみ投げるような下手投げに巨体が宙を舞った。今場所も三つ巴とはならず、両横綱の対決に絞られるかと思われたが、白鵬がまさかの自滅。日馬富士の変化、魁皇のとったりの奇襲に簡単に泳がされ連敗。大関陣を難なく退けた朝青龍が、久々に楽日を待たずゴールテープを切った。横綱対決では本割7連敗を喫したものの、またも白鵬に連覇を許さず二強時代の看板に偽りはないことを証明した。
 ところが、場所後に大騒動。場所中に深夜飲み歩き、マネージャーを殴って負傷させた件は収束していたはずだったが、真相は一般人への暴行だったことが判明。虚偽申告をしていたこともあって横審からも引退勧告同然に詰問され、ついに任意引退に追い込まれた。

 昨年通してわずか4敗の白鵬はいきなり3敗を喫して東京場所4連続のV逸。大関は日馬富士10勝、琴欧洲、魁皇9勝に収まったが、琴光喜は1勝しかできずに8日目から休場。関脇把瑠都は脱落後も粘り、12勝を挙げて大関取りへ大きく前進した。琴奨菊、鶴竜の両小結は負け越した。殊勲賞は把瑠都が初めて受賞。中位で11勝の安美錦に5度目の技能賞、幕尻で12勝の豊響は3度目の敢闘賞を獲得。

 11年ぶりの関脇に落ちても大関復活に挑んだ千代大海だが、初日から3連敗で引退。最後の相手は、長年共に大関を張った魁皇。しかもこの勝利で師匠千代の富士の幕内通算勝利数を上回るという劇的な一番だった。


<廿二年春場所> 一騎打ち ドラマA レベルA 白熱度B

 一人横綱白鵬 重責果たす全勝優勝 把瑠都14勝で大関へ

 朝青龍の電撃的引退で突如一人横綱となった白鵬。ライバルを失った際には号泣していたが、重荷に耐えるだけの器は十分備わっていた。初日から危なげなく勝ち進む。これに負けじと全勝で並走する力士もいたが、琴奨菊は6日目魁皇に敗れて白鵬戦も完敗し脱落。No.2の東大関に座る日馬富士は中日にその琴奨菊に土をつけられた。下位で8連勝の時天空も脱落していった。残ったのが大関を目指す把瑠都。危ない相撲も何度かあったが、スケールの大きさを発揮して連勝街道。遂に11日目白鵬との全勝対決を迎えた。四つに渡り合ったが、熱戦の末技術に勝る白鵬が上手投げを決める。大一番で横綱の力を見せつけられた把瑠都だが、気持ちを切らさず追撃、日馬富士、雅山と2敗勢との厳しい取り組みも制し、14勝1敗の好成績。しかし横綱はそれ以上の気迫で4大関を圧倒、全勝優勝で逃げ切った。

 大関は終盤つぶしあって4人とも8〜10勝に収まった。大関を総なめした把瑠都は、敢闘・技能両賞を土産に文句なしの昇進。同じく好発進だった関脇豊ノ島は得意の上位戦に勝てず6勝どまりで陥落。序盤負けの込んだ両小結、稀勢の里と安美錦は立て直し、関脇復帰を決めた。


<廿二年夏場所> 大独走 ドラマC レベルB 白熱度D

 白鵬敵なし全勝 黄金まわしで輪島に並ぶV14

 横綱白鵬は危なげなく勝ちっぱなし。先場所同様新大関となった把瑠都が並走、「白把時代」と気の早い見出しも踊ったが、中日に鶴竜に敗れると、大関にも連敗して大きく後退。これにはわざわざ横綱の対戦順を後回しにしようとした審判部も失望。結局1日遅れの12日目に3差で白鵬戦が組まれ、これを押し出した白鵬が優勝に王手をかけ、翌13日目も琴光喜を小手投げに下して早々と優勝を飾った。残り2日、14回目の優勝で並んだ横綱輪島にあやかって黄金のまわしを締めて登場。17年春の朝青龍同様、期間限定の幻の締め込みで2場所連続の全勝優勝を彩った。

 5大関がひしめく中、全員勝ち越しとはいえ、終盤に潰し合って横綱の独走を許した。失速した新大関把瑠都の10勝のほかは、4人が9勝で並んだ。三役陣も大した活躍はなく、関脇稀勢の里と小結琴奨菊が勝ち越し。関脇復帰の安美錦、小結栃煌山は負け越して陥落となった。

 三賞は、敢闘賞に12勝の阿覧と、千秋楽勝ち越しながら、2日目から4日連続で大関を破った2枚目栃ノ心。栃ノ心同様新三役を手中にした白馬は2大関を破って10勝ながらなぜか三賞からは漏れた。自己最高位の5枚目ながら2敗で追う日馬富士を破るなど小兵らしい相撲を見せており、なぜ技能賞が該当なしなのか甚だ疑問だった。

 場所中に暴力団と関わる野球賭博に関して大関琴光喜が事情聴取を受けるという事件があった。渦中の大関は何とかカド番を脱出、千秋楽は把瑠都を鮮やかな下手投げで転がしたが、これが最後の一番となった。野球賭博事件は角界を覆う黒い霧となり、胴元になった下位力士のほか琴光喜と年寄大嶽が解雇。関与した多数の親方、力士が謹慎処分となった。不祥事続きの角界、ついに本場所に大きな影響を与えるほどの事件に見舞われた。


<廿二年名古屋場所> 独走 ドラマB レベルB 白熱度C

 大鵬超える46連勝 白鵬3場所連続全勝優勝

 野球賭博事件の処分で大関が解雇、幕内6人、十両4人が謹慎全休。NHK中継も異例の中止となり、穴だらけの場所となった。激震の中でも、大型連勝中の白鵬は初日から白星を重ねていく。期待の把瑠都らは早々と脱落したが、大関では琴欧洲、平幕では鶴竜と豊真将が初日から連勝を続けた。1敗稀勢の里を退けて7連勝とした琴欧洲に期待が掛かったが、中日鶴竜との全勝対決に敗れるとその後はずるずると後退した。8連勝とした6枚目の鶴竜は9日目白鵬に挑戦したが、胸を合わされて40連勝目を献上、その後は勢いが止まった。10日目まで並走した豊真将も、鶴竜、琴欧洲に連敗。13日目は稀勢の里を破って優勝決定を延ばしたが、14日目に力尽きた。白鵬は中日時天空の下手投げに傾き、10日目稀勢の里の寄りに俵に詰まったが、危ない相撲を拾って連勝を伸ばす。投げで決める相撲が目立ったこの場所、稀勢の里を掛け投げに下したのを皮切りに、琴奨菊をすくい投げ、琴欧洲を上手投げ、そして日馬富士を掬い投げに転がし大鵬超え46連勝。千秋楽は把瑠都を力相撲の末に上手投げに下し全勝。文字通り三役力士をちぎっては投げ、6場所制下での3場所連続全勝という史上初の快挙達成。しかし天皇賜杯は辞退となり、涙した。

