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平成相撲

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平成の相撲史を紐解く。いつものようにデータ形式で必要と思われる情報を整理。

普通の優勝力士表では見られない、優勝争いの流れや2番手の力士がわかるようにした。

あわせて場所の内容を3つの基準で評価した。

1年ごとの顔ぶれの変化がわかるように表に整理したので参考にしていただきたい。

横綱大関は昇進順。三役は年内の在位場所数を重視。新入幕と引退は時系列。

場所の内容は、優勝争いと上位陣の動向、三役力士の成績、三賞力士らの活躍を中心に振り返る。

元年〜3年 4年〜6年 7年〜9年 10年〜12年 13年〜15年 16年〜18年 19年〜21年 22年〜24年 25年〜27年


平 成 十 三 年

締りC 伯仲B 接戦B 躍進B 人気B


  優勝者 成績(決定) 次点(差) V争い ドラマ レベル 白熱  
初場所 貴乃花 14-1(決) 武蔵丸 (同) 一騎打ち A A A 横綱決戦 貴乃花復活優勝
春場所 魁 皇 13-2(千) 貴花、武丸、武双(1) 三つ巴 B B A 魁皇混戦招くも千秋楽踏ん張る
夏場所 貴乃花 13-2(決) 武蔵丸(同) 競り勝ち AA C B 貴乃花 痛みに耐えて感動V
名古屋場所 魁 皇 13-2(14) 武蔵丸(1) 競り勝ち C C B カド番魁皇 2場所ぶり賜杯
秋場所 琴光喜 13-2(14) 栃東(1) 逃げ切り B C C 琴光喜平幕優勝 上位壊滅 
九州場所 武蔵丸 13-2(14) 栃東(1) 突き放し B C C 綱の意地 7場所ぶり優勝

注) (決定)は、優勝決定時を表す。「13」、「14」等は決定日。千秋楽決着は、「決」、「巴」、「C」、「D」が決定戦(人数で分類)。「相」は前日まで相星、「直」は1差の相手と対戦して、本割で決定。それ以外は「千」。

顔触の変化 初場所  九州場所
横綱 曙、貴乃花、武蔵丸 貴乃花、武蔵丸    
大関 千代大海、出島、武双山、雅山、魁皇 千代大海、武双山、魁皇
三役 栃東、若の里、栃乃洋、琴光喜、隆乃若、朝青龍、和歌乃山、玉乃島、(出島、雅山)
新入幕 朝青龍、玉力道、若孜、濱錦、北桜、光法、武雄山
引退 、安芸乃州、栃乃藤、大飛翔、敷島、智ノ花

<この一年>  貴感動Vも長期離脱 新世紀の覇権いまだ定まらず

 3横綱5大関の豪華上位陣だが、その時代は長く続かず。年の前半は上位陣が高いレベルで争った。貴乃花、武蔵丸、さらにようやく本格化した魁皇らが綱を掴むかと期待されたが、相次ぐ故障により羅針盤が狂った。前年大復活を遂げた曙が、膝の悪化を初場所突如引退。初場所で2年ぶりの賜杯、夏場所も制した貴乃花も場所中膝に重傷を負って以後7場所に渡る長期離脱を強いられた。長い不振から立ち直った両雄が不在。武蔵丸も勝負弱く、大関陣にとっては綱取りの好機だった。ところが、出島、雅山はカド番場所で負傷し立て続けに大関陥落。2度の優勝を果たした魁皇も、2度の綱取り場所を腰痛で棒に振った。千代大海も休場、公傷を繰り返し皆勤は2場所のみ。飽和していた上位力士も出場しているのはわずかという状況になってしまい、秋には平幕優勝を許す体たらく。ようやく九州を武蔵丸が納め、新大関も誕生となったが、いまだ軸は定まらないままだった。

 三役はすっかり顔ぶれが入れ替わった。ベテランが衰え、大暴れしていた土佐ノ海ら中堅も不振。初場所で三役昇進した琴光喜、若の里、栃東ら25歳を迎える昭和51年生の力士の活躍が目立った。初場所新関脇で10勝した若の里や三役で連続三賞の栃乃洋らに期待が集まったが、経験不足か成績は不安定。大関争いを制したのは故障で停滞していた栃東。三役に復帰すると、名古屋から10,12,12番。優勝争いにも加わって遂に親子二代の悲願が叶った。平幕優勝を果たした琴光喜(佐渡ヶ嶽部屋からは4度目の平幕優勝)、初場所の入幕から気風の良い相撲で上位も食った朝青龍と、技能・スピード自慢の力士達が躍進、大型化時代に新たな波を起こす気配。

私的年間表彰 該当力士 受賞理由
最優秀力士賞 該当なし 最多勝武蔵はV1のみ。V2の貴、魁皇も休場がち。
優秀力士賞 魁 皇 大関で2度の優勝、腰痛に泣き綱取りを棒に振る。
殊勲賞 若の里 若の里は殊勲2、敢闘1、優勝候補を苦しめ三役定着。
敢闘賞 朝青龍 3場所目にして武蔵から金星。殊勲1、敢闘2と躍動。
技能賞 琴光喜・栃東 かたや技能賞3度に初優勝。こなた技能賞2度、連続12勝で大関昇進。
カムバック賞 和歌乃山 朝青との三賞賭けた対決制し新三役。長い幕下低迷を乗り越えた。
最優秀新人賞 朝青龍 初場所新入幕、5場所で候補に挙がる大躍進。

<選考理由>前半は貴乃花とハイレベルな争いを演じた武蔵丸だが、勝負弱さを露呈し九州でやっと優勝するに留まる。年間73勝は悪くないが、2人に優勝回数を上回られては最優秀とは言いがたい。貴乃花は後半を棒に振り、魁皇も2度の綱取りで途中休場と失望させては2年連続の優秀どまりか。三賞は琴光喜のほか3人が拮抗してもつれ、技能賞は2人となった。初・春と三役で連続三賞の栃乃洋は急に失速。逆にその2場所で千秋楽勝てばの条件を逃した新入幕朝青龍は、3場所目で早くも金星を挙げ殊勲賞を獲得。以後常連に。
 和歌乃山は19歳で入幕しながら長く低迷、ようやく復活してついに三役となった苦労人。琴光喜もこの年の新人みたいなものだが、前年に繰り上げている。