 琴欧洲は後半崩れ、2勝4敗から立て直した日馬富士に敗れて共に10勝5敗。中盤持ち直しかけた把瑠都は終盤沈んで8勝どまり。魁皇は堅調だったが故障で休場。大関が強かったわけでもないのに関脇小結は全員負け越し。前半好調の稀勢の里は上位に全敗、2大関を倒していた琴奨菊は平幕に落とし二桁黒星。新三役2人も、白馬4勝、栃ノ心6勝に留まった。三賞は平幕で11勝した3人に。先述の鶴竜技能賞、豊真将敢闘賞。そして中盤以降10連勝した2枚目の阿覧が2場所連続敢闘賞を獲得し、新三役を確実にした。


<廿二年秋場所> 独走 ドラマB レベルB 白熱度C

 4場所連続全勝優勝 どこまで続く白鵬の独走

 白鵬の連勝はどこまで続くのかに注目が集まった。期待どおり負けない白鵬、7日目難敵稀勢の里を押し出して54連勝。戦後、6場所制定着後1位の千代の富士の記録も破った。ここから双葉山の69までの間には、江戸・明治・大正期の伝説の横綱たちが並んでいる。9日目太刀山の56、11日目初代梅ケ谷の58に並び、そして超えていった。負けることを忘れた横綱に対抗すべき大関もまずまず前半は健闘。琴欧洲が先場所に続いて勝ちっぱなし。日馬富士や把瑠都、関脇栃煌山も1敗で続いた。しかし白鵬への挑戦前に崩れて結局は大差。優勝マジックは先場所同様平幕力士が対象となり、嘉風、豪風の尾車コンビが2敗で粘ったが、14日目で力尽きた(嘉風11勝、豪風12勝で揃って敢闘賞)。万全の相撲で大関陣も完封した白鵬は4場所連続の全勝。連勝は62まで伸びた。

 取りこぼしの減った琴欧洲は8連勝したが、天敵安美錦に止められ終盤4連敗で10勝どまり。他の3大関はいずれも鶴竜に敗れてから3連敗を喫し、二桁にも届かなかった。カド番の38歳魁皇は3勝4敗となったが、2大関を倒すなど盛り返し脱出。光ったのは23歳の関脇栃煌山で、3大関を破って11勝の星を挙げ、技能賞。大関候補に急浮上。26歳の新関脇阿覧は上位陣の前に屈し負け越したが、終盤連日の変化でブーイングを浴びながらも三役残留。はや24歳となった小結稀勢の里も相変わらず上位相手に目が出ず、14日目カド番脱出を賭ける魁皇に敗れて負け越し。再小結・25歳の鶴竜は、終盤平幕に連敗して二桁は逃したが、3大関倒し9勝。着実に力をつけつつある。

 老兵の目立った平幕上位だが、筆頭の31歳時天空2勝13敗、34歳若の里5勝10敗、3枚目36歳旭天鵬4勝11敗、5枚目34歳高見盛4勝11敗と奮わなかった。老兵と言えば、賭博事件による大量陥落で幕内、十両の枠ががら空きとなって超幸運昇進が続出。36歳栃乃洋が6枚目9勝で余裕の幕内復帰、39歳手前の土佐ノ海が7枚目8勝ながら最年長再入幕、11枚目8勝の36歳豊桜も9枚目の入幕。32歳旭南海は12枚目で10勝だが、苦節105場所史上2位のスロー入幕を果たした。一方、謹慎で陥落した一人である雅山は元大関としては大受以来の十両での土俵。12勝で再入幕を決めた。豊ノ島、豪栄道も圧倒的な成績で復帰へ。


<廿二年九州場所> 混戦 ドラマAA レベルA 白熱度B

 止まってからが綱の真価 63連勝横綱が5連覇 再入幕豊ノ島、決定戦進出

 一人横綱となって一度も負けない無敵白鵬。中日まで勝ちっぱなせば神聖不可侵の双葉山の記録を突破し、70連勝の新記録となる。初日小結栃ノ心を上手投げに一蹴し谷風と並ぶ63連勝とした白鵬、もう上には双葉しかいない。2日目、白鵬には人一倍ライバル意識を燃やす稀勢の里が相手。馬力相撲の相手を組み止めたが、相手得意の左四つ。先に上手を許して防戦に回ると、止まらない波状攻撃に正面土俵へ追い詰められ、怒涛の寄りに俵で踏ん張る間もなく土俵下まで転落。まさかの波乱で新記録の夢は潰えた。双葉山が3連敗し、大鵬が途中休場した連勝後の喪失感の大きさ。しかし白鵬はここでも強さを見せた。1敗で大関把瑠都、魁皇、平幕豊ノ島らと並走。13日目、ご当所での奇跡の復活優勝を夢見る大声援を受けた魁皇の挑戦を退け、2敗把瑠都も寄り切った。再入幕の豊ノ島は、把瑠都、関脇鶴竜、魁皇も下して1敗を死守。千秋楽は稀勢の里を逆転で破って14勝1敗。顔の合わないまま優勝は譲れない白鵬、琴欧洲を下して決定戦に持ち込んだ。業師の健闘が期待されたが、立ち合いで白鵬が差し勝って圧勝。自身初の5連覇を達成。年間勝利も史上最多をマークした昨年に並ぶ86勝とした。

 大関は、優勝争いに加わった魁皇12勝、把瑠都11勝。復調の気配を見せていた琴欧洲は、序盤で3敗、勝ち越し後4連敗で8勝どまりと低迷期に逆戻り。初日から3連敗の日馬富士は途中休場で停滞の一年を終えた。大関レースを期待された両関脇は、ともに序盤を1敗と上々の立ち上がりながら7勝8敗と負け越した。栃煌山は中盤泥沼の7連敗。阿覧、栃ノ心の両小結も陥落。

 平幕に落ちた稀勢の里は世紀の大金星の勢いで10勝、文句なしの殊勲賞。野球賭博事件による十両落ちから復帰した力士が戻り、その一人豊ノ島は敢闘、技能ダブル受賞。豪栄道も12勝したが、当然とばかり選考漏れ。今回ばかりは文句は言えない。

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平 成 廿 三 年

締りC 伯仲C 接戦C 躍進B 人気D


  優勝者 成績(決定) 次点(差) V争い ドラマ レベル 白熱  
初場所 白 鵬 14-1(14) 琴奨,豪栄,隠岐(3) 逃げ切り C C C 白鵬6連覇 稀勢以外には90連勝
春場所 中 止           八百長事件 中止は昭和21年以来
技量審査場所 白 鵬 13-2(千) 鶴竜、栃ノ心(1) 逃げ切り B C C 朝青龍以来2人目の7連覇なる
名古屋場所 日馬富士 14-1(14) 白鵬(2) 突き放し B C B 日馬連覇止める 魁皇新記録残し引退
秋場所 白 鵬 13-2(決) 琴奨菊、稀勢(1) 競り勝ち A B A 白鵬V奪回 惜敗琴奨和製大関復活
九州場所 白 鵬 14-1(14) 若荒雄(2) 大独走 B C C 白鵬独走 稀勢10勝でも大関へ

 

顔触の変化 初場所  九州場所
横綱 白鵬 白鵬
大関 魁皇、琴欧洲、日馬富士、把瑠都 琴欧洲、日馬富士、把瑠都、琴奨菊
三役 (琴奨菊)、稀勢の里、鶴竜、栃煌山、豊ノ島、豪栄道、栃ノ心、阿覧、豊真将
新入幕 栃乃若、魁聖、宝富士、安、大道、富士東、舛ノ山、芳東、隆の山、
妙義龍、松鳳山、佐田の富士、碧山、剣武
引退

(白字は解雇)

春日錦、北勝力、普天王、徳瀬川、白馬、春日王、光龍、猛虎浪、琴春日
蒼国来(のち復帰)、将司、豊桜、境澤、霜鳳、星風、旭南海、安壮富士、若天狼、
清瀬海、千代白鵬、保志光、十文字、山本山
魁皇、玉乃島

<この一年>  春場所中止の衝撃 白鵬揺るがずも和製大関が連続昇進 

 初場所、63連勝の余韻冷めやらぬ白鵬の独走は年を越しても相変わらずで、大鵬、朝青龍に続く6連覇を達成した。
 2月、前年の野球賭博事件を上回る衝撃が角界を揺るがした。いわゆる八百長事件である。野球賭博事件の調査の中で見つかった力士同士の八百長をうかがわせるメールのやり取りが明らかになり、当事者数名がこれを認めた。放駒理事長は全容解明まで本場所は開かないという方針を打ち出し、3月春場所は異例の中止。前年7月名古屋で危ぶまれた最悪の事態が現実となった。3月から4月にかけて、力士の処分が続々発表され、20名以上の現役力士や年寄数名が引退勧告を受けて土俵を去り、受け入れなかった数名は解雇処分となった。ほとんどは当時の十両力士間で行われた八百長が対象で、ベテランやモンゴル勢が多かった。厳しい批判にさらされ、一時は大相撲の存在意義すら危ぶまれる事態だったが、3月に東日本大震災が起こり、世間は角界に対する追及どころではなくなった。力士らも被災地の慰問に奔走し、必死に信頼を取り戻そうと活動。忘れられたわけではないが、確実に世論の集中砲火は緩んだ。すべてが明らかになったとも、処分されたものがクロだったとも断言できない(のちに幕内蒼国来の解雇は無効判決)が、ともかく決着は図られたとして、本来夏場所が行われる5月には、技量審査場所と称した入場無料の場所を行い、7月は名古屋場所を通常開催するに至った。
 3か月のブランクを挟んで開催された技量審査場所、白鵬は朝青龍に並ぶ7連覇。一人横綱として精力的に慰問活動を行い、八百長事件での処分で多くの同胞が不本意な形で土俵を去った。心労は相当のものだったと思われ、実際終盤には2敗を喫したが、見事大記録をまたひとつマークした。その褒賞となるはずの天皇賜杯だが、もちろん本場所ではないためその手に抱くことはなかった。
 ついに名古屋場所では連覇がストップ。8連覇の新記録はならなかった。しかしそこで崩れることなく、9・11月を再び連覇で締めて面目躍如。どん底から立ち上がる角界の先頭には、やはり白鵬の姿があった。

 ようやく白鵬から賜杯を奪い返した日馬富士だが、2度目の綱取り場所もあっけなく失敗、以後勝ち越しがやっとの大関に逆戻り。魁皇も1047勝の大記録を残してついに引退。把瑠都、琴欧洲も伸び悩んだままで綱取りレースは盛り上がらなかったが、大関をめぐる争いは稀に見る激戦となった。63連勝阻止で男を上げた稀勢の里は一皮むけ、これ以上先を越されたくない琴奨菊も奮闘。両者初場所を関脇で二桁を記録。春は水を差されたが、続く5月。稀勢の里は8番に終わったが、琴奨菊は連続の二桁を記録し挑戦権を獲得。さらに12勝した小結鶴竜が割り込み、名古屋は近年稀な3関脇となり、揃って二桁を記録する。なかでも琴奨菊は10勝2敗としながら平幕に連敗しての11勝で大関目前。稀勢の里、鶴竜は10勝、秋場所は3人ともが昇進の目安とされる3場所33勝の可能性を残して迎えた。蓋を開ければ琴奨菊が12勝で再挑戦成功、稀勢の里は二桁で足固め、直前3場所の星では一番上だった鶴竜は9勝に留まって一歩後退した。九州では稀勢の里が3場所連続の二桁を記録し、大関昇進に成功。魁皇引退で不在となった日本人大関が2人続けて誕生した。この場所鶴竜は10番で再挑戦となるが、すでに5大関が埋まって条件は厳しくなった。稀勢の里が直前10勝どまりの3場所32勝で昇進したことについては、名古屋の琴奨菊が同成績で見送られていること、鶴竜の4場所前の12勝が全く考慮されていないこととの不均衡も指摘され、直前3場所の数字が独り歩きする傾向に批判もあった。それ以外の候補者は、豪栄道が3度、豊真将が2度二桁勝利を挙げたが、前年浮上しかけた栃煌山ともども三役では勝ち越せず。三役に定着した豊ノ島も二桁には乗せられず。これまでの群雄割拠から、やや差が開いた一年となった。引退力士の分、大量に幸運な昇進力士も生まれたが、そのチャンスを生かして上昇気流に乗った力士も。超軽量・隆の山などは1場所で十両を突破して土俵を盛り上げた。

私的年間表彰 該当力士 受賞理由
最優秀力士賞 白 鵬 5場所中4場所制覇。難局にも動ぜず7連覇達成。
優秀力士賞 琴奨菊 年間2位の55勝。単発優勝の日馬上回る安定感で大関昇進。
殊勲賞 稀勢の里 殊勲賞2回。連勝ストッパーが白鵬キラーぶり発揮し大関へ。
敢闘賞 琴奨菊 殊勲、技能各2回。精神面と向き合い大関へ。
技能賞 鶴 竜 受賞は夏に1回も、地力備わり成績安定。
カムバック賞 該当なし 5年ぶり三役復帰決めた雅、2年ぶり優勝日馬などはいたが...
最優秀新人賞 栃乃若 着実に番付を上げ、上位初挑戦の九州で2大関破る。

最優秀は文句なし。優秀賞は、白鵬から賜杯を奪った日馬富士としたいところだが、8−7が3場所あっては大関として優秀どころではない。平均11勝と安定していた琴奨菊が先輩大関を差し置いて浮上。2場所続けて大関取りに挑み、注目度も高かった。三賞は、激しい大関争いを演じた3人で決まり。いずれも敢闘賞の受賞はなかったが、総合的に判断して振り分けた。カムバック賞は昨年に続いてこれはという力士がおらず。新人賞も微妙だったが、新入幕でいきなり9連勝で敢闘賞の魁聖がその後ブレーキで印象悪く、地味ながら大器ぶりを見せて後半浮上した栃乃若を推した。通算勝利数を更新し引退の魁皇は功労賞と言ったところか。