<十三年初場所> 一騎打ち ドラマA レベルA 白熱度A

 貴乃花 新世紀飾る復活優勝 決定戦で宿敵破る

 曙はヒザの悪化で全休。5大関は序盤で脱落、優勝争いは両横綱が全勝で走り完全に一騎打ちの展開に。近年にないハイレベルなレースとなる。13日目、武蔵丸は若の里の素首落とし(この場所から追加された決まり手)に落ちて1差。貴乃花は武蔵川勢の援護射撃をかわして全勝で千秋楽の決戦となった。丸2年優勝から遠ざかっている貴乃花、全勝での復活を狙ったが前褌狙いで腰が引けるところをあっけなく突き落とされた。最近合口の悪い武蔵丸との再戦、今度は右四ツとなり、武蔵丸の右腕の返しをうまく外して浅い上手を取り直し、終始攻めて遂に寄り切った。10年9月以来の復活優勝、通算21回目となった。不振の大関陣、何とか2差で追った魁皇も跳ね返されて10勝。武双、雅は辛うじて勝越し、出島は負越し、千代大海は途中休場。

 新関脇若の里は10勝して2場所連続の殊勲賞。小結栃乃洋は3大関を破って技能賞。新三役を決めた和歌乃山、千秋楽新入幕朝青龍との三賞を賭けた取組を制し敢闘賞。新三役の琴光喜、隆乃若は先場所の勢いなく4勝に終わった。

 場所直後、横綱曙が引退を発表。度重なるケガに耐えて前年2度の優勝、年間最多勝と完全復活を果たしたかに思われたが、ヒザの悪化で気力が限界に達した。平成5年、当時空位だった横綱に外国人として初めて昇進。当初の圧倒的な強さは2年目の故障以後陰を潜め、二子山勢や武蔵川勢に苦しめられ続けたが、最後に復活して燃え尽きた。


<十三年春場所> 三つ巴 ドラマB レベルB 白熱度B

 魁皇 2度目の優勝 横綱を窺う

 先場所は曙が引退、14勝1敗同士の決定戦で貴乃花が2年ぶりに優勝で、二強時代到来と期待されたが、大関も黙っていなかった。3日目、両横綱に相次いで土。武蔵丸は12日目に3敗、魁皇が12連勝で先頭。1敗で貴乃花、2敗で武双山が追った。しかし、魁皇の前に両横綱が立ちはだかった。13日目、優勝が絶望的となった武蔵丸が一矢報いる。この日武双山に敗れて2敗となった貴乃花だが、14日目魁皇を下して遂に捕えた。3人が並んで千秋楽。まずは2敗同士の大関決戦、上り調子の武双山に対して、魁皇は開き直ったかのように思い切った相撲で得意の右上手から豪快な投げで連敗を止めた。そして結びの一番、決定戦に持ち込みたい貴乃花だったが、武蔵丸が差し身良く両方のぞかせて圧勝。魁皇は初優勝の時と同じように相星の横綱が敗れて優勝が決まった。

 直接対決では存在感を示した両横綱だが賜杯を逃し12勝の相星。2大関は頑張ったが、千代大海は公傷全休、雅山は14日目朝青龍に敗れ負け越し、出島は千秋楽三賞のかかった朝青龍を下し何とか勝越し。貴乃花を破った関脇栃乃洋と、武蔵川4人衆を総なめした小結栃東に殊勲賞。大関への足固めが期待された関脇若の里、幕下低迷から復活して新入幕から9年で新小結の苦労人・和歌乃山は6勝に終わった。平幕に落ちた琴光喜も勢いを取り戻し武蔵丸らを下して10勝で技能賞。再入幕で11勝した玉ノ洋改め玉乃島はその名に恥じない活躍で敢闘賞。


<十三年夏場所> 一騎打ち ドラマAA レベルB 白熱度A

 鬼の形相 貴乃花22回目の優勝 右ひざにあまりに大きな代償 

 さあ綱取りと意気込んだ魁皇。しかし持病の腰痛がひどく4敗を喫して途中休場に追い込まれた。序盤から荒れ模様、その主役は新小結の朝青龍で、初日武蔵丸を皮切りに武双山、魁皇、千代大海も破った。再小結の琴光喜も4大関を破る。旋風に呑まれず圧勝した貴乃花が全勝、千代大海が1敗、武蔵丸、雅山が2敗で追った。雅山を退けて1差のまま13日目、千代大海が挑戦したが、貴乃花は突き押しに下がらず受け止めて、引き瞬間を完璧に捕えて寄り切った。後続に2差をつけた貴乃花、優勝をかけて武双山戦に臨んだが、廻しを引きつけきれないまま強引に寄るところ、強烈な巻き落としに右ひざを捻って崩れ落ち、重傷。結びの2敗対決は武蔵丸が千代大海を組み止めて制し、千秋楽横綱の1差対決に持ち込んだ。しかし貴乃花は出場が危ぶまれる状態。強行出場したが、痛めたヒザの関節が外れかけては自分で入れる、悲壮な仕切り。取りづらそうな武蔵丸が立合い右から叩くと、あっけなく落ちた。初場所に続いて横綱同士の決定戦となったが、それどころではない雰囲気。それでも出てきた貴乃花、やはり受身の武蔵丸に対して突いて出て先制、右四つ左上手を取って奮戦。タイミングよく左上手投げを決めて勝ってしまった。伝説の「貴、鬼の形相」はこの瞬間生まれた。

 大関は千代大海12勝、武双・雅山9勝、出島は二桁黒星と不振に陥っている。大暴れの両小結は二桁こそ届かなかったが、琴光喜技能、朝青龍殊勲。琴光喜は武双山戦で平成では初めての2度の水入り、取り直しを演じた。関脇は栃東が9勝、栃乃洋は大きく負け越した。武蔵丸から初金星の隆乃若も負け越し。前年春の覇者貴闘力は幕尻で負け越して10年以上守った幕内から陥落。

 貴乃花は横綱昇進後皆勤場所としては最も悪い10勝5敗。曙、武蔵丸も10勝止まり。両関脇の武双山、魁皇は負け越し。新小結千代大海は3連敗スタートから勝ち越した。三賞は、小結で10勝の安芸乃島に技能、横綱や若乃花らを倒した琴錦に殊勲。二人とも上位戦を終えて有利だったが、格下に取りこぼして賜杯には届かず。1横綱、2大関を破った小城錦も殊勲、平幕の二桁勝利、優勝争いに楽日まで加わった出島、新入幕・若の里に敢闘賞。