<廿三年初場所> 逃げ切り ドラマC レベルC 白熱度C

 稀勢の里にまた苦杯も 白鵬余裕の逃げで史上3人目の6連覇 

 平幕上位の活躍は少なく、比較的上位陣がまとまった星で前半を乗り切った、中日を終えて全勝は白鵬、1敗に把瑠都、琴欧洲、関脇の琴奨菊、2敗日馬富士、3敗魁皇という役力士の成績である。後半戦にかけて、把瑠都、琴欧洲は取りこぼして後退、琴奨菊、日馬富士は直接対決で沈んだ。後続に2差がついて独走態勢を築きかけた白鵬。ところが11日目、先場所63連勝をストップされられた稀勢の里にまたも不覚を取った。3人が1差となったのも束の間、琴欧洲と幕尻36歳栃乃洋は脱落して2敗勢は平幕隠岐の海一人。よく粘ったが、14日目稀勢の里に当てられ終戦(11勝で敢闘賞)。結びで把瑠都を鮮やかな掬い投げで下した白鵬が、千秋楽を待たず6場所連続優勝を決めた。

 立ち上がりまずまずの大関陣も結局白鵬に1差以内で挑戦するまでには至らず。4人とも勝ち越したが、10勝したのは琴欧洲だけ。大関以上の存在感を示したのが両関脇で、先場所に続いて白鵬に唯一の土をつけた稀勢の里が10勝し連続殊勲賞。琴奨菊は千秋楽敗れたものの11勝で技能賞。大関昇進レースの火蓋が切って落とされた。他の大関候補たちも負けてはいない。東小結栃煌山は負け越したものの2大関に土をつけ、西小結鶴竜は4連敗スタートながら琴奨菊、琴欧洲に痛い1敗を与えて立て直して勝ち越し。前場所14勝の前頭筆頭豊ノ島は、勢いにのって初日把瑠都を破るも7連敗、そこから7連勝で勝ち越す底力を見せた。豊真将も2大関食いで勝ち越し、豪栄道は11勝を残した。そのほか、大負けはしたものの、上位初挑戦の玉鷲は2大関を破り、阿覧は把瑠都を真っ向吊り出す剛力を示した。優勝争いはあっけなかったが、若手の躍動が見られた場所だった。


<廿三年春場所 中止    

 前代未聞 不祥事で本場所中止

 2月に発覚した八百長メール事件への対応のため、年6場所制が定着して以来、初めて本場所中止された。年間成績を比較するこのページからしても大迷惑である。

 聞き取り調査が行われ、多数の力士に引退勧告がなされた。ベテラン、大学相撲出身力士、モンゴル人力士が多数。前頭筆頭に進んでいた徳瀬川や、前年新三役の白馬など有望力士も含まれ、ベテランでは霜鳳、豊桜、年寄谷川(前年引退した元小結海鵬)の三賞経験者まで。モンゴル以外にも韓国出身春日王、中国出身蒼国来も認定。谷川、蒼国来、星風は勧告を受け入れず、解雇となったが、大多数の力士は認めはしなかったが、部屋への迷惑などを理由に引退届を提出した。千代白鵬などメールの当事者で事実を認めた力士は調査に協力をしたことから司法取引のような形で減刑され、2年間の出場停止処分となったものの、当然ながら引退届を提出した。

 春場所の番付は、1月場所後に十両昇進力士が発表されていたものの、当然定例の番付発表はなされなかった。この番付をベースにして引退・解雇力士除き、5月場所は「番付」ではなく、「順席」として公示された。7月場所では5月の成績を基にして番付が作成されたが、大幅な空白を埋めることが困難として、幕内・十両の定員は9月場所にかけて段階的に復枠することとされた。それでも22年秋場所以上の大量の空き枠が発生し、負け越した力士が昇進するなど異常な現象が起こった。


<五月技量審査場所> 逃げ切り ドラマB レベルC 白熱度C

 異例ずくめの場所も白鵬 史上最長タイ7連覇

 もちろんテレビ中継もなく、照明も暗い。無料開放とあって客層も違う。異常事態のなかで行われた5月技量審査場所。序盤、あっけなく敗れた把瑠都が「遊びの場所みたい」と不謹慎発言で注意を受けたが、確かに力士にとってはモチベーションの保ち方の難しい場所となった。とはいえ、白鵬の7連覇と両関脇が大関への足固めをするかという目玉はある。白鵬は順調に白星を並べていく。これを追うべき大関と関脇だが、序盤から苦しんだ。大関を荒らしたのは前頭筆頭まで戻ってきた豪栄道。白鵬には敗れたが、序盤だけで4大関を倒した。さらに、小結鶴竜。2大関相手に連敗スタートだったが、両関脇に豪栄道ら大関候補のライバルを次々下して猛追する。稀勢の里は黒星先行の苦しい展開。不振の力士を横目に把瑠都、琴奨菊が2敗で終盤を迎えた。白鵬を倒せば一気に大関取りもと意気込む琴奨菊が挑戦したが、返り討ち。対戦成績1勝26敗では大関は期待できない。お得意様の日馬富士にも敗れて脱落した。頑張っていたのは平幕2人。新入幕の魁聖が9連勝の快進撃。これをストップさせた栃ノ心が1敗で追っていたが、12日目鶴竜に敗れて2差に後退。いつもの白鵬独走ムードになったが、13日目日馬富士に敗れる。調子に乗る栃ノ心は2敗把瑠都、琴奨菊も破って猛追。千秋楽は日馬富士戦が組まれたが、大関の速攻に屈して優勝決定。白鵬は珍しく結びを落としたものの、7場所連続優勝を記録した。ライバル不在が改めて浮き彫りとなったが、稀勢の里以外に昨年初場所以来の黒星を喫した。稀勢の里がいなければ100を超える大連勝となっていただけに、終盤の2敗は多少変調を窺わせた。

 大関は琴欧洲が惨敗で途中休場、魁皇は9勝だが白鵬を破って通算1044勝目。不滅の大記録と言われた千代の富士の1045に王手をかけた。把瑠都は好スタートも終盤息切れ、日馬富士は後半力を見せたが前半の取りこぼしが響きどちらも10勝に留まった。琴奨菊は千秋楽把瑠都を破り大きな10勝目、稀勢の里は辛くも勝ち越し。小結鶴竜は終わってみれば1差の12勝(技能賞)。大関争いに食い込んだ。三役復帰の豊ノ島は前半泥沼にはまり5勝10敗。

 豪栄道は3場所連続平幕で二桁勝利という珍記録。11勝で技能賞。12勝の栃ノ心と新入幕10勝の魁聖に敢闘賞。13日目まで3敗につけた土佐豊は最後鶴竜、豪栄道に連敗して三賞見送り。活躍力士が多すぎた。


<廿三年名古屋場所> 突き放し ドラマB レベルB 白熱度B

 日馬富士が8連覇阻止   魁皇1047勝残して引退、琴奨菊大関後継ならず

 半年ぶり通常開催となった名古屋は見どころの多い場所になった。まず序盤の注目は魁皇。千代の富士の通算1045勝まであと1。しかし1勝が遠く3連敗。4日目豊ノ島を破り1位タイ、そして5日目旭天鵬も力相撲で下して新記録を樹立した。しかし黒星先行が続くと周辺が騒がしくなり、10日目琴欧洲との一番を最後に引退した。39歳という戦後最年長大関、在位も千代大海と並ぶ史上1位だった。他の大関は好調で、日馬富士が勝ちっぱなし、把瑠都1敗、琴欧洲2敗で中盤は推移した。
 史上初の8連覇を目指す白鵬はもちろん勝ちっぱなし。これに土をつけたのが、もうひとつの目玉である大関取りを狙う琴奨菊。初日豊ノ島に敗れたあと7連勝で全勝日馬富士に挑むも返り討ち。大事な場所に限って相性の良いライバル二人に敗れてしまったが、1敗把瑠都を下した勢いで大の苦手を撃破した。トップに立った日馬富士、久しぶりの好調は後半になっても翳りはなく、13日目2敗把瑠都を退けて白鵬との14日目決戦に臨む。自力で並びたい白鵬だったが、勢いに乗った日馬富士の攻めに圧倒され完敗。連覇の新記録達成はならず。

 白鵬に続いて大関を争う難敵鶴竜も寄り切った琴奨菊は10勝2敗、残り3日は平幕相手。くしくも同郷の魁皇に代わる日本人大関誕生は確実かと思われたが、隠岐の海、若の里にまさかの連敗。何とか3場所32勝としたものの精神的な弱さを露呈して心証悪く、昇進は見送られた(殊勲賞獲得)。他の2関脇は揃って10勝。稀勢の里は5勝5敗と出遅れたが、終盤巻き返し千秋楽は日馬富士の全勝を阻止し貴重な二桁(三賞なし)。鶴竜は淡々と白星を重ねたが、ライバル2関脇に敗れた。小結に復帰した豪栄道、栃ノ心は見せ場なく三役陥落。三賞は9枚目ながら11勝の豊真将にも与えられた。2日目から8連勝の快進撃を見せた平成生まれ初の新入幕・高安は、終盤崩れて三賞ならず。


<廿三年秋場所> 競り勝ち ドラマA レベルB 白熱度A

 白鵬、2関脇の猛追かわしV奪回 琴奨菊今度こそ大関昇進

 綱取りが期待された日馬富士、しかし2日目隠岐の海に不覚を喫すると前半で4敗し白紙に戻り、8番に終わった。琴欧洲は1勝しかできず途中休場。把瑠都、関脇鶴竜も出遅れて、全勝で走る白鵬に食い下がるのは琴奨菊、稀勢の里の2関脇だった。まず中盤の関脇潰し合い。中日琴奨菊は鶴竜に土をつけられ、翌日稀勢の里も土。10日目1敗対決は相性の良い琴奨菊が制した。11日目、稀勢の里は不振の日馬富士にも敗れ3連敗。追い上げていた把瑠都も同じ2敗の臥牙丸の押しに不覚、琴奨菊も栃煌山に屈し2敗。鶴竜の挑戦を退けて2差をつけた白鵬の独走かと思われた。ところが一旦萎んだ日本勢が大きな仕事。稀勢の里、琴奨菊がおっつけ、がぶりと持ち味を発揮して横綱を引きずり込んだ。2敗で並んだ琴奨菊は日馬富士も圧倒して大関当確、これで安心したか、千秋楽はすでに5敗の把瑠都に捕まって3敗に後退。稀勢の里は3敗を守り、白鵬敗れれば巴戦となったが、日馬富士に先場所の勢いはなく、立て直した白鵬が2場所ぶりの優勝を飾った。賜杯を抱くのは初場所以来。

 珍しい3関脇体制は、琴奨菊が先場所のくやしさを晴らして昇進(殊勲、技能)。2場所の成績では最も大関に近かった鶴竜は序盤のもたつきが響き9番に終わった。代わって先場所の10勝に続き12勝をマークした稀勢の里がリーチ(殊勲賞)。小結豊ノ島はこの年2度目の1勝7敗から勝ち越し。阿覧は7連敗スタートが響いて5勝どまり。三役空き枠は1つ。両前頭筆頭が勝ち越したが、3大関破り10勝の東・豊真将が悲願の新三役。昇進相当の成績で何度も不運に泣いてきたが、その役回りは西・隠岐の海に引き継がれ、この後何度か番付運に泣き新三役を逃す。2日目から10連勝、大関戦も組まれた200キロ超の巨漢・臥牙丸に敢闘賞。負け越したが新入幕隆の山も100キロを切る体で大技を決めて盛り上げた。


<廿三年九州場所>  大独走 ドラマB レベルC 白熱度C

 白鵬13日目でV決定  稀勢の里逆境乗り越え大関昇進

 日本人大関が復活。しかもこれまで熱狂的な魁皇コールが響いた福岡で、ご当所の大関誕生という奇縁である。騒動明けとあって観客動員は芳しくなかったが、琴奨菊は期待に応えて9連勝スタート。白鵬との並走が続いた。しかし10日目、大関戦初戦で把瑠都に止められると、栃乃若のはたきにも落ちるなど4連敗で脱落。今場所11勝で大関取り目安と言われる33勝に乗る稀勢の里は、苦手琴欧洲との1敗対決を制すが、早々に崩れた日馬富士に屈す。10日目は2差で白鵬に挑んだが返り討ちに遭った。もう白鵬を脅かす者はいない。13連勝で早くも優勝を決めてしまった。千秋楽把瑠都の叩きに落ちて全勝は逃したが、角界混迷の年を圧勝で締めくくった。王者は不動。

 鳴門部屋をめぐる疑惑、さらに渦中の師匠の急死という喧騒の中、稀勢の里は10勝5敗。千秋楽の相撲を待たずに審判部が理事会招集を要請。結果敗れて3場所32勝に留まったが、1年前に白鵬の63連勝を止めて以来の安定感を買われた。ただ、12、10、9、10勝と並べた関脇鶴竜を差し置いての昇進には批判もあった。4大関はスタートダッシュの琴奨菊、尻上がりの把瑠都が11勝。琴欧洲9勝、日馬富士は連続の8勝で綱取りはどこへやら。小結豊ノ島は3大関破り9勝、新小結豊真将は4勝どまりで平幕に逆戻り。平幕中下位は三賞候補が多数で、新入幕の妙義龍と松鳳山が共に10勝、34歳雅山も久しぶりに11勝したが、結果は稀勢の里に技能賞、12勝の若荒雄と新入幕11勝の碧山に敢闘賞となった。