<十三年名古屋場所> 競り勝ち ドラマC レベルB 白熱度B

 魁皇2場所ぶり制覇 接戦、混戦、武蔵投げて勝ち取る

 貴乃花は右ひざの故障が重く、渡仏して手術。この後、同情から次第に批判に変わる7場所連続全休となった。

 カド番の2大関は対照的な結果となった。出島は蜂窩織炎を患って再出場もならず2年守った大関から陥落。一方、魁皇はストレートの給金で脱出した。一人横綱を務める武蔵丸がこれに並走。1敗で千代大海、武双山、小結の若の里らが追う好展開となった。9日目、魁皇は貴ノ浪、武双山は闘牙に敗れそれぞれ後退。11日目、唯一全勝の武蔵丸が若の里の掬い投げに敗れる。魁皇は玉乃島との1敗対決を制して再び並ぶが、千代大海は不調の雅山に敗れて2敗に後退。13日目、武蔵丸が2敗目。千代大海を破った魁皇が遂に単独トップに躍り出て、14日目直接対決を迎えた。喧嘩四ツ、差し勝って左四つ右上手を掴んだ魁皇が、強引に出る武蔵丸に十八番の上手投げを見舞って転がし、2場所ぶりの優勝を決めた。千秋楽は敗れたが13勝2敗で2場所ぶり3回目の優勝。再び綱取りに挑む。

 武蔵丸は12勝、千代大海11勝、武双山10勝。優勝争いには絡むが賜杯が遠い。雅山は負け越して2度目のカド番へ。関脇栃東は武蔵丸らを下し10勝で技能賞。役力士を食いまくって殊勲賞の若の里は優勝争いに加わったが、終盤4連敗と取りこぼした。その他の三役、琴光喜、朝青龍は負け越した。平幕は、12勝の玉乃島と11勝の時津海に敢闘賞。十両では、貴闘力が千秋楽敗れて9勝6敗で8人が並ぶ大決定戦となり、取り直しを含む8番の取組の結果、武雄山が優勝した。


<十三年秋場所> 逃げ切り ドラマB レベルC 白熱度C

 平幕・琴光喜、上位総崩れの中独走  出島に続き雅山も大関陥落

 今度こそと綱取りに挑んだ魁皇だったが、慢性化している腰痛に祟られ3連敗で途中休場。綱取りーカド番の繰り返しで抜け出せない。さらに千代大海、カド番雅山も故障で途中休場。そして一人横綱は金星5つを放出する大乱調。平幕琴光喜が序盤1横綱3大関を倒し、武双山に敗れただけの1敗で走った。8日目、やはり1横綱3大関を倒して1敗の朝青龍との相星対決を制し、あとは独走。武双山、栃東が3敗で追いかけたが差は縮まらず、14日目海鵬を得意の下手投げで豪快な投げ飛ばし初優勝を決めた。先場所関脇で6勝に終り平幕に落ちていたが、昨年11月以来の大勝ち。佐渡ヶ嶽部屋のお家芸を継承した。

 武蔵丸は横綱として自身最低の9勝。武双山も10勝、雅山は大関陥落、関脇に落ちた出島は5勝しかできず復活ならず。1横綱3大関を擁した武蔵川帝国は早くも崩壊した。関脇栃東は12勝して大関に王手。ただし勝ちにこだわった変化も多く、三賞なしと厳しい評価。小結の若の里、玉乃島は先場所の勢い続かず負け越し。三賞は、琴光喜が殊勲・技能(入幕7場所目で早くも4回目の技能賞)。平幕上位で二桁勝った朝青龍に敢闘、海鵬は技能賞。小兵海鵬は武蔵丸を潜って内掛けに破るなど、一世一代の活躍だった。


<十三年九州場所> 突き放し ドラマB レベルC 白熱度C

 武蔵丸1年ぶり賜杯  栃東V逸すも遂に大関

 優勝争いは、武蔵丸と大関取りの関脇栃東が初日から並走。これを平幕中位の旭鷲山、貴ノ浪、追風海が追った。やはり横綱・関脇の一騎打ちとなり、武蔵1敗、栃東2敗で迎えた14日目、直接対決となり、おっつけ合いから右を差した武蔵丸が重厚に出て寄り倒し。7場所ぶり9回目の優勝を決めた。貴乃花不在の中、ようやく横綱の重責を果たした。この一番で右足を痛めた栃東だが、千秋楽は武双山を叩き込み12勝目、念願の大関昇進が成った。3横綱5大関から役者が減り続けた一年、さらに魁皇も危ぶまれたが踏ん張り、逆に栃東が昇進して留まった。

 武双山は9勝、カド番魁皇は腰痛回復せず、黒星先行の苦しい展開ながら後半盛り返し10勝。千代大海は公傷休場。関脇復帰の琴光喜は前半取りこぼして9勝どまり。大関への足場を固めきれなかったことが来場所に影響した。雅山は公傷で、大関復帰の権利は持ち越し。新小結海鵬は好スタートも5勝に終わった。三賞は、正攻法を貫いた栃東に技能(7回目)、小結復帰で二桁の朝青龍、後半9連勝で二桁若の里、新入幕11勝の武雄山の3人に敢闘賞。36歳大善が金星を獲得、「今が全盛期」の名言を残すが、惜しくも負け越した。

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平 成 十 四 年

締りC 伯仲B 接戦B 躍進B 人気C


  優勝者 成績(決定) 次点(差) V争い ドラマ レベル 白熱  
初場所 栃東 13-2(決) 千代大海(同) 三つ巴 AA B A ゴーイチ組対決 栃東が逆転初V
春場所 武蔵丸 13-2(14) 魁皇(1) 突き放し C B C 休場明け武蔵丸 逃げ切り
夏場所 武蔵丸 13-2(14) 魁、千、朝青、北力(2) 逃げ切り C C C 武蔵丸余裕の連覇 曙に並ぶV11
名古屋場所 千代大海 14-1(千) 朝青龍(2) 一騎打ち B B B 千代大海3年半ぶり賜杯 朝青大関へ
秋場所 武蔵丸 13-2(相) 貴乃花(1) 競り勝ち AAA B A 武蔵丸リベンジ 復活貴を破る
九州場所 朝青龍 14-1(13) 隆乃若(3) 大独走 B C D 朝青龍独走 モンゴル勢初優勝

 

顔触の変化 初場所  九州場所
横綱 貴乃花、武蔵丸 貴乃花、武蔵丸
大関 千代大海、武双山、魁皇、栃東 千代大海、武双山、魁皇、栃東、朝青龍
三役 琴光喜、若の里、朝青龍、旭天鵬、雅山、貴ノ浪、栃乃洋、土佐ノ海、高見盛、隆乃若
新入幕 霜鳥、鳥羽の山、北勝力、春日錦、潮丸、岩木山
引退 朝乃翔、大至、寺尾、貴闘力、湊富士、肥後ノ海