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平 成 廿 四 年

締りC 伯仲B 接戦B 躍進B 人気D


  優勝者 成績(決定) 次点(差) V争い ドラマ レベル 白熱  
初場所 把瑠都 14-1(13) 白鵬(2) 抜け出し B B C 把瑠都初優勝 13日目に決める
春場所 白 鵬 13-2(決) 鶴竜(同) 一騎打ち A B A 白熱の決定戦 鶴竜昇進で6大関
夏場所 旭天鵬 12-3(決) 栃煌山(同) 大混戦 AA D AA 平幕決定戦 37歳が初優勝
名古屋場所 日馬富士 15-0(相) 白鵬(1) 一騎打ち B AA A 楽日全勝決戦 大関が制す
秋場所 日馬富士 15-0(直) 白鵬(2) 一騎打ち A A A 連続全勝の快記録で横綱昇進
九州場所 白 鵬 14-1(14) 豪栄、豊島(3) 独走 B C C 白鵬復活 九州は6連覇

 

顔触の変化 初場所  九州場所
横綱 白鵬 白鵬、日馬富士
大関 琴欧洲、日馬富士、把瑠都、琴奨菊、稀勢の里 琴欧洲、把瑠都、琴奨菊、稀勢の里、鶴竜
三役 (鶴竜)豪栄道、妙義龍、豊ノ島、雅山、若荒雄、安美錦、臥牙丸、栃煌山、豊真将、栃ノ心、碧山
新入幕 千代の国、天鎧鵬、旭秀鵬、鳰の湖、勢、千代大龍、皇風、旭日松、常幸龍
引退 栃乃洋、M錦、垣添、剣武、琉鵬、黒海

<この一年>  6大関時代に日馬急浮上 30連勝で綱取りなる 本命把瑠都まさかの陥落  

 白鵬の調子が上がらなかったことで、綱を目指す動きが活発になり、大波乱も起こった。
 初場所、白鵬が3敗を喫して全勝把瑠都が13日目に初優勝を決める。春場所も千秋楽まで先行を許した白鵬は、大関を狙う鶴竜を何とかねじ伏せて逆転優勝。しかし同じ相手に連敗するあたり本調子ではなかった。そして6大関となった夏場所、中盤に3連敗を喫した白鵬はついに休場かと騒がれた。大関稀勢の里が一時後続に2差をつけて初優勝が見えたが、まさかの後退で大混戦となり、史上初の平幕決定戦の末に37歳旭天鵬が史上最年長初優勝。翌場所は白鵬が持ち直したが、大関日馬富士も譲らず29年ぶりの楽日全勝決戦。これを制した日馬富士は、勢いに乗って翌場所も連勝街道まっしぐら。1敗で追う白鵬との千秋楽再決戦も物にして、大関以下では貴乃花以来の連続全勝。これまでの不振続きを以ってしても文句のつけようのない成績で横綱レースを制した。
 対照的だったのが把瑠都で、綱取り場所は終盤に来て乱調。その後は二桁に届かず、さらに秋、九州と連続で途中休場して大関陥落。3場所続いた6大関時代は、不安定な大関日馬富士が圧倒的な成績で昇進、成績・地力ともに誰もが筆頭と認めていた把瑠都が陥落。明暗分かれて4大関に落ち着いた。その4大関では稀勢の里が9勝が1場所の他、ずっと二桁の安定感。ただ、夏以外は最終盤まで優勝争いに絡むことはなかった。琴奨菊、鶴竜も昇進前の勢いはなく、琴欧洲は春場所以降二桁に届かず。

 絶対王者白鵬はここ数年の圧倒的な力は見せられず、ついに衰退かと騒がれたが、最後に得意の九州場所では4場所ぶりの優勝を圧勝で飾り、健在をアピール。大乱調の夏も指の骨折を抱えながら10勝まで戻し、千秋楽まで優勝の可能性を残していた。ここで休んでいたら、さまざまな連続記録もストップするところだったが、絶不調時でも乗り切る心の強さを示した。

 昨年激しい大関レースを繰り広げた3関脇が相次いで昇進し、ぽっかり穴が開いた三役の地位。構成は流動的になったが、最後に豪栄道が関脇定着。春場所で勝てば優勝の鶴竜を圧倒した期待のホープは、九州では11勝を残してようやく大関へと足固めを始めた。豪栄道とは同部屋の妙義龍も新関脇でいきなり10勝で名乗りを上げ、決定戦を経験した栃煌山も安定しつつある。早くも次の大関レースが火蓋を切っている。

私的年間表彰 該当力士 受賞理由
最優秀力士賞 日馬富士 白鵬と並ぶ優勝2回。不安定でも連続全勝、31連勝の価値揺るがず。
優秀力士賞 白 鵬 優勝2回、年間勝利は最多も覇者後退の危機に立つ。
殊勲賞 鶴 竜 初、春と白鵬に連勝し、連続殊勲、技能も1で大関昇進。
敢闘賞 栃煌山 夏12勝で決定戦進出。殊勲敢闘各1回。
技能賞 妙義龍 入幕1年で4度受賞。素晴らしい膝の角度でスピードある押し相撲光る。
カムバック賞 旭天鵬 奇跡の初優勝で、5年ぶりの敢闘賞も。二桁3回は見事。
最優秀新人賞 妙義龍 早くも技能賞常連。上位定着し新関脇二桁、大関候補に。

 白鵬、日馬富士が優勝2回で並ぶ。総合成績では白鵬が上、日馬富士は二桁3回という不安定さがマイナスだが、やはり昇進時の勢いはフロックとは言えない。全勝決戦も制し、印象点で上回った。6年ぶりに最優秀を譲った白鵬も、まだ王者の座は明け渡さない。変則的な二強の構図だ。三賞は、鶴竜、妙義龍は文句なし。豪栄道、栃煌山が各2回で並び、関脇に定着しながらという点では豪栄道だが、決定戦進出の印象点、白鵬戦の殊勲度で栃煌山を選出。敢闘賞には、優勝した旭天鵬、再入幕11勝の舛ノ山も挙げたいところだった。特に舛ノ山は心肺機能の問題と戦いながらの奮闘で、まさに敢闘賞もの。妙義龍がいなければ新人賞にも挙げたかった。


<廿四年初場所> 抜け出し ドラマB レベルB 白熱度C

 把瑠都13連勝で初優勝 欧州勢2人目の賜杯

 1横綱5大関となった新年の場所、序盤1横綱3大関が全勝で乗り切る。新大関稀勢の里も1敗でまとめたが、琴奨菊は五分の星が続く苦しい場所となった。日馬富士、琴欧洲は中盤で2敗を喫し、優勝争いは全勝の白鵬と把瑠都を1差で稀勢の里が追う展開となった。10日目、白鵬に土。殊勲者は、大関レースで後れを取った関脇鶴竜。技能を発揮し初めて白鵬に勝った。チャンスが広がった1敗稀勢の里だが、相星で挑んだ白鵬には退けられた。12日目、把瑠都が稀勢の里を脱落させると、結びで白鵬が日馬富士に敗れ2差。そして13日目、把瑠都は琴奨菊も寄せ付けず全勝を守ると、白鵬は琴欧洲にも敗れて3敗。あっけなく把瑠都の初優勝が決まった。変調の白鵬、千秋楽に一矢報いて全勝を阻むのが精いっぱいだった。大関昇進後2年、停滞が続いた未完の大器がついに目覚めた。