<この一年>  新旧激突の年 武蔵丸存在感 朝青龍大躍進

 平成初期を支えた力士が最後の輝きを放った一年。昭和40年代生と50年代生のせめぎ合いが繰り広げられた。貴乃花の長期休場が続き、一人横綱の武蔵丸が故障を抱えながらも頑張る。大関の魁皇、武双山も優勝には届かないが力を示す。元大関の貴ノ浪や土佐ノ海らも上位を食って存在感を示した。若き大関千代大海と栃東は賜杯も抱いた。朝青龍と琴光喜、若の里の激しい大関昇進レースも展開された。武蔵丸が3回の優勝で最も横綱らしく、第一人者の存在感を示した。春、夏では大関との実力差を示し、秋は奇跡的な復活を果たした貴乃花との相星決戦を制し、曙を超える12回目の優勝を果たした。しかし、貴、武蔵ともにこれが最後の千秋楽の舞台となった。そろそろ新しい横綱が欲しいところだったが、栃東、千代大海の綱取りは新鋭・古豪の厚い壁の前に潰えた。大関レースは初場所惜しくも見送られた琴光喜が故障で脱落。若の里も不安定。スピード溢れる朝青龍が急成長し、名古屋場所後に大関昇進した。一年通じて課題だったのは休場の多さ。貴乃花は7場所連続の全休など、1場所しか出場せず。武蔵丸も故障がちで2場所休場した。名古屋場所では1横綱3大関など幕内10人、十両5人が休場してしまった。九州場所でも2横綱2大関がいなくなり、そのスキに抜け出した朝青龍が独走で13日目に優勝を果たす。結果的にこれがモンゴル人横綱独走時代の序章。あっけない独走に終わったこの場所のような展開が、次の時代にはスタンダードとなるとは思いもしなかった。

 初場所の主役となった51組。優勝経験のある千代大海、琴光喜、栃東に加え、鳴戸の両雄、若の里、隆乃若も三役で11勝するなど大関候補に名乗りを挙げた。その他、上位に定着して三賞も獲得した高見盛らも登場、人気上昇。元大関3人も故障さえなければ地力を示していた。世代交代も徐々に進行し、40歳目前まで頑張った寺尾、最年長初優勝の貴闘力のほか、金星も挙げた名脇役も土俵を去っていった。

私的年間表彰 該当力士 受賞理由
最優秀力士賞 武蔵丸 2場所休場も、3場所制して面目は保つ。復活貴に雪辱
優秀力士賞 朝青龍 右肩上がりに力をつけ、九州では初優勝。故障者続出の中最多勝。
殊勲賞 朝青龍 3場所連続受賞で大関昇進。
敢闘賞 隆乃若 未完の大器が小結で11勝、大関候補に名乗り。敢闘賞2度。
技能賞 該当なし 琴光喜もケガで不振長く、他の受賞者も単発。該当なし2場所。
カムバック賞 貴ノ浪 元大関が復調し上位へ。九州では初金星で約9年ぶりの敢闘賞。
最優秀新人賞 該当なし 三賞獲得の武雄山、霜鳥、北勝力らはいるが決め手欠く。

<選考理由>武蔵丸は初場所と九州で休場があったが、3度優勝を果たして一人横綱の重責を果たした。ここ数年間、一番地力があることを示した。年間最多勝の朝青龍は優秀賞。優勝1、同点1と復調した千代大海が優勝争いの点では上回るが、年を通じての活躍度がものを言った。三賞候補は朝青龍を残してもまだ不足。技能賞は2度12勝の琴光喜も挙がったが、大関見送り後のブレーキが目立ち、他候補もいなかった。新入幕勢も突き抜けた存在がおらず、入幕当初に活躍も尻すぼみで受賞にふさわしい力士がいなかった。


<十四年初場所> 三つ巴 ドラマAA レベルB 白熱度A

 三つ巴の争いは千秋楽逆転 新大関栃東親子V、全階級制覇 

 横綱最長タイの4場所連続全休となった貴乃花に続き、武蔵丸も序盤で休場し横綱不在。しかし3人の同い年生まれが激しいレースを展開して、穴を埋めるどころか世代交代を感じさせた。休場明けカド番の中卒千代大海、新大関の高校横綱栃東、そして2場所前に平幕優勝した大学横綱琴光喜である。揃ってストレートの給金。10日目、琴光喜が栃乃洋に、千代大海が海鵬に敗れる。翌日、直接対決は千代大海が琴光喜を圧倒し1敗に残った。すると12日目、脱落かと思われた琴光喜が全勝の栃東を破って息を吹き返す。栃東は魁皇にも敗れ連敗。1敗千代大海が逆転単独トップに立った。14日目、琴光喜が伏兵武雄山に不覚。脱落する。大関対決を乗り切った両雄の千秋楽決戦となった。本割、張り手混じりに細かく突っ張る千代大海、下からあてがい勝機を窺う栃東。千代大海が一度いなしてここぞと突くところ、栃東はこれを巧くいなして泳ぐところを押し出し、決定戦に持ち込んだ。それぞれ昭和50年代生まれの十両、幕内第一号を記録するなど出世争いを繰り広げた両者の激突。しかし勝負は一瞬。立合い千代大海の出鼻をいきなり突き落として栃東の逆転優勝。

 琴光喜に技能賞。平幕優勝(13勝)に続き、関脇で9勝、12勝として当然大関の声も上がったが厳しい見送り。決定戦進出なら印象点も稼げただけに、14日目の取りこぼしが痛かった。もちろんすぐに昇進するという目論見もあっただろうが――西関脇朝青龍は8勝に終わった。千秋楽ライバルに敗れたが、大関昇進なら5大関となり、枠がいっぱいで昇進に不利になるところだった。この当たりも天運を味方につけている。雅山は10勝で大関復帰の権利を放棄し全休。まだ24歳、将来を考えて治療を優先した。小結若の里は武蔵丸、魁皇を破るスタートも8勝止まり。旭天鵬は上位に通じず負け越し。平幕11勝の武雄山は連続の敢闘賞、同じく時津海は2回目の技能賞。遅咲き27歳武雄山は、新入幕から2場所連続二桁(8人目)を記録。


<十四年春場所> 突き放し ドラマC レベルB 白熱度C

 一人横綱武蔵丸貫禄のV10 昇進ねらう3人は総倒れ

 栃東、千代大海の綱取り、琴光喜の大関取りが注目された春場所。しかし総倒れに終わった。千代大海は腰痛でまさかの負け越し。琴光喜は早々に4敗、栃東も2敗を喫し、何とか持ちこたえていたが、千代大海が琴光喜に、琴光喜が栃東に引導を渡し合う形となった。休場明けの武蔵丸が快調に飛ばし、これを魁皇が追って、1差で迎えた13日目の直接対決。必死に崩そうと動く魁皇を落ち着いて構えた横綱がついに右をのぞかせ押し倒し。平幕隆乃若も後退して一気に後続を突き放した。14日目千代大海も圧倒して優勝を決めた。地力ではやはり横綱と大関の差は大きかった。

 栃東、武双山10勝、魁皇は12勝したが届かず。琴光喜は皇司戦でアゴを骨折、翌日何とか勝ち越して休場したが、出場したことが仇となって翌場所公傷が認められず。大関取りへ思わぬブレーキが掛かった。代わって朝青龍が11勝し大関へのきっかけを作る。序盤出遅れたが1横綱3大関に勝って殊勲賞、旋風を巻き起こす。小結若の里は9勝、久しぶり三役復帰の貴ノ浪、2大関に琴光喜を破るも負け越し。三役昇進は敵わず東筆頭となった上り馬・武雄山は故障で休場、勢いは削がれた。土俵際の魔術で武双山から初銀星の安美錦が10勝で技能賞、11勝の隆乃若に敢闘賞。前頭8枚目からの再スタートとなった元大関雅山は9勝。この場所も幕内6人十両2人が休場となったが、新入幕200キロの巨漢・鳥羽の山は初日当日に故障、番付に名を残しながらその後10年頑張るもついに幕内の土俵に立つ夢は叶わず。


<十四年夏場所> 逃げ切り ドラマC レベルC 白熱度C

 武蔵丸圧勝連覇 重責果たす 

 初日から武蔵丸と千代大海が勝ちっぱなし。ところが10日目から千代大海が大関相手に3連敗。2人に食いついていた平幕旭鷲山、出島も連敗して脱落した。武蔵丸の完全な独走態勢となり、優勝決定かという13日目には千代大海が一矢報いたが、14日目栃東を一蹴して2年半ぶりの連覇達成。間違いなく実力最強を見せつけたが、3回連続で優勝決定後の千秋楽を落としては締まらない。

 大関陣は前半取りこぼした魁皇と終盤バテた千代大海が11勝、栃東10勝、武双山は勝ち越したあと肩を外して休場。関脇朝青龍は3大関を破る11勝で敢闘賞、大関取りに王手をかけた。琴光喜は全休。小結若の里8勝、栃乃洋7勝止まり。多彩な決まり手で8連勝スタート、二桁勝った旭鷲山に技能。新入幕で11勝と健闘した北勝力に敢闘賞。この場所も休場者続出で関取では全休4人、途中休場5人。


<十四年名古屋場所>  一騎打ち ドラマB レベルB 白熱度B

 3年ぶり復活優勝 千代大海、大関取り朝青龍に競り勝つ

 さらに休場者が続出。貴乃花はヒザの回復不十分、7場所連続の全休。武双山も公傷で休み、強行出場した魁皇、左肩に重傷を負った栃東も序盤で途中休場となった。十両でも公傷休場5人いたが、平幕でも途中休場が相次いで穴ボコ状態となった。残った役者が頑張っての優勝争いは、初日から連勝の千代大海、朝青龍を、4日目栃乃洋に敗れた武蔵丸が追う展開。10日目、全勝の2人に土。三つ巴の争いになるかと思いきや、12日目から武蔵丸が連敗し脱落。首の不調で急に崩れて初の3連覇は潰えた。1敗で並走する両者の直接対決は13日目。激しい突っ張り合いから巧くいなした千代大海が、ここぞと右喉輪で怒涛の押し倒し。勢い余って朝青龍を飛び越して土俵下まで突っ込む激しい一番だった。14日目両者譲らず、朝青龍は武蔵丸を下して大関確実の12勝目。千秋楽、先に朝青龍が若の里に敗れて遂に決着。武蔵丸(10勝に終わる)にも勝って自己最高の14勝を挙げた千代大海が、3年半ぶりとなる大関初優勝を果たした。

 6人の上位で皆勤は二人だけ。殊勲賞の朝青龍だけでなく、西関脇若の里も横綱を破って11勝(優勝争いのキーマンとなったが、三賞は漏れる)。久しぶりに三役復帰した小結土佐ノ海は、千代大海に唯一の土をつけて10勝で殊勲賞。平幕では、新三役を決めた高見盛に技能賞。8枚目ながら初金星の霜鳥に敢闘賞が与えられた。「元大関陣」は、小結復帰の雅山は負け越し。先場所復調の気配を見せた出島はまた故障。7枚目に落ちた貴ノ浪が初日から7連勝し、武蔵、大海には敗れたが朝青龍をねじ伏せて存在感を示した。


<十四年秋場所> 競り勝ち ドラマAAA レベルC 白熱度A

 武蔵丸 復活貴乃花にリベンジ果たす

 長期休場で引退勧告寸前だった貴乃花がようやく復帰した。注目の立ち上がりは、2日目旭天鵬、5日目琴龍にあっけなく敗れるなど綱渡りだったが、徐々に相撲勘を取り戻していく。初日1横綱2大関が敗れるなど2日目で上位の全勝は朝青龍一人となったが、全休の栃東を除く6人はまずまずのスタートを切って混戦模様。9日目2敗の魁皇が朝青龍に土をつける。トップに並んだ綱取り千代大海だったが、翌10日目朝青龍との相星対決に敗れ2敗に後退。11日目、朝青龍と貴乃花の対戦は、大熱戦の末両差しの朝青龍が外掛けを仕掛けるところ、貴乃花が上手投げで逆転勝ち。武蔵丸が単独トップに立つ。13日目、2敗同士の対戦は、綱取りへラストスパートを掛けたい千代大海の当たりを貴乃花がまさかの変化でかわし、引き落として勝ち残る。すると結びで武蔵丸が1差の魁皇に敗れ、3人が2敗で並んだ。14日目、わずかな逆転の可能性にかける千代大海をカンヌキで捕まえた武蔵丸が下し、貴乃花は魁皇との相星対決を右四つ上手投げで制す。何と横綱楽日相星決戦という舞台が整った。昨年2度の決定戦で敗れた武蔵丸、一人横綱としてライバルの穴を埋めながら雪辱の機会を待っていた。突っ張り合いから右をのぞかせると、一気に出て寄り切った。この優勝で優勝回数も曙を超える12回を記録した。