 白鵬は12勝で3連覇を逃す。日馬、稀勢11勝、琴欧10勝。琴奨菊も千秋楽給金、5大関そろって勝ち越した。関脇鶴竜は初の殊勲賞受賞も若荒雄、高安に敗れて10勝どまり。関脇復帰の豊ノ島、5年ぶり三役雅山と新三役若荒雄は二桁の黒星を喫し陥落。栃煌山との11勝3敗同士の取組を制した臥牙丸に敢闘賞、5枚目で9勝の妙義龍は上位戦はないものの美しい膝の角度から繰り出すスピード相撲が光って技能賞。4人の新入幕のうち、千代の国が派手な相撲で沸かせて9勝したが、途中休場で三賞のチャンスをフイにした。


<廿四年春場所> 一騎打ち ドラマA レベルB 白熱度A

 白鵬辛勝V22 鶴竜逆転許すも大関へ

 上位はまずまず揃ったスタートを切ったが、「大関2場所目のジンクス」とでも言おうか、先場所の琴奨菊に続いて稀勢の里が序盤から躓き、終盤まで五分五分の星が続いた。その稀勢の里には敗れたが、快進撃を見せたのが関脇の鶴竜。連続10勝という最下限ながら大関挑戦権を得ていたが、9日目優勝争いをリードする白鵬に土をつける。把瑠都、日馬富士と好調の2大関も倒している関脇は、波に乗って1敗で走る。綱取りを目指す把瑠都も1敗で並走、横綱へ向けて終盤の上位対決に臨んだが、すでに脱落の佐渡ヶ嶽の2大関に連敗。その把瑠都に2敗日馬富士も引きずり降ろされて、2人に絞られた。横綱と関脇の並走は、13日目白鵬が稀勢に馬力負けして後退。鶴竜は4大関を撃破してV王手、千秋楽の豪栄道戦に挑んだ。前頭6枚目とはいえ3敗と好調、敢闘賞もぶら下げられた実力者は、強烈な張り差しからの速攻で意地を見せ、把瑠都を下した白鵬との決定戦に。立ち合いからすぐ右四つがっぷり。苦しい鶴竜は強引に巻き替え、白鵬が定石通り寄り詰める。これを鶴竜は驚異的な粘りで堪える。さあ得意の両差しで反撃と思われた刹那、白鵬は休まず内掛け、次いで両上手で捻りながら体を浴びせて、重ね餅。辛勝の末に他力逆転を果たした白鵬は、貴乃花に並ぶ歴代5位の22回目の優勝。

 中盤まで堅調だった把瑠都は10勝どまりで初の綱取りは失敗。最後に脱落した日馬富士だが、久しぶりに11勝をマーク。あとの3大関は二桁に届かなかったが、優勝争いに影響は与えた。鶴竜は13勝で殊勲、技能。3場所33勝として、史上初の6人目の大関の座をこじ開けた。2大関を倒し11勝の豊ノ島にも技能賞。33歳の関脇安美錦は2大関破るが1点負け越し。北の湖部屋初の三役・200キロの臥牙丸は上位に歯が立たず6勝、栃煌山は序盤大関連破もまたまた中盤、泥沼にはまった。5枚目11勝の豊真将は候補乱立で三賞こそ届かなかったが、あれほど遠かった三役に再昇進。

 2月に再選された貴乃花理事が急遽春場所担当として精力的に活動したことが大きく報道されたが、土俵も熱かった。


<廿四年夏場所>  大混戦 ドラマAA レベルD 白熱度AA

 旭天鵬史上最年長初優勝 栃煌との平幕決定戦制す

 1横綱6大関。史上初めての上位構成で迎えた2年ぶりの夏場所は、白鵬の不振で思わぬ展開となった。まず火蓋を切ったのは小結安美錦、初日白鵬、4日目把瑠都と優勝候補に土をつける。これに続いて嵐を呼んだのは、境川トリオだった。新鋭妙義龍が前半で4大関を破ると、豊響、豪栄道の同期も相争うようにインタビュールームに駆け込む活躍。豊響の初金星に続いて豪栄道も初めて白鵬を破った。小結豊ノ島の首投げにも沈んだ白鵬は3連敗で5勝4敗。左手指を骨折しており、休場は必至かと見られたが、ここから大関相手に意地を見せる。優勝争いは、いずれも妙義龍に敗れただけの1敗で折り返した3大関が中心となるかと思われたが、9日目の1敗対決で稀勢の里に敗れた琴奨菊は、把瑠都にも屈して脱落。鶴竜も安美錦に2敗目をつけられると上位戦で沈んだ。同じく1敗だった平幕栃煌山も10日目から旭天鵬、豊ノ島に連敗し、11日目を終えて1敗稀勢の里が2差をつけてトップ。日本人力士6年ぶりの優勝は確実かと思われた。 ところが、翌日栃煌山の速攻に屈すると、白鵬戦も落としてリードを失う。3敗で大関稀勢の里、平幕栃煌山、旭天鵬が並んで残り2日。大関陣は次々脱落、4敗も平幕隠岐の海、碧山、そして白鵬が再浮上した。14日目、旭天鵬は琴欧洲を投げ飛ばし、栃煌山は鶴竜に快勝。稀勢の里も不調の日馬富士を下して連敗を止め、4敗勢も3人とも踏ん張って6人が可能性を残し、千秋楽へ。ところが琴欧洲が前日の相撲で故障し休場したため、栃煌山の不戦勝が決まって4敗勢は自動的に消えた。旭天鵬は関脇豪栄道に逆転勝ち、決定戦進出。しかし、本命稀勢の里は苦手把瑠都を追い詰めながらあと一歩押し切れず脱落。決定戦は、史上初めて平幕対決となり、いきなり叩いた37歳旭天鵬が本割に続いて栃煌山を下し、記録ずくめの最高齢優勝を果たした。

 白鵬は終盤大関を次々圏外に沈め、あわや3差逆転かというところまで立て直し連続二桁勝利を継続。千秋楽その白鵬に大関で唯一勝った日馬富士は、何とか勝ち越し。琴奨菊10勝のほか、他の3大関は結局一桁。6大関はそれぞれ合口の悪さを克服できず潰し合い、横綱不調の好機を生かせず。三役以下も同様で、殊勲賞の豪栄道にしても8勝どまり。関脇豊ノ島、小結安美錦は、一人蚊帳の外の三役豊真将に敗れるなど取りこぼして1点負け越し。1横綱2大関を倒した豊響も5勝どまりだった。新三役を決めた妙義龍は技能賞、決定戦進出の両者に敢闘賞が贈られた。最後まで粘った11勝の碧山ら、候補者多数の激しい場所だった。