 魁皇12勝、千代大海10勝と最後に力尽きた。武双山は終盤バテて辛くも勝越し。前半戦をリードした新大関朝青龍も終盤荒くなり10勝に留まった。上位好調で三役陣は苦しく、勝ち越しは若の里だけ。上位に土をつけた関脇土佐ノ海、小結貴ノ浪も及ばず、高見盛は4勝止まり。三賞は8枚目に落ちていた12勝の琴光喜、敢闘賞だけ。十両では、寺尾と貴闘力が熱戦を演じ、共にこの場所限り現役を退いた。


<十四年九州場所>  大独走 ドラマB レベルC 白熱度D

 朝青龍 モンゴル勢初V 対抗不在で独走

 貴乃花は右ひざ悪化で再び離脱。武蔵丸も手首がいよいよ深刻になって途中休場、手術に踏み切り長期離脱となった。先場所の主役二人に抵抗した2大関、魁皇、千代大海はご当所とあってチャンス到来かと思われたが、奇しくも同じ右上腕の筋を切って途中休場した。先場所に続いて好スタートを切った朝青龍、今度は誰もついて来れず、中盤には独走状態。残る2大関は武双山は中盤で連敗し脱落、10勝止まり。カド番栃東は序盤で4敗し脱出するのがやっとだった。11日目栃乃洋に押し出された朝青龍だが、翌日には後続に3差。13日目苦手若の里を強引な外掛けで下して早々と優勝を決めた。14勝で綱取り体勢。

 頑張ったのは小結隆乃若、11勝で敢闘賞。前頭筆頭の貴ノ浪は先場所に続いて武蔵丸を破り初金星、敢闘賞。新入幕の岩木山も二桁で敢闘賞。三役は隆乃若の他は奮わず。琴光喜8勝、若の里、旭天鵬7勝。

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平 成 十 五 年

締りC 伯仲B 接戦C 躍進C 人気C


  優勝者 成績(決定) 次点(差) V争い ドラマ レベル 白熱  
初場所 朝青龍 14-1(14) 若里、出島(3) 突き放し A B C 武双山初優勝 武蔵川は6連覇
春場所 千代大海 12-3(千) 朝青、魁皇、旭鷲、北力(2) 突き放し C D B 貴闘力幕尻V 「若貴時代」に幕
夏場所 朝青龍 13-2(千) 魁皇、安美錦(2) 逃げ切り B C C 魁皇も初優勝 2横綱及ばず
名古屋場所 魁 皇 12-3(相) 千代大海(1) 混戦 B D A 曙13連勝で3年ぶり優勝 
秋場所 朝青龍 13-2(14) 千大、若里、岩木、光喜(2) 突き放し C C C 運も味方 決定戦は貴乃花
九州場所 栃 東 13-2(相) 朝青龍(1) 一騎打ち B C A 貴ノ浪 同部屋決定戦2たび制す

 

顔触の変化 初場所  九州場所
横綱 貴乃花(場所中引退)、武蔵丸 武蔵丸(場所中引退)、朝青龍
大関 千代大海、武双山、魁皇、栃東、朝青龍 千代大海、武双山、魁皇、栃東
三役 若の里、旭天鵬、隆乃若、琴光喜、土佐ノ海、貴ノ浪、出島、雅山、栃乃洋、闘牙、高見盛、岩木山
新入幕 隆の鶴、春日王、朝赤龍、豪風、垣添、若兎馬、豊桜
引退 貴乃花、大善、安芸乃島、武蔵丸、蒼樹山、戦闘竜

<この一年>  巨星墜つ 新横綱朝青龍と大関陣のバトル 

 横綱総入れ替えの一年。初場所で貴乃花、九州場所で武蔵丸が引退。綱取りの朝青龍の壁になる前に満身創痍の体が限界に達した。初場所でも圧倒的な強さを示して連覇した朝青龍。武蔵丸の休場が続く中、実質一人横綱として実力を示した。まだ朝青龍の力も安定せず、新横綱場所は5敗、名古屋場所は途中休場。旭鷲山との遺恨など懸念された精神面の未熟さが不調にも繋がったが、一気に空席だった主役の座を確保した。先輩大関陣も黙っていたわけではない。武双山、栃東は故障がちで大関維持が精一杯だったが、千代大海、魁皇がこれに食い下がり一度ずつ賜杯を抱いた。横綱不在の名古屋はこの両者の相星決戦で決着。九州場所では長い不調から立ち直った栃東が朝青龍との相星決戦を制し、この一年は朝青龍3回、3大関が各一度と優勝と分け合った。

 朝青龍にごぼう抜きされた大関だが、まだまだ健在。これを崩して這い上がる力士は現れなかった。関脇に定着して連続二桁も記録した若の里も、大関挑戦の九州場所では負け越し。土佐ノ海も大勝ちする力がなくなってきて、地力をつけてきた栃乃洋、旭天鵬も定着とはいかなかった。元大関の出島、雅山、貴ノ浪も三役を維持できず。期待の大きかった琴光喜はヒジ、隆乃若はヒザを痛めて低迷した。上位キラーで名を上げた安美錦、高見盛も地力不足だった。安芸乃島が引退、幕内最年長は35歳の琴ノ若になった。世代交代が進みつつも、幕内最年少は横綱朝青龍。勢いの良い若手は少なかった。十両、幕下には多様な国からやってきた力士たちが躍進、武蔵丸らの引退で姿を消したハワイ勢に代わって土俵を席巻する勢いを見せていた。

私的年間表彰 該当力士 受賞理由
最優秀力士賞 朝青龍 横綱昇進、乱心もあったが3度優勝し最多勝
優秀力士賞 該当なし 3大関1回ずつVも決め手欠く。
殊勲賞 若の里 関脇に定着。三賞2つと派手な活躍は少ないが年間勝利2位。
敢闘賞 旭天鵬 敢闘賞3回、上位定着。朝青龍に横綱初黒星も。
技能賞 高見盛 右腕の返しで上位も荒らす。高見盛フィーバー巻き起こす。
カムバック賞 高見盛 12年の膝重症から復活。幕下から這い上がり殊勲、敢闘、技能各1回。
最優秀新人賞 岩木山 遅咲きの51組。地味ながらぶちかまし武器に1年で新三役へ。

<選考理由>3回優勝して実質一人横綱に君臨した朝青龍が飛びぬけていたが、トラブルも多発し物言い付きの最優秀賞。3人の大関が一矢ずつ報いたが、年間通じた活躍とはいかず、年間勝利数も途中休場のあった朝青龍はおろか2位の座も関脇に奪われては優秀賞も届かない。三賞は受賞回数で旭天鵬、高見盛。関脇を守り抜いて大関目前に迫った若の里の方が目立たなかったが、秋の殊勲は見事だった。技能賞あり、貴乃花にとどめをさすなど2金星の安美錦も印象は強いが、成績で大差。


<十五年初場所> 突き放し ドラマA レベルB 白熱度C

 貴乃花大往生 朝青龍V2、横綱へ 

 2横綱5大関の豪華番付も、この場所も虫食い状態。武蔵丸、千代大海、魁皇が連続休場。栃東は5連敗で途中休場となった。武双山も黒星先行。ぶっつけ本番で2場所ぶり出場の横綱貴乃花は、初日若の里に辛勝。しかし2日目、雅山の二丁投げにひっくり返って肩を強打。取り直しの一番は相手の負傷したこともあり制したが、腕が上がらず翌日から途中休場となった。ところが、何を思ったか5日目から再出場に踏み切る。横綱の再出場は昭和29年の東富士以来。立合い変化など執念を見せて連勝したものの、出島の出足、初顔の安美錦の回り込みに体がついて行かず連敗し、9日目の朝引退を発表した。自ら死に場所を求めたかのような悲壮な引退劇だった。一代年寄となった。

 優勝争いはライバル不在で快調に飛ばす朝青龍を1敗で平幕出島、2敗で小結若の里、新入幕の隆の鶴らが追う展開。9日目朝青龍が海鵬の内掛けに敗れる。、しばらく並走した出島だが、隆の鶴ら下位相手に落とし脱落。13日目、1差の若の里が朝青龍に挑んだが及ばず。2差となった14日目、かつてのライバル琴光喜を押し出して朝青龍の連覇が決定。横審では大関在位の短さや優勝回数、何より精神面を問題視されたものの、連続14勝の好成績が物を言って昇進が決まった。

 両関脇隆乃若と琴光喜は共に9勝。隆乃若は連続二桁を賭けて千秋楽関脇同士の対戦に臨んだが、張り手にヒザが入って致命的な故障を負った。小結は、貴ノ浪負け越し、若の里が11勝で敢闘賞。新入幕の2人は、隆の鶴の方が活躍していたが最後3連敗で、敢闘賞は二桁に乗せた春日王にさらわれた。玉春日、栃乃花が十両落ち。


<十五年春場所> 突き放し ドラマB レベルD 白熱度B

 千代大海V3 大乱戦の末、新横綱を押し出す

 武蔵丸は長期離脱を余儀なくされ、栃東は公傷全休。武双山は左肩脱臼(公傷厳格化により古傷悪化とみなされ、適用外)、関脇隆乃若も全休。ポスト貴乃花時代は厳しい船出となった。看板の新横綱朝青龍は、3日目旭天鵬の打っ棄り気味の投げに初黒星。出島、琴ノ若にも敗れて9日目には3敗。魁皇も一進一退でカド番脱出に苦労した。同じくカド番の千代大海は7連勝の好スタートで主導権を握る。しかしもたついているうち後続に迫られ、13日目4敗の魁皇に敗れて3敗目。朝青龍に捕まった。14日目は3敗勢と4敗勢の直接対決。千代大海は、休場明け(本来なら公傷も負傷後出場したため適用させず、十両陥落を回避するため強行出場)ながら健闘の雅山を下す。すると朝青龍は魁皇に敗れて、再び千代大海が単独トップ。3人に可能性が残された千秋楽、魁皇は脱落し、結びで1差の対決。激しい突っ張りを繰り出した大関が、喉輪を効かせて一方的に新横綱を押し出した。千代大海は4場所ぶり3回目の優勝。

 上位陣が取りこぼしたが、三役も星は伸びず。関脇復帰の若の里は9勝、琴光喜は負け越し。小結復帰の出島、土佐ノ海は8勝。平幕でも10勝したのが2人だけと、低調だった。三賞は平幕上位で健闘した旭天鵬が敢闘賞、人気沸騰の高見盛に技能賞。


<十五年夏場所>  逃げ切り ドラマB レベルC 白熱度C

 朝青龍 横綱初優勝 

 武蔵丸は4場所連続の休場。今場所も一人横綱の朝青龍はひとり全勝ターン。4人揃った大関陣は対抗を期待されたが、魁皇とカド番武双山が連敗スタート。やはりカド番の栃東も前半で五分の星と苦しい。9日目、朝青龍は旭鷲山に立合い焦らされた上にムキになるところを引き落とされ土がつく。しかも俵を指さして審判を睨み、すれ違い様肩が当たったと旭鷲山に下がりを振り回す最悪の土俵態度。ヒールへの道を歩み始めた。これで綱取りを狙う千代大海は1差につけ、ギリギリのラインで追走する。しかし13日目、絶望的な3敗目を喫すると力尽きて3連敗。千代大海を破った3敗魁皇が代わって浮上。14日目も朝青龍を上手投げで裏返し、1差として千秋楽を迎えた。しかし千秋楽、カド番7勝7敗の武双山にあっけなく突き落とされて脱落。朝青の横綱になって初の優勝が決まった。

 魁皇11勝、大海10勝、カド番の2大関はヒヤヒヤの8勝7敗で脱出、ようやく翌場所は角番大関がいなくなる。若の里(9勝)、出島(7勝)の両関脇は、共に前半良かったが後半乱れた。小結は、土佐ノ海は4勝に終わったが、28歳旭天鵬は10勝して連続敢闘賞。先場所の金星に続き、晩成の大器が実力を発揮してきた。安美錦は11勝で2度目の技能賞。旭鷲山は一悶着あったが金星が評価され、千秋楽勝ち越して初の殊勲賞を得た。幕尻で迎えた安芸乃島は14日目負け越して引退。金星、三賞史上1位。幕内連続在位2位タイ。昭和に入幕した最後の力士が姿を消した。