<廿四年名古屋場所> 一騎打ち ドラマB レベルAA 白熱度A

 29年ぶり14連勝対決 日馬富士が3回目の優勝

 1横綱6大関はまずまずのスタート。白鵬、把瑠都、日馬富士が7連勝の立ち上がり。琴奨菊、琴欧洲が1敗、稀勢の里と鶴竜が2敗で追う。中日からは直接対決もあり星が割れ始める。把瑠都は新三役妙義龍に土をつけられると、日馬富士との直接対決にも敗れるなど急失速した。白鵬、日馬富士はともに譲らず、食い下がる他の大関陣を駆逐。12日目には後続に3差をつけて完全に一騎打ちの体制に入った。審判部も本来12日目に会うべき直接対決を温存。両者期待の応えて勝ち進み、ついに14連勝同士で千秋楽決戦となった。昭和58年の隆の里―千代の富士戦以来5例目、横綱と大関では初めての頂上決戦となる。立ち合い、今場所冴えていた左上手狙いに成功した日馬富士が、終始白鵬に上手を許さず、上手投げからの寄りで大一番を制した。先場所は8勝、左手首の故障を抱えて突き押しを減らしたが、スピードに乗った右四つ左上手の取り口が冴えて初めての全勝優勝を飾った。

 日本人大関2人は10勝、外国勢3人は9勝。今場所もカド番は出なかったが、白・馬、両雄に大きく水を開けられた。期待の同期生両関脇は、豪栄道が肋骨骨折で無念の途中休場、7勝7敗1休。決定戦の余韻が残る栃煌山は、旭天鵬に雪辱したものの上位を一人も倒せず4勝どまり。両小結は共に2大関を破ったが、妙義龍8勝(技能賞)、豊ノ島5勝と明暗。栃煌山も落差がひどかったが、先場所優勝した旭天鵬は初日から1つも勝てず、平幕下位に当ててもらってようやく14日目に初日を出した。11勝の魁聖と舛ノ山に敢闘賞。もちろん殊勲賞は該当なし。


<廿四年秋場所> 一騎打ち ドラマB レベルA 白熱度A

 日馬富士連続全勝で横綱へ 今度は1差対決白鵬を返り討ち

 3度目の綱取りとなるモンゴル人大関は、過去2回つまづいた序盤戦を無難に乗り切る。独走は許すまじと競り掛けたのは、3年半一人横綱に君臨してきた白鵬、そして出世争いで後手を踏んでいた大関稀勢の里、平幕22歳の高安、先々場所の覇者38歳旭天鵬。5人もが無傷で折り返した。大関では鶴竜も1敗でつけていたが、他の3大関は故障のため前半戦で途中休場となった。後半戦、稀勢の里は平幕に2敗、鶴竜も後退。またも横綱との並走が続くかに思われたが、10日目白鵬が栃煌山の肩すかしにあっけなく落ちた。3大関戦が消えたために組まれた取組が番狂わせを起こした。日馬富士は止まらない。1敗高安、高安に土をつけた2敗隠岐の海の挑戦を退け、食い下がる2大関も寄せ付けず綱への道をひた走る。そして1差のまま2場所連続千秋楽での決着へ。一世一代の勝負は、怒涛の当たりから懐に入り、粘る白鵬を必死に攻める。そして足を押さえながら連続で投げを打ち、ついに横綱の牙城を崩した。気が付けば31連勝という平成3人目の記録を打ち立てて、双葉山、貴乃花に続く連続全勝。これまでの不安定さから厳しい条件をつけられながら、文句なしの横綱昇進となった。

 千秋楽大関戦は10勝4敗同士、鶴竜が勝って初めて東の正位を獲得。またも夢半ばで潰えた稀勢の里は最後は3連敗だった。先場所7勝ながら関脇残留の豪栄道は、平幕に3敗して8勝どまりと目立たず。同部屋の大関候補の停滞をよそに、新関脇に躍進した妙義龍は10勝。大関は鶴竜しか倒さなかったが、また技能賞を受賞した。新三役碧山は上位を脅かすことなく4勝11敗、栃ノ心4度目の小結もお決まりの6勝9敗。大金星の栃煌山が殊勲賞。敢闘賞は受賞者なし。11勝の隠岐の海、9連勝スタートで10勝の旭天鵬がスルー。10勝の高安はもう1番勝てば受賞だったが、同じ平成生まれの舛ノ山に攻め負けて好機を逸した。前半活躍した候補者が終盤に失速で印象が悪いとはいえ、敢闘賞0は場所自体の評価を不当に下げてしまうので考えものだ。


<廿四年九州場所>  突き放し ドラマB レベルC 白熱度C

 白鵬4場所ぶり賜杯奪還 新横綱は急失速5連敗

 大型連勝で綱取りを成し遂げた日馬富士、このまま覇者交代と行きたかったが、2日目隠岐の海に逆転負けして連勝は32でストップした。それでも立て直して1敗で白鵬を追撃。9日目は全勝・豪栄道の寄りに土俵際に詰まったところで審判がストップ。足が出たとされたが、実は踏み越しておらず異例の「やり直し」。ハプニングの一番にも勝ち、翌日は1敗に並ぶ平幕豊ノ島も下し、1敗豪栄道、2敗稀勢の里もそれぞれ後退したため、今場所も白鵬とのマッチレースが期待された。11日目、日馬富士は琴奨菊の叩きにばったり。直後白鵬も琴欧洲に十分の形を許して完敗。再び1差で12日目、日馬富士は連敗で2差に後退。13日目、やはり2差の稀勢の里が白鵬に挑戦するが叶わず、日馬富士も不調の鶴竜に敗れて3連敗となって上位陣が完全脱落。最後まで残った平幕の旭天鵬が琴奨菊に敗れて14日目の本割を待たずして、白鵬の優勝が決まった。他力逆転優勝が1度だけという苦しい一年だったが、最後には大差をつけての九州6連覇で締めくくった。対照的に尻すぼみの新横綱は終盤5連敗で二桁にも届かず。早速横審からバッシングを浴びた。

 3大関が休場明けのカド番。初日は勝った把瑠都が2日目松鳳山に圧倒されて慢性的に悪い膝をひねり、連続休場に追い込まれた。初場所を制して横綱目前と言われた大器は、一転大関陥落の憂き目にあった。琴欧洲、琴奨菊は初日から敗れて心配されたが、ともに同じような星取り。6日目には大関同士の一番が組まれるなど厳しい取り組み編成もあったが5連勝と立ち直り、中盤連敗して暗雲が漂ったものの、横綱戦を勝って楽になった。それでも9、8番とギリギリの脱出。他の2大関もパッとせず、稀勢10勝、鶴竜9勝に終わる。

 8連勝スタートで覚醒かと期待された豪栄道は日馬富士との後味の悪い一番を落とした後4連敗。最後に踏ん張って11勝として3度目の技能賞。先場所新関脇ながら10勝で豪栄道に先行した妙義龍は、まさかの10日目で負け越し。1横綱2大関相手に3連勝と復調したが6勝どまり。安美錦は珍しく序盤の上位戦で負けが込み、最後持ち直したが1番届かず。三役再昇進の豊真将はまた4勝に終わった。序盤で3大関を破る活躍を見せた28歳の新鋭・松鳳山は10勝に乗せて敢闘賞、新三役確定。筆頭栃煌山、優勝争いを引き伸ばした旭天鵬、新入幕の千代大龍は10勝したが、三賞落選。優勝次点の豊ノ島は候補にも挙がらず。相変わらず厳しい。

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