<十五年名古屋場所> 混戦 ドラマA レベルD 白熱度A

 大関相星決戦 魁皇が大海下しV4

 武蔵丸が出場に踏み切ったが散々な出来、6日目から休場した。初めて2横綱がそろった場所だったが、朝青龍も首の不調で途中休場。因縁の旭鷲山戦では髷を掴んで横綱史上初の反則負け。さらに場外乱闘騒ぎも起こしての大乱調だった。やっとカド番から解放された4大関は、好調とは行かないまでも足並み揃って中日には2敗で横一線。前半主役となったのは平幕の時津海。6連勝のスタートを切り、連敗したものの雅山、栃東を破って11日目再び単独トップ。しかし他の3大関に敗れて脱落。大関同士の潰しあいとなり、栃東、武双山は脱落。平幕好調の雅山、土佐ノ海、北勝力らも潰し合って後退。千秋楽、3敗で並ぶ魁皇と千代大海の大関相星決戦となった。差して組み止めようとする魁皇、これを千代大海が左右の喉輪で強引に出て追い詰める。が、土俵際でわずかに左をのぞかせた魁皇が猛然と逆襲、正面土俵になだれ込んだ。激闘を制して魁皇が2年ぶりの優勝を勝ち取った。大関在位記録を誇る2大関の直接対決だったが、この頃魁皇は千代大海戦15連勝と、大関同士ながら4年近くカモにしていた。千代大海にしてみれば、最も横綱に近づいた時期に天敵を抱えてしまったことは非常に惜しまれる。このカードも通算54回を数え、千代大海最後の一番で締めくくられるのだが、史上最多の59回の対戦を数えた黄金カードが、この場所ファイナルを迎えた。やはり長く大関としてした武蔵丸―貴ノ浪戦である。貴ノ浪は、史上最多の対戦回数を記録した武蔵丸戦を3連勝で締めくくった。同時大関昇進からともに5年並び立ち、11年春には大関相星決戦も演じた。その後横綱と平幕に差が開いたが、自身の初金星を挙げることとなった。記録に残る平成相撲史屈指の2カードである。

 武双山は10勝と立ち直ったが、栃東は後半崩れてカド番に逆戻り。関脇は序盤苦戦したが、若の里が盛り返し10勝、旭天鵬はそのまま崩れて負け越した。小結出島は全休と相変わらず満身創痍、栃乃洋千秋楽負け越し。高見盛が殊勲賞、2つの金星を挙げて大フィーバー。二桁には届かなかったが場所を盛り上げた時津海に技能賞。敢闘賞は珍しく該当なし。10勝の力士は多かったが、若の里、雅山、土佐ノ海は実績からして見送りはやむなしだが、魁皇、武双山に勝って4枚目の闘牙には与えても良かったか。金星が大量に転がった最後の場所だが、旭鷲山は反則勝ちで金星と見做されず。朝青龍を投げ飛ばした琴ノ若、武蔵丸を寄り切った安美錦は途中休場だった。朝青龍を休場に追い込み、武蔵丸から不戦勝の玉乃島も大敗。


<十五年秋場所> 突き放し ドラマC レベルB 白熱度C

 朝青龍 休場明けでも強し

 初めての休場明けの場所、武蔵丸は全休でまた一人横綱となった朝青龍は心配をよそに勝ちっぱなし。完全に独走体勢に入っていたが、12日目若の里、13日目栃東に連敗。2敗につけていた千代大海だが、13日目天敵魁皇に敗れて並べず。14日目、1差の琴光喜が若の里に敗れ、直接対決は朝青龍が下手投げで千代大海を下し優勝を決めた。朝青龍の取りこぼしで一瞬盛り上がった優勝争いだが、あっけなく決着した。

 高いレベルでの連続優勝で綱取りを狙った魁皇だが、5日目綱取りキラーの高見盛に土をつけられる。腰痛が悪化して後半は1勝しかできずに負け越した。武双山はヒジを骨折し途中休場も、また公傷適用されず。千代大海は11勝、カド番の栃東は10勝どまりだったが朝青龍戦などに復調が見られた。関脇若の里が今場所も尻上がりに調子を上げて連続二桁となる11勝で4回目の殊勲賞。関脇復帰の雅山は4勝に終り、小結の闘牙、土佐ノ海も1点負け越し。2大関倒して9勝の高見盛が連続三賞となる敢闘賞。平幕に落ちた旭天鵬も2大関倒して10勝で4回目の敢闘賞。11勝の岩木山には押し相撲が評価されて技能賞。3人揃って三役を確保した。優勝争いについていった琴光喜はようやく復調し11勝だったが三賞なし。

 


<十五年九州場所>  ドラマB レベルC 白熱度A

 栃東復活優勝 朝青龍との決戦制す

 武蔵丸が進退賭けて出場したが、2日目から連敗、初場所で貴乃花最後の相手となった安美錦には勝つが、玉乃島に敗れて黒星先行。粘って難敵琴光喜を下したが、7日目土佐ノ海に引っ掛けられると堪え切れずに踏み込して4敗目。遂に引退を決意した。ついに横綱対決は実現しないまま、名実ともに一人横綱となった朝青龍は2日目に土がついたものの1敗で、全勝の栃東を追う。復調著しい栃東はひとり負けなしで10連勝したが、土佐ノ海に敗れて1敗で2人が並ぶ。一騎打ちの展開と見た審判部の機転で千秋楽に両者の対戦を繰り延べたが、13日目栃東は千代大海に敗れ、結びで朝青龍も魁皇に突き落とされ両者2敗。14日目、栃東は魁皇を下し2敗を守ると、朝青龍は1差に迫った千代大海を退けて目論見通り千秋楽相星決戦となった。朝青龍が突いて左差しを狙うのを栃東は徹底して嫌いおっつける。じれた朝青龍が左で叩いたスキを逃さず、右おっつけからハズに入って一気に押し出し。真骨頂の相撲で新大関の14年1月以来の優勝。故障続きで勝率も5割を切りそうな不振だったが、突然復活した。明暗分けた二人だが、以後朝青龍は半年近く負けなし。栃東は再び故障との戦いが始まる。

 大関千代大海、魁皇10勝、武双山は連敗スタート、6勝6敗から14日目にようやくカド番脱出。他の大関が1回ずつ優勝する中、綱渡りの一年だった。大関取りに挑んだ若の里は、序盤3連敗でリズムを崩し負け越した。先場所三賞の旭天鵬、高見盛、新三役岩木山も勢い止まって、三役4人全滅だった。平幕上位が好調で、金星2つ稼いだ栃乃洋と、栃東を破り武蔵丸に引導を渡した10勝の土佐ノ海に殊勲賞。同じく10勝の玉乃島には敢闘賞。金星獲得力士が調子に乗った。武蔵丸に続いて幕下に落ちていた戦闘竜も引退し、一世を風靡した米国出身力士の時代が終焉。外国人の系譜だけでなく、土俵の主役もモンゴル、ヨーロッパの時代へと移行していく。

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